先生「つまり、この直方体を使って面積比を………」
渡辺「……ふぁぁっ、」
今日も窓枠に切り取られた青空をぼーっと見る
少し開いている窓から聞こえてくるのは
うるさいくらいの蝉の声
たまに吹く風は生ぬるい空気を運んでくるから嫌い
窓側の特権はやっぱりこの窓から青空を見られることだけだろう
暑いし、蝉の声はうるさいし。
先生「…って、渡辺!!!!お前聞いてるのか??」
渡辺「………………」
あーうるさい、
じめじめした空気とともに広がる張り詰めた視線
渡辺「………さーせん」
先生「お前なぁ?ノートもろくに取らずにおm」
渡辺「すいません、気分が悪いので保健室に行ってきます」
先生「ちょっ、まだ話が…」
がららっ ばたん
少し大袈裟気味に扉を閉める
いらいらしてしょうがない。
そもそもあんなの社会に出て使わないでしょ
なのにあんなに愚痴愚痴と…
それを聞いてられるクラスもすげーわ。
そんな事を考えながら俺は4階の屋上へ向かっていた
階段は暑くて登るだけで制服に汗が染みる
渡辺「あっつ、」
服でぱたぱたと顔を仰ぎながら屋上に辿り着く
ほんとは入っちゃダメだけど鍵が壊れてるから侵入し放題
がちゃっ、
渡辺「うぇっ、」
吐き気がするほど暑い
でもタンクの裏側の影に来ると少しだけ、涼しくなる気がした
それでも暑いものは暑い
ただ暑いからと言って校舎に戻る方が嫌気がしたから影に寝転ぶ
渡辺「ん〜…」
仰向けになりゆっくりと目を開ける
雲ひとつない青空は俺の心を洗ってくれているような気がした
渡辺「ねっむ、」
気持ちの良い温かさに変わった頃、俺は目を閉じ惰眠を謳歌した
渡辺「んっ、」
目を開けると真っ赤に広がる茜空
渡辺「っ、今何時、」
スマホで時間を確認しようと起き上がると、
時刻は17・28分を示していた
渡辺「やばっ、帰んねぇと、」
そう思い俺は立ち上がる
渡辺「………え、」
俺が立ち上がった時、目に入ったのが屋上の手すりから部活などが終わって帰っていく生徒を見ている人
渡辺「………………」
まぁいいや、
無視して帰ろ、
?「ねぇ、」
渡辺「びくっ、」
渡辺「…俺、ですか?」
?「そう。君以外人居ないから」
なんだか素っ気なく話すあの人
ほんとに誰なの?
?「君、渡辺くんでしょ?」
渡辺「…そうですけど、」
渡辺「あなたは…?」
?「目黒。目黒蓮」
そう言いながら顔をこっちに向けた
渡辺「…、!」
シースルーの前髪でぱっちり二重
輪郭も好青年の輪郭でどこか大人っぽい
目黒「君、なんでここにいるの?」
渡辺「………んなもん理由なんてねぇよ、」
目黒「ふーん」
渡辺「…てか、お前こそなんでいんだよ、」
目黒「急なお前呼びは失礼じゃない?」
目黒「まぁいいけど笑」
目黒「俺も理由なんて無いかな〜」
渡辺「……………」
目黒「…あのさ、」
渡辺「…なんだよ、」
目黒「…俺の事、」
目黒「………ごめん、やっぱりなんにもない笑」
渡辺「……俺もう行くわ、」
目黒「…ふふ、笑じゃぁこれ、あげる」
そう言って目黒の手のひらから出てきたのは
指輪だった
渡辺「…ありがたく貰っとくわ」
目黒「笑」
目黒「うん、ばいばい笑」
渡辺「………ん、」
がちゃっ、
目黒「………」
目黒「覚えてないよね、笑」
そんな俺の声はあの真っ赤に燃えた空に焼かれて消えていくような気がした
________________________
渡辺「ただいま〜」
渡辺母「あんた!!!!また授業サボって!!!!!!」
渡辺「…………………」
渡辺母「もうあなたはどれだけ迷惑かければ気が済むの!?!?!?!?」
家の扉を開けると耳に飛び込んでくる母の怒鳴り声
