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#めめだて
ポテチ
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ふみさん、第6話読みました。阿部さんの優しさの奥に潜む“濃い影”、すごく気になりますね…。視覚を失った佐久間さんの視点だからこそ、声のトーンや間、血の匂いといった細かい感覚が際立っていて、読んでいるこちらも一緒に“違和感”を探しているような没入感がありました。「ただの通りすがり」と笑う阿部さんの、その一瞬前の温度のない声のギャップがゾクッとします。最後の「また会えますか」にどれだけの勇気が必要だったかと思うと胸がぎゅっとなりました。次が楽しみです!
「ここ段差あるので気をつけてください」
「……はい」
カツン、と白杖が地面を叩く音と、隣を歩く阿部さんの足音。
さっきまでの騒ぎが嘘みたいに、静かだった。
「…怖かったですよね」
ふいに、阿部さんが言う。
その声は、あの場にいたときとは違って、
いつも通りの優しいトーンで。
「……はい」
正直に答える。
「何も見えないのに、突然囲まれて、、あんなに不安になったのは初めてだったかも」
言葉にすると、また少し怖くなる。
「……すみません、もっと早く気づけてれば」
「え?」
思わず顔を向ける。
見えないのに、癖で。
「いや…あの場に来るのが遅れたなって」
その声は、どこか悔しそうで。
「そんな……来てくれただけで十分です」
本心だった。
あのとき、あの声がなかったらと思うと、
今でも背筋が冷える。
「……ありがとうございます」
小さく、息を吐く音。
数秒の沈黙が流れる。
「…阿部さん」
「はい?」
迷いながら、口を開く。
「さっき……」
あの、殴り合う音。
5人相手に、圧倒していた気配。
「……すごく…強かった、ですね」
遠回しに、でも確かめるように言う。
「……まあ、多少は」
返ってきたのは、さっきと同じような濁した答えだった。
「…多少、であれですか」
思わず苦笑する。
それでも、やっぱり引っかかる。
「…昔、ちょっとやんちゃだったんで」
ぽつりと、阿部さんが言う。
「喧嘩慣れしてるだけです」
軽く言う。
でも、その“軽さ”が、逆に不自然で。
「……そう、なんですね」
それ以上は聞けない。
聞いちゃいけない気がした。
また歩き出す。
ふと、鉄っぽい匂いが鼻をかすめた。
「……?」
ほんの一瞬だったけど、確かにその匂いを感じた。
「阿部さん」
「はい?」
「…怪我、してません?」
さっきの殴り合いも相当激しかった。
無傷なわけない。
「……え?」
ほんのわずかに、声が揺れた。
「いや、してないですよ」
すぐに、否定する。
でも、それが嘘だとすぐに分かった。
「血の匂い、します」
はっきり言うと、
今度は、少し長めの沈黙が落ちた。
「…鼻、いいんですね」
阿部さんは苦笑する。
「見えなくなってから、なんか感じやすくなったんです」
その返しに、どこか観念したようで。
「大したことないです。かすり傷ですよ」
軽く言う。
本当かどうかは、わからない。
でも、それ以上は踏み込めなかった。
「あの」
しばらくして、阿部さんが口を開く。
「今日みたいな場所、あんまり一人で歩かない方がいいですよ」
少しだけ、強い口調。
「…すみません」
反射的に謝る。
「あ、いや、責めてるわけじゃなくて」
少しだけ柔らかくなる声。
「……ああやって、ガラの悪い奴らがいますから…」
その言葉が、妙に重く聞こえた。
まるで、何かを“知っている”人の言い方だった。
「……阿部さんって」
気づけば、口に出していた。
「そういう人たちのこと、詳しいんですか?」
一瞬、その場の空気が、止まる。
「……どうして?」
静かな声。
さっきまでとは違う、温度のない声。
「……なんとなく、ですけど、」
正直に言う。
見えない分、感じることが増えた。
声の揺れとか、間とか。
そういうのが、妙に引っかかる。
「……」
数秒の沈黙が続く。
でも、その沈黙はさっきまでと違って張り詰めていた。
「……ただの、通りすがりですよ」
やがて、いつもの穏やかな声でそう答える。
でも、
「……そっか」
頷きながらも、心の奥で思う。
(……嘘)
理由はわからない。
証拠もない。
でも、確かに感じた。
この人は、ただの“優しい人”じゃない。
もっと、深いところに――
何かを抱えてる。
そんな気がしてならなかった。
「着きましたよ」
「……あ、ありがとうございます」
足を止める。
自分の家の前だった。
「じゃあ、今日はこのへんで」
手が、ゆっくり離れる。
その瞬間。
少しだけ、不安がよぎる。
「…あの」
思わず、呼び止める。
「はい?」
「……また、会えますか」
気づけば、その言葉が出ていた。
「……会えますよ」
優しい声。
「佐久間さんが外に出るなら、どこかで」
少しだけ、冗談っぽく。
「そっか」
自然と、笑っていた。
「…じゃあ、また」
「はい、また」
足音が、遠ざかっていく。
名前を知ることができた嬉しさが胸の中で広がる。
だけど。
「……阿部さん」
ぽつりと、呟く。
その名前が、やけに重く感じた。
優しさと温もりと、
触れてはいけない“影”を含んで。
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