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「えぇ? 勝手に入っていいんですか!?」
「寛大なアックさまですもの、甘えればお許しになってくれるわ」
「じゃ、じゃあ、そぅ~っと連れて行きますよ」
おれとサンフィア、そしてウルティモの三人で深刻な話をしていた頃のこと。おれの知らぬ間に、ルティとミルシェ、シーニャで何かをやろうと動いていたらしい。
そんな三人のことを聞かされるのはずっと後のことになる。
◇◇
イデアベルク居住区には、イスティの家が多く建ち並ぶ――とはいえ、現在は全ての家に住むわけでは無くアックの部屋、シーニャの部屋といった感じで割り当てていた。
ルティシア、ミルシェの二人は希望によりそれぞれで家を確保した為、アックの部屋とは違う所で過ごしていた。そういう意味で、二人がアックの部屋に近づくことはあまり無かったのだが――。
「眠っているのだから、早く!」
「で、でもですよ? アック様が戻って来た時に騒ぎませんか?」
「心配いらないわ。あの方は、しばらく戻って来られないほど忙しくされているわ。その前に神剣が元気になっていれば、何も問題は無いわね」
「そういうことでしたら~」
ルティシアがこそこそと隠れるようにして、神剣フィーサを手にする。周りを用心深く見ながらその場を後にしようとすると、アックの部屋の隣から彼女が出て来た。
「ウニャ……? ドワーフとお前、そこで何をしているのだ?」
アックの部屋から立ち去ろうとした二人だったが、気配に気付いたシーニャに声をかけられてしまう。
「えぇ!? シーニャが起きていますよ!? ど、どうしましょう?」
「何もしていないけれど、今から神剣を起こしに行こうと思っているわ。あなたはどうする?」
どうするものかと慌てるルティシアに対し、ミルシェは提案をあえて持ちかけてみた。ルティシアの手には神剣フィーサがあり、その時点でシーニャからはピリピリとした空気が出ていたからだ。
「フィーサを起こしに行くのだ?」
「――ええ、そういうことになるわね」
シーニャの目からはどう見ても、アックの部屋から勝手にフィーサを連れて行くようにしか見えていなかった。それでも耳を寝かせながら落ち込むシーニャは一緒に行くことを決意。
「……ウニャ。アックが落ち込んでいるのを見るのは嫌なのだ。シーニャも行くのだ!」
「賢明ですわね。そういうことだから、ルティ! あなたの故郷に急ぐわよ!」
「はいっっ!! ではでは、こちらですよ~」
◇◇
イデアベルクからとある隠し道を通って、ルティシアたちはファレワル村に辿り着く。さらにそこからルティの母に教えられた道を使い、三人は火山渓谷ロキュンテに到着を果たした。
「それで、これからどうするんですか~?」
「とにかく時間が無いわ。神剣フィーサを抱えたまま火口に向かうわよ!」
「はいっっ!」
「……シーニャ、熱いのは苦手なのだ。でも、フィーサとアックの為に行くのだ」
神剣フィーサを目覚めさせようとする彼女たちは火口へと急いだ。
「荒療治になるけれど、上手く行くはずだわ」
「ウニャ」
「ですですっ! もうすぐですっ!!」