渡辺「だって今日のあれは…!!!!」
渡辺母「ほら!!!!!また言い返そうとして!!!!!」
渡辺母「なんで素直に話飲めないの!?!?!?」
渡辺「……もうどけて、」
玄関でもたれ掛かりながら話す母さんにイライラして早く部屋に戻ろうとした
渡辺母「…まったく、本当にあなたって子、」
『あんたなんて、産まなきゃ良かったっ、』
渡辺「…!!、」
俺の家は俺と母さんだけ
兄が一人いるんだけどもう立派な社会人になって早々と社会へと自立して行った
なんでも、仕事が忙しいらしく中々こっちには顔を出さない
父は俺がまだ物心つく前に亡くなった
元々、心臓の病気がある人で生きるのもそう長くは無理だったらしい
だから、この家には俺と母さんだけ。
俺らはアパートの1階に住んでる。
渡辺「…兄ちゃんみたいな物分り良くない子でごめんな、笑」
渡辺母「…………………、」
その日は母さんと顔合わせすることは無かった
別にイライラはしてたけどあれを言われて
あぁ俺マジでいらねぇ子なんだなって思っただけだし
生まれてきただけ損みたいな
みんなに迷惑かけてるのも知ってるし、自分で自分の感情コントロールができてないのも分かってる
…でもだからってあの言い方はなくない?
って流石に俺も思っちゃったんだよね笑
がちゃ、
渡辺「あ〜あ、」
片手で持っていたバッグをベッドの脇に投げ捨てそのまま俺はベッドに身を投げるように倒れ込む
白い天井をぼーっと見ながら片手でこの部屋に来るまで握りしめていた指輪を見る
渡辺「……………」
もう嫌、
逃げたい
全部のことから逃げてまた何も無いところから始めたい
静かに目を閉じるとまぶたの裏に見えたのは
目黒蓮だった
見本のような青年顔で笑う顔が俺の記憶からこびりついて離れない
渡辺「なんなんだよあいつ、」
俺は疲れも溜まっていたために昼寝をしたのにも関わらず目を閉じ深い眠りについていった
そして次の日
俺は学校で目黒蓮を探した
全クラス全学年まわった
だが、目黒蓮
なんて人はうちのクラスにいないと全クラスに言われた
女「目黒蓮?誰それ笑」
渡辺「…は、?」
女「いやいやマジで居ないから笑てか、学校でそんな名前聞いたことないし笑」
渡辺「…………」
これを言われるばかり
そして、俺はもう一度屋上へと向かった
がちゃっ!!!!
渡辺「はぁっ、はぁっ、」
目黒「うぉっ、笑」
目黒「なんでそんな息きれてるの笑」
渡辺「……いたっ、…」
渡辺「お前っ、存在してるよな…!??」
渡辺「全学年回ったのに、っ、そんなやついねぇって言われて、…、」
目黒「……………」
目黒「翔太くん。ちょっと来て」
俺はそう言われ目黒の方へ手招きされる
目黒「…………」
目黒「今から言うこと、絶対びっくりすると思うから心して聞いてね?」
渡辺「………ん、」
目黒「…俺、3年前に亡くなってるの」
渡辺「…は、」
目黒「それで、ついこの間、魂がこっちに戻ってきちゃって、」
目黒「俺なんかやり残したことあったっけって思って自分の部屋行ったら」
目黒「…机の引き出しに指輪入れてたの思い出して、」
渡辺「………俺宛の?」
目黒「うん、」
目黒「………翔太くん、」
目黒「俺ら昔出会ってるんだよ…、?」
目黒「…ん〜、あっ、これなら…」
さっと後ろを向いて何かをしている
直ぐにこちらを向いた
目黒「どぉ〜?これなら分かるでしょ!!!」
渡辺「…!!!!!もしかしてっ、めめ、!?」
目黒「…ふふ笑そうだよ笑」
渡辺「………」
ぎゅっ、
俺はめめに抱きついた
渡辺「お前どこいってたんだよっ、!!!!」
