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#幽霊
凛道桜嵐 新
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#日常
がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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冬に備えて、いつもの内科でインフルとコロナのワクチンを打ちに行ったら、高千穗先生に熱心な目で言われた。
「スポーツの秋ということで、千歳さん体動かすのに興味ありません?」
何、藪から棒に。また千歳を研究するの?
「別に興味はないと思いますが……変なことしないでくださいよ」
「体力測定受けてみませんか?」
「体力測定?」
「クマをも倒せる存在の体力が気になるんですよ!」
千歳は、いつもの週報にヒグマ退治の件を書いてしまったのである。確かに怨霊の力(物理)は研究者なら興味をそそられるだろうが……。
「本当に体力測定だけですか?」
高千穗先生は頷いた。
「はい、フルでやるのでそれなりに時間かかりますが」
「うーん、じゃあ千歳に話を持っていきますが、それなりに時間とるなら千歳に報酬なりなんなり渡してもらわないと……」
「現金はちょっと無理なんですが、お米券5万円なら調達できます」
お米券。千歳の力の源のひとつにお米がある。新米の季節を迎えてもやっぱりお米は高いし、千歳はもらったら喜ぶだろうし……。
「じゃあ、とりあえずその条件で千歳に聞いてみます」
帰って千歳に事情を説明すると『やる!!』と力強い返事が来た。
『米! 5万円! 米! 5万円!』
千歳のあまりのはしゃぎっぷりに、高千穗先生はツボを押さえた選択をしたんだな……と俺は思った。
『いつやるんだ?』
「それは千歳の予定と合わせて調整するって。いつ空いてる?」
『まあ土日かなあ』
「じゃあそれで返事しとこうか、連絡先もらったし」
そういう訳で、話はトントン拍子に進んで土曜。近所の体育館貸し切りで、千歳は体力測定に挑むことになった。心配なので俺もついてきた。
まず、長座体前屈。足を伸ばして座り、腿の上に箱を置き、箱に手を置いて前屈、どれくらい箱を動かせたか見る。千歳は55cmを記録した。はたから見ても、かなりべったり前屈して体が柔らかいように思える。
『ワシ、結構できたんじゃないか?』
千歳は高千穗先生に聞き、高千穗先生は頷いた。
「二十代男性で46cmほどですから、かなり柔らかいですね」
『やった!』
お次は反復横跳び。敏捷性を見るらしい。千歳は70点をマークした。
『どう?』
「二十代男性の平均より10点多いですね。でもやはり人間の範囲内です」
『ふーん、まあワシ、飛ぶほうが速いもんな』
途端に高千穗先生は食いついた。
「えっ、どれくらいですか!?」
『わかんないけど、車よりは速いぞ、高速のやつ』
「後で詳しく聞かせてください……!」
鼻息を荒くする高千穗先生を、俺は次の体力測定に促した。
「まあ、その、後でですので、次をお願いします」
「で、では。次は上体起こしです」
いわゆる腹筋である。俺が千歳の足を押さえて30秒でどれくらいできるか。千歳は45回をこなした。
「20代男性平均が28ですから相当ですね……でも鍛えてる人なら行く範囲かな」
お次は握力。筋力を見る検査だ。高千穗先生は握力計を示して言った。
「このために新品買いましたから。存分に壊してください」
『んじゃ、遠慮なく』
千歳は握力計を握って力を込め、バキッと音がして握力計が壊れた。高千穗先生が言った。
「これ100kgまで測れますから、少なくとも100kg以上ってことですね」
なるほど、千歳は特に筋力に優れてるわけだ。
「千歳ってマッチョなんだねえ」
『まあな』
ドヤ顔の千歳。基本的に、いい結果が出るとうれしいらしい。
次は立ち幅跳び(跳躍力)。千歳は飛行せずに普通にジャンプし、3m60センチを記録した。高千穗先生は歓喜した。
「もう少しで世界記録に並びますよ!」
『ワシ、結構飛べるんだな?』
「すごいね、千歳」
最後は20mシャトルラン。持久力を見るものだそうだ。20m間隔に引かれた横棒の間を制限時間内に走り、徐々に制限時間が短くなっていく中で足が横棒を踏めなくなったら、そこで記録終了。最大が247往復とのことだったが、千歳は危なげなく247往復を走りきった。
『まだできるぞ?』
「いえ、これ以上は評価不能なので……お疲れ様でした」
高千穗先生は千歳に頭を下げた。結構かかったな、特にシャトルラン……。
結果をまとめると、千歳は成人男性平均より総じて体力が上で、特に筋力、跳躍力、持久力に優れているってことか。すごいな。
「お疲れ、千歳。お茶飲む?」
『飲む!』
千歳がペットボトルのお茶をぐびぐびしてる間、俺は高千穗先生に補足説明をした。
「千歳が早く飛んだの、確か和束ハルさんを止めようと飛んでいったときでしたよ」
『うん、あの時高速の上通ったんだ。そしたら車より速かった』
あっという間にお茶を飲みきった千歳も言い添えてくれた。
「なるほど……では最低でも、時速80km以上……」
高千穗先生は顎に手を当てた。俺は言った。
「では、そんなもので大丈夫でしょうか?」
千歳に変なことされないうちに早く帰りたい、学術的に重要なデータが取れるとしても!
「ねっ、千歳も外食早く行きたいよね?」
今日のお昼はファミレスかどっかで食べようと千歳に言ってあった。
『うん、腹減った』
「じゃあそういうことで、撤収手伝いますから」
そう高千穗先生に言うと、高千穗先生は残念な顔ながら頷いた。
「ではお願いします……と言うか、怪しまないでください。妙なことはしないですよ、霊障は嫌なので」
「でも、高千穂先生が妙じゃないと思うレベルと千歳が妙じゃないと思うレベルが同じかわからないですし」
「……すみません」
縮こまる高千穂先生。自覚はあるのかい。
『なー、早く片付けようよ』
千歳がもう箱だのなんだの片付けながら呼ぶので、俺はとっとと済ませて、千歳との食事という楽しい時間に急ぐことにした。
コメント
1件
きゃあ〜〜〜!!今回の千歳ちゃん、完全に別枠の生物だったね!!😭💕 「米!5万円!」ってはしゃぐの可愛すぎでしょ!お米持ってかえってウキウキしてる姿が目に浮かぶよ🥺💖 握力計バキッ!って壊すとことか、シャトルラン247往復平気で走り切っちゃうとことか、もう人間じゃないけど愛おしさが溢れて止まらない…!高千穂先生の研究熱心な感じとタイヘイくんの冷静ツッコミのバランスが絶妙すぎて、ずっとニヤニヤしながら読んじゃったよ!! 疲れたときに読むこういう緩い日常回、めっちゃ沁みる〜〜🌸✨ 次の話も楽しみにしてるよ!