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141 - 第141話 七の罪状 ~後編29 アブソリュート・オーバーゼロ ~絶対零度超

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2025年06月21日

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――エンペラーの掌に在るもの。それは小さいながらも、白く輝く光球。



だが一瞬でその質量の持つ意味を理解し、彼等は震撼した。



“全体の温度が……下がった?”



それは地球全域に、影響が及んだ事を実感。星そのものの温度が下がった事を。



あの硬球程度のサイズでこれなら、もし拡大したりでもしたらどうなるのか。



「心配いらない。計算して抑えているからね」



彼等の危惧を先読みしたかのように、エンペラーがそれは杞憂である事を発した。



だが、一難去った訳では無い――



「これが本来、この世には存在しない――“絶対零度を超えた温度”だ。発現には宇宙の物理法則、そのものを覆さねばならないからね。宇宙空間で最大出力ともなれば恒星は疎か、クエーサーをも軽く凍滅してしまうので、時空障壁フィールド内であっても危険過ぎる代物だよ」



エンペラーは苦笑しながら、この光球の正体――それが持つ意味を明かし始めた。



「…………は?」



誰もが思わず、耳を疑った。エンペラーの言っている言葉の意味が、理解出来ないのだ。



絶対零度を超えるとはどういう意味か。そもそも、そんな温度は熱力学的に存在しない。



絶対零度とは、絶対温度における0度で0ケルビンの事。その下限が『-273.15℃』であり、熱力学での最低温度。エネルギーが最低になった状態であり、この時に決まる下限温度が絶対零度なのだ。



だからそれらを超える、それ以下の温度という自体が有り得ない。それが摂理というもの――絶対的法則。



だがエンペラーは『宇宙の物理法則を覆した』と、確かに言った。



「くっ……」



「そんな……馬鹿な」



俄には信じられないとはいえ、目の当たりにする現実。そしてエンペラーのレベル『400%』超という数値の力の意味が、彼等を絶望の淵へと誘い、狼狽させ立ち竦ませた。



「人は現実味に乏しい事実を、直視しようとしない傾向にある。まあ無理もないが、これは紛れもない現実だよ」



不意にエンペラーは、発現した光球を消した。



「――っ!?」



否、消したのではない。自らの持つ刀へと集約させたのだ。



そして居合いの形へ構える。これは先程の――『無氷零月』の構え。



つまりエンペラーは、絶対零度を超えた冷気を宿した刀で、技を放とうとしているのだ。



その威力はおろか、抜き放たれればどの様な事態になるのか、見当すらもつかない。



「星霜剣“裏”最終極死霜閃――『無氷零月・刹那』。さあこれが幸人、君への最終試験だ」



エンペラーは有無を言わさず、雫へと促す。



「これに対抗するには、全く同じ力で相殺し合う以外無い」



つまりは――雫もエンペラーと全く同じ技を。



「何っ――」



「馬鹿なっ! 出来る訳ねぇだろ!?」



雫より早く、時雨が口を挟んで叫んだ。



彼等の間に在るレベル差は当然として、そんな有り得ない力を出せというのが無理が有る。



「出来る筈だよ……幸人、君には」



だがエンペラーは何処か、確信を以て。それは雫が見せた、尋常では無い上昇値を見越してか。



「何故なら君は――……まあいいか、今は」



――違う。もっと別の、重要な意味がある。



“何を言っているんだ……コイツは?”



それが何か、雫本人にすら理解出来よう筈も無い。



「それに、出来なければ終わるだけだ。可能な限り最小に抑えているとはいえ、この技の衝撃時の比率を計算すると、私の目論見では日本全土からアジア圏内までそのまま消し飛ぶ事になる」



「なっ!?」



あっさりと突き付けられた、これより起こるだろう末路。



何気無く言ってはいるが、エンペラーの言っている事には、恐ろしい程の信憑性を感じさせた。恐らく、いや間違いなくそうなるだろう事を。



「つまり逃げ場は無いし、君が何とかするしかないんだよ幸人?」



もう何処にも逃げ場は無い。残された道はそれしか――。



「くっ――そぉぉぉ!!」



雫は意を決したのか、それとも、どうにもならない現状に嘆いたのか、吼えながら絶対零度を発動した。



――だが、やはりそれは“絶対零度そのもの”。エンペラーとは比べるべくも無い。



それでも雫は絶対零度を刀へと集約させ、構えた。



“駄目だっ――弱い!”



