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[いじめ]
いまや、社会問題の一つとなりつつある問題。
学校や職場などで起こる場合が多いと、聞いたことがあるだろう。
それと同時に、環境やトラブルなどの理由も多様で。中には”特に理由もない”というバカげたことを言っている人もいる。
それか、過去にひどいことをしていた人間を”悪を制す”と言って、まるで自分たちが正義のヒーロー、とでも言っているかのように、自分の行為を正当化する愚か者もいるだろう。
でも、例え理由があろうとも、相手が誰であろうとも。人の心を傷つけていい理由にならないと思う。
だってそれは……誰の得にもならないから。
これはそのような出来事によって心が壊れてしまった子供達を救う、1つの事務所の物語。
1.赤く照らす
空はすでに夕焼けに染まっており、月が出始めている。
ある日の暮れ方。ガチャと、事務所のドアが開かれた。
探偵の北条マリアと、助手の夏目花音。二人はなぜか泥だらけで、探偵であることを疑われるレベルだ。
「はぁ……やっとおわりましたね。それにしても、脱走した猫を探してほしいなんて、全然子供と関係ないじゃないですか」
ソファに座り、口をとがらせて愚痴を言うのは、花音にしては珍しい。
しかし、花音が文句を言うのも無理はない。
なぜなら本来ここは子供たちの悩みや環境をなんとかする、という場であり、猫探しなどは全くの無関係だったからである。
「確かに猫探しは本来の内容とは異なるもの。でも、だからと言って放っておくのも探偵としてはご法度でしょ?探偵なら探偵らしく、みんなのために動かなくちゃ」
「……マリアさんがいうならいいんですけど。でも、いつか利用されるかもしれませんよ?大人とかに」
「大丈夫よ。それくらいの狙いなら、簡単に見極められるから」
マリアは人の心情や心理学など、精神系の内容に非常に詳しい。だからこそ、他人の狙いなどは、通常の人間であれば見抜くことができるのだ。
「それにしても最近大きな依頼が来ませんね。来るとしたら、猫探しかゴミ拾いか……これって完全に利用されてますよ?」
「そのうちきっと来るわよ。それに、来ないほうがこまっていることがないってことで、うれしいじゃない」
「いやいや。依頼がなかったら私たちが生活できなくなっちゃいますって!」
そんな話をしているうちに、ピコーンという音が、事務所内に響き渡った。
それはホームページ内にて、事務所宛にメッセージが届いた、ということを示す。
急いでパソコンを開き、ホームページを開く。右の欄の通知のところに、新規メッセージが表示されていた。
匿名god:僕と同じクラスメイトがいじめられています。どうか助けてあげてください。ご希望なら、今からビデオ通話できますでしょうか?そこで詳しくお話します。
「いじめ……やはりこういう系のが多いんですかね。特に学生とかになると」
「そうね。でも、なんか……」
「マリアさん?どうかしたんですか?」
god、と名乗る人物からきた依頼メッセージをまじまじと見ている。文面におかしなところはないように思えるが。
「あっ、ビデオ通話のお誘いが来ましたよ。どうしますか?」
「とりあえず、話は聞きましょうか。花音、通話の準備お願いしてもいい?」
「わかりました」
慣れた手つきで通話の準備を進める花音。その間、マリアはメッセージの中の一か所に目をつけていた。
「はじめまして。先ほど連絡しました、godと呼んでください」
パソコンに表示されたのは、いかにも体育系の男子。肌は日焼けし、真っ黒になっている。
髪の毛は全く垂れないよう、スプレーでも使っているのだろうか。さっきから全く動く気配がない。
「godくんは、陸上部かしら?髪の毛がプレーの邪魔にならないよう、カチカチに固められているし」
「あはは……流石探偵さんですね。まだ何も言っていないのにそこまでわかっちゃうなんて」
朗らかに笑うそこの姿に、偽りも何もない。この人はきっと、自分の正義を信じている。
直感的に、マリアはそう思った。
「それじゃあ、godくんがいっていたいじめについてくわしておしえてくれませんか?」
「……わかりました。僕が知っていることは少ないですけど、あの子のいじめを止められるのであれば」
godは下を向き、静かに話し始めた。
__マリアはそんな彼を、いつもより目を細めて、じっと見つめていた。
godのクラスメイト__春先雅也がいじめられたのは、クラス替えが行われた4月からだった。
それまでの雅也は、普通に友達もいて、大好きだったパソコン部でも楽しくやっていて、特に何も問題はなかったらしい。
でも、そんな日常に終わりを告げさせたのは、同じく二人のクラスメイト__黒川隼人だった。
元々彼は常日頃から、問題行為を繰り返していた。
トイレを紙で詰まらせたり、校庭の白マーカーをぐしゃぐしゃにしたり、クラスの給食のデザートをむりやり奪ったり。
何度も注意したが、彼の行いは一切変わらなかった。
その理由の一つが、彼の祖父がその学校の校長であり、あまり手出しできないせいらしい。
そんな隼人が、何の前触れもなく、急に雅也をいじめ始めた。
テスト期間に教科書を隠したり、お弁当に虫を入れたり、靴の中に画びょうをいれるなど、まるで昔のドラマのような内容だった。
雅也は特に先生に言うわけでもなく、何も言わずに今も耐えている。
クラスメイトも気が付いてはいるが、見て見ぬふりをしている。自分の学校生活のために。
「本当、昔のドラマみたいですね。いじめっ子の親が偉い人で、教科書を破いたり嫌いなもの入れたりって。マリアさん、この依頼受けますか?」
マリアはチラッとgodのほうを見た。その顔からは、心情を読み取ることはできなかった。
そのあと、静かに口元を緩め、立ち上がる。
口元を緩めるのは、マリアなりの合図だ。
「絶対に、雅也くんを救って見せるわ。このいじめに隠されている真実を、必ず見つけ出す」