テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
そんな「強制監視生活」が三週間も続くと、朝の景色まで変わり始めた。酒量を減らし、タンパク質と野菜をしっかり摂るようになったせいか。
泥のように重かった朝の目覚めが、嘘みたいにスッキリしていた。二日酔いの頭痛がない朝なんて、久しぶりだった。
俺は買ったまま埃を被っていたスニーカーを引っ張り出し、近所を軽く走るようになった。スニーカーの写真を送ると、即座にコメントがついた。
『わぁ! 朝からランニングですか!? すごすぎます! 偉いですっ!』
(……褒めすぎっすよ。……まあ、悪い気はしねえけど)
気づけば、小森のコメントを確認するのが、一日の始まりのルーティンになっていた。
数日後。接待で帰りが遅くなり、写真を送るのが深夜1時を回った時のことだ。
(……さすがに、もう寝てるか)
既読がつかないのは当たり前だった。なのに、俺はベッドに入ってからも、無意識に何度もアプリの画面を確認していた。
(……いや、別に。待ってない!口うるさいコメントが来ない方が、せいせいするし)
そう自分に言い聞かせても、なんだか落ち着かなかった。
翌朝、走っている最中にスマホが震えた。
『昨日は遅くまでお疲れ様でしたっ! でも、お仕事無理しないでくださいね? 今日も応援してますっ!』という通知。それを見た瞬間、こみ上げてきた嬉しさと、そんな自分への激しい動揺に、俺は足を止めた。
(……俺、あいつに完全にペース握られてる?……)
飲み会に行く頻度も、自然と減っていった。何を食っても何を飲んでも、スマホの向こうからコメントが飛んでくるから。
『あ! 串揚げ発見! 明日はお野菜を多めにとってくださいね! チートデーもいいですけど、翌日以降の調整が大事なんですよっ!』
いつしか、スマホに彼女からのコメントがないと、一日が終わった気がしなくなっていた。
そんな、理不尽で、妙に温かい監視網に包まれて一ヶ月。俺は、驚くほど体が軽くなったのを自覚しながら、運命の再検査当日を迎えた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
43
#独占欲