この状況でぶつかり合った所で、結果なんて目に見えている。それは誰もが痛感した。



「……駄目だね、それでは。もっと決死の覚悟でやるんだね」



エンペラーも雫のそれを、一見するまでもなく見極めた。無理難題としか言い様が無いが、雫へと発破を掛けた。



最終試験の名の通り、エンペラーは見定め――“何か”を待っているかのよう。



だからか、エンペラーはまだ技を放とうとしない。勝敗の結果云々のみなら、即実行で全てのケリが着く筈。



あくまで“試験”そのものなのだ、彼にとってこれは。



「さもないと――“核”で終わる前に、消える事になるよ?」



発破を掛けるエンペラーより発せられた、現状以上に耳を疑う事。



“…………核?”



「――核だってぇぇっ!?」



またもや突拍子も無い事実に、一番に驚愕の声を上げたのは時雨だ。



「どういう……事? 何故、核の話が……」



琉月もそう。エンペラーの言った意味が理解出来ない。



この闘いの主旨は、狂座とネオ・ジェネシスが雌雄を決し、この世の命運を賭けた場だった筈だ。



何故そこで突然、核の話が出てくるのだろうか。そのような事は、彼等には何も伝えられてない。



「何だ、聞かされていないのかい? 彼等も相変わらず、肝心な事は隠そうとする。変わってないな……」



戸惑う彼等を意外そうに、呆れながらもエンペラーは――



「今回の件で君達が全滅――もしくは、我等の軍門に下った時点で、世界は私達ごと地球上全ての核の一斉照射で消し去る決定をしたそうだよ」



彼等にも伝えられなかった、最重要機密を語り始めた。



何故、エンペラーはそれを知っているのか。知るよしも無いが、今はそれ以前の問題だ。



「そんな……」



「嘘……だろ?」



彼等の表情も、ショックの色を隠しきれない。事態は想像を超えて、動いていた事を。



「もしそうなれば今の核の威力は、かつての広島長崎原爆の比では無い。日本消失はおろか、その影響は世界中に広がるだろう。まあ、この私を核で何とかしようという発想自体が、フフ……。君達も異能力を防御に全て回せば、助かるかもしれん。だからこの暴挙自体が無為に終わる。この星に多大な犠牲と、決して消えない傷痕だけを残して……ね」



今回の件を核で強引に終結は、根本的な解決にならない。彼等を消し去る処か、事態は最悪の顛末を辿るが明白。



エンペラーは更に追い打ちを掛ける。



「全く以て愚かだね、人間とは……。過ちを何度も繰り返そうとし、更に昇華し続けようとする。これが知恵の実を食した業――神への反逆。だからこそ私は、業そのものを断ち切ろうと思ったのだが、果たして価するかどうか……」



つまりエンペラーは、破滅へ進もうとする人類を救い、導こうとしているのか。



例えそれが、どんな手段であったとしても――



「だからこそ君達人間の、幸人。君の可能性を知りたい。本当に価するかどうかを」



エンペラーは再度、矛先を雫へと向けた。



「くっ!」



本気だ。エンペラーは本気で試そうとしている。



人は存在するべきか、しないべきかを。



価しないのなら、そのまま全てを消去。もし――



「……いいだろう」



雫は再度構える。肚は決まった。全ての命運は、自分に懸かっている事を。そして現状を打破出来るのは、自分以外に無い――



「……ありがとう」



エンペラーは微笑みを見せた後、抜き放った――




“無氷零月――刹那”



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