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「桃くん、僕お弁当作ってきたんだ!よかったら一緒に--
「どいて。そいつは俺のだろ?」
昼休みの屋上。
春の風が心地よく吹く中、
青の声と冷たい声が交差した。
「も、桃くん……?」
青が戸惑いながら視線を移すと、
そこには見慣れたいつもの桃と、
もう一人の桃がいた。
よく似ているが、
違う。
表情も、
目の光も、
立ち方も。
通常世界の桃が穏やかに微笑むのに対し、
別世界の桃はどこか挑発的に
青を見下ろしている。
「また来たのか、お前……」
通常世界の桃が苦々しく言うと、
ドSな桃は笑った。
「俺からすれば、おまえが “来た” んだけど? こっちは最初からこの世界にいる前提で話してるんだよ」
そう、これは異世界の交差点。
ある日突然、
世界と世界が繋がり、
別の自分たちが姿を現すようになった。
そして、
ドSな桃… “黒桃” と仮の名で
呼ばれる彼は、
この世界の青に強烈な執着を見せ始めた。
「青、こっち来い」
黒桃が手を差し伸べる。
その声音に逆らえない何かがあって、
青の足が一歩前へ出かける。
「青ッ!」
その肩を掴んだのは、
通常世界の桃だった。
彼の手は震えていた。
「……だめだ、。こいつは君の知ってる “青” じゃない。ここにいる青は、この世界の人間なんだ」
「関係ない。顔も声も仕草も全部一緒だ。……俺の失った青に、そっくりだ」
黒桃の瞳が一瞬だけ翳る。
「……ッ失った、?」
青が問うと、
黒桃は目を細め、
舌打ちした。
「……あの世界で、俺の青は……俺のせいで消えた。手に入れてから気づいたんだ。強く支配することが、守ることじゃなかったって」
初めて聞く重い声に、
風が止まるような気がした。
「でも、お前がここにいるってことは、神様がもう一度チャンスをくれたってことだろ?」
「違う!」
優しい桃が叫んだ。
声が震えていた。
「青は誰かの代わりじゃない。誰かの償いのためにいるわけでもない。青自身なんだ!」
沈黙が流れる中、
青は一歩、 二歩と前に出た。
「僕は……君たちのどちらにも、まだ決められない」
黒桃の眉がぴくりと動く。
「けど……ドSな君が、誰かを失ったこと、ちゃんと後悔してるってわかった。それだけは、受け止めたい」
「青……」
「そして、優しい君。君がぼくのことを、ちゃんと “今” のぼくとして見てくれてるのも、わかってる」
視線を交互に移しながら、
青は微笑んだ。
「だから、どちらか一人に決めるのは、もう少し時間をください。……それでも、傍にいたいって思ってくれるなら、ね」
黒桃は一瞬だけ驚いた表情を浮かべ、
それから口元をゆがめて笑った。
「ほんと、可愛くてたまらんな。そっくりだ。……いいぜ、時間くらいくれてやる。だけど俺はおまえを手放す気はない」
優しい桃も、
少しだけ強くなった目でうなずいた。
「もちろん。青が望むなら、何度でも手を伸ばす。たとえ、どんな世界の誰が相手でもね」
そして、
屋上の風がまた吹き始める。
ふたりの桃が、
ひとりの青に恋をする。
それは運命のいたずらであり、
希望のはじまりだった。
青が選ぶその日まで、
この三角関係は終わらない。
コメント
1件
わわわわ っ !! 😭💕 早速 投稿してくださり ありがとうございます !! 😭 本当に 嬉しいです !! もう この先の人生 悔いは ないです 🥺 ストーリー も めっちゃ めちゃ いいです 🫶🏻︎💕︎︎ 桃 くん 二人での 青 くん 取り合い 最高です 💞🥹 本当に ありがとう ました !! 🙇♀️✨