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「ふー、一旦ここまで。」
ぐーっと伸びをすると、まとめた資料を確認する。
俺はあれから、自分がどうやったら戦争の被害を伝えられるかを考えた。
そこで、1月に行われる市内弁論大会でスピーチをしようと思い立ったのだ。
そのためには、オーディションを通過しなければならない。
今は原稿の最終調整に取り掛かっていた。
と、コンコンと扉がノックされた。
「瑠唯、入るぞ。」
「あ、父さん。」
父さんは俺の決めたことを全力で応援してくれていた。
でも、『だからこそ一人でやらせる』と介入はしてこなかった。
自分で決めた道を歩くのは些か怖い思いもあったが、決意を固めた。
「進みはどうだ。」
「順調だよ。で、どうしたの。」
「ああ、瑠唯の友達が来ていてな。山口明來さんと言ったかな。」
びっくりした。明來には俺の家を教えていないはずなのに。
「やっほー!お久し〜。」
「相変わらず元気だな。胃もたれしそうだ。」
「ひっどー!元気がチャームポイントなのに!」
施設に保護されてすぐ、明來は里親さんに預かられたらしい。
少し遠いところに住んでいるそうで、ちょくちょく連絡は取るがそれきりだ。
「で、何で来たの。」
すると、明來は後ろに組んでいた手をほどいた。
「じゃーん!これ渡しに来たんだよ!」
そこには、色とりどりの花がまとめられた、花束があった。
「何で急にこんなの…。」
「急じゃないし!今日瑠唯誕生日っしょ?」
「あ。」
最近バタバタして忘れていたが、そういえば今日だった。
「自分の誕生日忘れるとかヤバすぎだって〜!」
「うるさい。そっちこそ花束とかキザすぎんだろ。」
「ふん!照れ隠しには乗らないよーだ!」
そう言いながらあっかんべーをする明來をみていると、なんだか心がぽかぽかしてくる。
ああ、やっぱり俺、諦められてなかったんだな。
「…なあ、明來。」
「なにー?」
「俺、明來のこと…。」
そこでふと我に返る。
やめよう。明來には、言わないでおこう。
「明來のこと、大事な友達だと思ってるよ。」
「えー、照れるんだけど!大丈夫、明來も瑠唯のこと、親友だと思ってるから!」
秘めたる恋もまた美しい。
そう本で読んだとはしゃいでいたのは、青い目の少女だったなと思い出した。
「じゃ、電車あるから帰んね!」
「ああ、じゃあな。」
『お前さ、あんなに明來と仲いいのに、俺で良かったのかよ。』
『どういう意味ですか。』
『いや、大切な人は自分の力で戻してやりたいとか思うだろ。』
『ああ、二人で面会させたことについてですか。』
『そうだ。』
『良いんですよ。あくまで明來の人生の主役は明來であって、俺じゃないんで。』
『そういうもんか。』
『出しゃばりすぎないのも、真の親友なんで。』
設楽先生との会話を思い出しながら、原稿に向かい直した。