「……………はあ」
俺、凸もりはベットの上でため息をつく。
うたちゃん、また調べてんのかな…?
そんなことをしても意味ないのに…なんでだよ…!
怒りの感情を無理やり沈める。
うたちゃんの気持ちも、わからなくはない
だって大切な皆を失って、それがこの世界が原因だなんて…
俺とうたちゃんの出会いは、俺が15歳ぐらいのころだった。
俺は幼い頃両親を魔獣に殺されて、街の小さな家で暮らしてた。
その日も家でゴロゴロしてた。
そんな時、来客用のベルが鳴らされて、出たら街の人とうたちゃんがいた。
うたちゃんも両親を魔獣に殺されたらしく、身寄りが居らず、引き取る人もいなくて、俺に面倒を見てくれないかという話だった。
面倒と言っても、時々うたちゃんの様子を見に行ったり、ご飯など必要な家事をするぐらいだった。
それぐらいならと了承して、うたちゃんと過ごすようになった。
一緒に遊んだりして、友人みたいな存在になってた。
「凸さん、この世界ってなんでこんなに寒いの?」
ある日、本を持って言ううたちゃんの目は、真剣だった。
「なんでって…俺も知らない」
「そっかあ…」
「急になんでそんなことを聞いたの?」
「だってさ…寒さとか猛吹雪で皆困ってるもん、だから僕がどうにかしたいなって…」
8歳なのにそんなことを考えられるなんて、凄いなと思う反面、どうにかなんて出来ないと思ってた。
「………そっか!うたちゃんなら出来るよ!」
でもそんな思いを壊すことなんて出来なくて、表向きはうたちゃんの思いを応援していることにした。
うたちゃんはその日から、よく外に行って寒さについて調べたり、本を読んだり、パソコンを使ったりして”世界が暖かくなる方法”を探してた。
けどうたちゃんは体が強くない。よく体調を崩したりもした。
なんで無駄なことを諦めずにしてるんだ?
俺はうたちゃんを看病しながら、そんなことを考えてた。
数年後、うたちゃんが俺を仲間に入れてって頼んできた。しかもしぇいどさんにも頼んだらしい。
しぇいどさんは昔、俺が薬を買いに行ったとき店番をしてた人で、花屋を開くのが夢だと言っていた。
そんな夢、叶うはずないのにってその時は思ってたけど、うたちゃんの話を聞いて、協力する気になったらしい。
俺は渋々仲間になった。
お人好しだなあと、自分でも思う。
うたちゃんとしぇいどさんと共に、この世界を暖かくなる方法を調べる日々が続いた。
………うたちゃんなら、本当にどうにかできるかもしれない
いつしか俺は、うたちゃんが真剣にこの世界をなんとかしようとする姿を見て、心からうたちゃんを応援していた。
………でもそんな思いは消え去った。
ある日、街を魔獣が襲った。
しかも群れで、倒しても倒してもキリがなかった。
街の人は死に、街は崩壊した。
俺はうたちゃんとしぇいどさんと共に崩壊した街から逃げ出した。
街を出たときの絶望したうたちゃんの目が忘れられない。
街からの遠く離れた所のボロボロの家にとりあえず避難した。
うたちゃんは部屋の隅で座り込んで、床を見つめてぼーっとして過ごすことが多くなった。
近くの大拠点とかに土下座して頼み込んで木材とかを分けてもらって、今の拠点ができた。
それからうたちゃんは自分の部屋で、取り憑かれたように調べものをするようになった。
………これが、俺たちの身に起こったこと。
ほら、こんな世界をどうにかすることなんてできないんだよ。
そんな思いは、俺が過去の自分に向かってに言っていることだ。
なんでうたちゃんの思いを応援してたんだ?こんなことになったのはこの世界のせいで、どうにもできないんだって………
………もう寝よう
もやもやした気持ちを消したくて、俺は毛布を体に掛けて寝た。
深夜3時、何故か目が冷めてしまった。
………何か飲もうかな…
下に降りると、うたちゃんがソファに座ってた。
「あ………うたちゃん」
「…凸さん」
俺とうたちゃんの間に沈黙が流れる。
………気まずい
「………凸さん、ホットミルク飲まない?」
「え、あ、じゃあ…飲もうかな」
うたちゃんが牛乳を温めて、マグカップに入れて俺に差し出してくる。
ソファに隣り合って座る。
………うたちゃんと話すって、いつぶりだ…?うたちゃん普段は部屋に籠もってるし。
「………寒いね」
「あ…うん」
俺とうたちゃんはお互い目を合わせられなかった。
「……………うたちゃんは、まだあの夢諦めてないの。」
「もちろん」
うたちゃんはさも当然のようにそう言った。
「…どうせ無駄だって言うんでしょ。」
「………え」
うたちゃんは俯いてた。
「………違う。」
思わずそう言ってしまった。
うたちゃんは凄く驚いてた。
「まだ、うたちゃんの考えに納得したわけしゃないけど…なんというか、おどろくさんいつも前向きだから、それで元気貰って、考えがちょっと変わったような…感じが?」
我ながら変な言い方になってしまった。
「………そっか」
うたちゃんはそう言うと疲れてしまったのか俺に寄りかかって寝てしまった。
そういえば、うたちゃんあんま体強くないから、寒さにも弱いんだった…
「…よいしょ」
俺はうたちゃんを抱えてうたちゃんの部屋に向かった。
うたちゃん軽いな…
うたちゃんの部屋についた俺は、うたちゃんをベットに寝かす。
自分部屋に戻った俺は椅子に座って外を見る。
外は吹雪だ。いつも猛吹雪なのに珍しい。
「……………………どうか、あの子の願いが叶いますように。」
らしくないのに祈って、そう呟いた。
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