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#契約結婚
鷹槻れん

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#第4回テノコン
れの
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【作品紹介】
何の連絡も寄越さず、春凪が忽然と姿を消しました。
その事態に宗親は…。
入籍後(同棲済)の2人のお話です。(が、連載開始初期の頃に書いた作品のため、プロット変更などのあおりを受け、少し時系列がおかしくなっています。パラレルワールド的な気持ちでお読み頂けたら幸いです…爆)
(2021/06/22-7/30)
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
【消えた春凪】
春凪が帰っていない。
仕事自体は早めに切り上げさせて、ほぼ定時の17時過ぎには家に帰した。
なのに、だ。
宗親が19時を過ぎて家に戻ってみると、マンションには灯りが付いていなくて。
一応部屋という部屋をくまなく調べてみたけれど、春凪が戻ってきた形跡は微塵も感じられなかった。
春凪だって二十歳を超えたいい大人なのだし、そもそも自分たちは夫婦とはいえ、政略結婚だ。
お互いに相手をがんじがらめに縛る権利はない。
ないのだけれど――。
(連絡ぐらいしてもいいでしょう)
と思ってしまった宗親である。
一応同居しているのだ。
いつも寝食をともにしている相手が、連絡もなく帰宅していないとなると、心配にもなるというもの。
宗親はとりあえず、と思ってキッチンに置かれたエスプレッソマシンで、南米産アラビカ豆と、インド産のロブスタ豆がブレンドされた口当たりの良いまろやかなコーヒーを淹れる。
ふわりと立ち登る香ばしいにおいを嗅ぎながら、春凪がここへ初めて来たときにも、同じコーヒー豆でブランデー入りのカフェオレを淹れてやったことを思い出す。
苦味のあるコーヒーを口に含んで小さく吐息を落とすと、スマホを取り出してアドレス帳から春凪の連絡先を呼び出して電話をかけた。
けれど、コールはすれども応答はなし。
一応メッセージツールを使って『連絡をお待ちしています』と味気ない一文も送ってみたけれど、待てど暮らせど既読にもならなかった。
そうすると、何もないだろうと思っていても段々不安になってくるのが人というものだ。
それは常日頃冷静そうに見える宗親にしても同じで。
思いつく限りの場所へ電話をかけてみたのだけれど、そうしてみて気が付いた。
自分は春凪の交友関係を、本当に知らないのだということに。
そう言えば、春凪に初めて出会ったとき、一緒にいた女の子――確かほたるさんとか言ったか――彼女の連絡先すら自分は春凪から聞き出していなかった。
宗親が掛けられた先は、自分の両親と春凪の実家だけ。
春凪の方の実家はすぐに応答があって、当たり障りのない会話をして電話を切った。
あの感じからすると実家に戻ったということもなさそうだ。
自分の方の親にはどちらにも繋がらなくて……まぁそんなことは日常茶飯事なのでさして気にはしていないけれど、話が聞けないとなると落ち着かないのは確かだった。
外を見ると少しずつ薄暗くなってきていて。
女の子が一人歩きをするのには良くない時間帯になってきたのではないかと思って心がざわついた。
いや、23歳ともなれば、最早「女の子」という年齢ではないのは分かっているつもりなんだが、どうも自分の妹と同い年だと思うとつい査定が甘くなってしまう宗親である。
実際いい歳をした大人の女性――しかも「仮初めの妻」――に対して、「偽装夫」である自分がそこまで心配をする必要はないのかもしれない。
けれど。
そう言えば今日の春凪は昼食以降時折指示を出しても上の空みたいな時があった。
あの調子でぼんやりしていて、事故にでも遭ったのではないだろうか。
そう思ってヤキモキしていたら、天板の上――コーヒーカップ横――に放置していた電話がブブッと短く震えた。
はやる気持ちを無理矢理抑えつけるようにして、努めてゆっくりと画面に視線を落とすと、新着メッセージが一件。
差出人は散々自分を心配させた問題児本人で。
メッセージが送れるということは、やはり命に別状があるようなどうこうが起こったわけではなかったのだ。
そう思ったら、文句のひとつでも送ってやろうかという気になって、憮然とした面持ちで画面を開いた宗親だったが、しかし次の瞬間には思わずスツールをなぎ倒さんばかりの勢いで立ち上がっていた。
『むねちかさゆ、タスケテ』
春凪はいつもメッセージアプリでは宗親のことをちゃんと「宗親さん」と漢字で打ってくるし、「たすけて」だって恐らくは「助けて」と変換してくるはずだ。
なのにこれ。
「さん」とうまく打てずに「さゆ」となっているところもまた、宗親の心を柄にもなくソワソワとさせた。
この逼迫した文面から察するに、春凪が何らかのトラブルに巻き込まれているのは間違いなさそうで。
でも、宗親は刑事でもなければ探偵ですらない。
いくらヤキモキしたところで、春凪の方からあと一歩歩み寄ってきてくれないと、助けに行こうにも何処へ向かえばいいのかさえ分からないではないか。
「バカ嫁が! 助けて欲しいならそのくらい示唆しとけよ!」
苛立ちと腹立たしさに、日頃とはどこか違う口調で口汚く悪態を吐いてから、立場上いつ如何なる時も冷静で丁寧な言葉遣いを心掛けていたはずなのに、とハッとする。
宗親にとって、敬語は本心を見せないためのある種の鎧なのだ。
それをいとも容易く脱ぎ捨ててしまったことに気が付いて、自分が思いのほか取り乱している事実を認めたくない宗親は、受け入れ難い感情に小さく溜め息を落とした。
とりあえず何度か深呼吸を繰り返して気持ちを落ち着かせると、
「さて、どうするべきか――」
吐息とともに小さく吐き出してから、もう1度メッセージに視線を落とす。
そこでふとあることに気が付いて、
「いや、まさかな……」
そうつぶやいた宗親は、胸のざわつきを否定したくてマンションロビーへと向かった。
そんな感じ。
宗親が柄にもなく己れの不可解な感情を持て余してヤキモキしていた、丁度その頃――。
コメント
2件
これは大変! はなちゃん、どこ?
うわ、これはまた急な展開…!109話も続いてる作品で、ここに来て春凪が消えるってめっちゃ気になるわ。宗親が普段の冷静さを保てずに「バカ嫁が!」って叫んじゃうとことか、普段の鎧を脱いじゃってる感じがすごく伝わってくる。偽装夫婦とはいえ、心配してるのがにじみ出ててグッときた。助けを求める「さゆ」のミスもリアルで、急いで打ったんだなってのが分かって逆に緊迫感増すね。続きどうなるんだろう…!