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夜のピザ屋。
閉店後。
オーブンの火はもう消えている。
カウンターの上にはピザ一枚。
チャンスが椅子から立つ。
「じゃ」
エリオットが聞く。
「どこ行くの」
チャンスは肩をすくめる。
「いつもの」
「逃げる?」
「逃げる」
エリオットは少し考える。
それから。
ネクタイ。
ぐい
チャンスが前に引かれる。
「……」
チャンスが言う。
「癖」
エリオットはにこにこ。
「知ってる」
チャンスがネクタイを軽く戻す。
「そろそろ行く」
エリオットが聞く。
「なんで」
チャンスは言う。
「俺」
ポケットからコインを出す。
カラン
指で弾く。
「追われてる」
エリオット。
「うん」
チャンスが続ける。
「ここにいると」
店を見る。
「巻き込む」
エリオットは黙る。
チャンスがドアに向かう。
その時。
また。
ネクタイ。
ぐい
チャンスが止まる。
「……エリオット」
エリオットは笑っていない。
珍しく。
真顔。
チャンスが振り返る。
エリオットが言う。
静かに。
「帰るな」
チャンス。
沈黙。
店の時計の音。
カチ…カチ…
チャンスが言う。
「それ」
少し笑う。
「命令?」
エリオット。
首を振る。
「お願い」
チャンスが少し驚く。
エリオットはネクタイを持ったまま。
「ここ」
ピザ屋を指す。
「安全」
チャンス。
「安全じゃない」
エリオットが言う。
「俺いる」
チャンスが少し笑う。
「お前ピザ屋だろ」
エリオットは肩をすくめる。
「ピザ屋」
それから。
少しだけ真面目な声。
「でも」
チャンスを見る。
「一人で逃げるより」
少し間。
「一緒の方がいい」
チャンスは何も言わない。
コインを指で回す。
くる…くる…
それから言う。
「決めるか」
エリオット。
「?」
チャンス。
コインを親指に乗せる。
「表」
「?」
「ここに泊まる」
エリオットの目が少し丸くなる。
チャンスが続ける。
「裏」
「?」
「出てく」
エリオットはコインを見る。
それから言う。
「投げて」
チャンス。
カラン
コインが空中で回る。
エリオットの金髪が揺れる。
パシッ
チャンスが受ける。
沈黙。
エリオットが聞く。
「どっち」
チャンスはゆっくり手を開く。
コイン。
表
エリオットの顔。
少し笑う。
それから。
ネクタイ。
ぐい
チャンスが言う。
「分かってたろ」
エリオット。
「何」
チャンスが笑う。
「俺」
コインを見せる。
「表出す」
エリオットが言う。
「ずるい」
チャンス。
「ギャンブラー」
エリオットは嬉しそうだった。
夜のピザ屋。
逃げないギャンブラー。
そして。
ネクタイを離さない男。