渡辺「急にいなくなってっ、また急に戻ってきて…!!!!」
渡辺「ずっと、ずっと、…ぐすっ、」
目黒「え?笑 翔太泣かないでよ笑」
渡辺「あの指輪も、…っ、」
渡辺「あん時俺らが約束したのだよな…、?」
目黒「…笑 覚えてくれてて嬉しぃな笑」
渡辺「忘れるわけねぇだろ、…」
目黒「俺、あの時に翔太から貰った指輪まだ持ってるよ笑」
目黒「俺は結局恥ずかしがってあげ損ねちゃったからね笑」
渡辺「んぐっ、ぅ、」
渡辺「お前が居なくなってっ、お前の大切さに気がついて、っ、」
渡辺「ずっと、ずっと1人で辛くて、っ、」
目黒「…翔太、?こっち向いて」
涙で濡れている頬を両手で包み込む目黒
ゆっくりとめめの方へ顔を上げると
一瞬視界が遮られたかと思うと唇に暖かいものが降ってきた
渡辺「んっ、んむっ、」
少しつけては離しつけては離しを繰り返しているうちに俺はめめの唇にすがっていた
目黒「…翔太やる気じゃん、笑」
渡辺「…るせぇな、…//」
渡辺「急にいなくなった分だからな、」
渡辺「………お前もう空に帰っちまうのか?」
目黒「うん、指輪も渡せたしキスもできたし笑」
渡辺「………で、」
目黒「…ん??」
渡辺「…いかないで、」
渡辺「……こんなこと言ってもめめを困らせるだけなのに、ごめん、」
渡辺「俺、やだよ、もうめめの居ない世界なんて、っ、生きたくない、」
心のどこかで思っていた
学校にも家にも居場所がない俺はこの世に必要ない
生きる糧がない俺は生きていたって命の無駄だし
渡辺「……もう嫌なんだ、っ、」
渡辺「学校にも、家にも、っ、居場所がないのが、」
俺は嗚咽しながら話す
めめはなんとも言えない表情でこっちを見ているのが受け取れる
渡辺「……………お願いだ、っ、」
渡辺「一緒に、」
『ここから飛び降りてくれないか、っ、?』
目黒「……、」
目黒「…一緒にあの世に行きたいの?」
渡辺「………また、生まれ変わってめめと一緒になりたい、」
目黒「………分かった、」
そう言って微笑むめめ
渡辺「………じゃぁ、死のう、?」
目黒「…うん、」
俺らは手を繋いでそのまま地面に落ちていった……
俺らが落ちてから数十分後に俺は発見された
その形がどうにもおかしかったらしく、
遺体は渡辺翔太1人のはずなのに人型がふたつ並んでいたという
そして、渡辺翔太の手には固く指輪が握られていたという
渡辺「めめ〜!!!!!」
目黒「翔太!!!」
ぎゅっ、
渡辺「ふは笑 俺と一緒になってくれてありがとう笑」
目黒「こちらこそだよ笑 ありがとう、」
抱きしめ合う2人の薬指にはきらりとひかる指輪がはめられていた
END
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ここまで読んで頂きありがとうございます!!!
実はまだこのお話の中では書ききれていないことがあります(めめと翔太の出会いなど…)
そこら辺は皆様のご想像にお任せしますのでぜひ想像してみてください
今回はメリーバッドエンドという主人公ふたりが幸せになるという新ジャンルに挑戦しましたがいかがでしたか?
個人的にはまったく満足していません笑
今後修正なども加えていく可能性があるので
もっと自分の理想作品になれるように頑張ります笑
ここまで読んで頂きありがとうございました🙇♀️
コメント
4件
神すぎる、泣ける、、 うぅ、、めめなべてぇてぇ、、 凄い好き、、
最高に好きです メリーバットエンドだからもぉすごい好きです(((語彙力 最後のでマジで、ほんとに、冗談抜きで泣きました 神作ありがとうございました🙇
めっっちゃ最高です!!神ですね