テラーノベル
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一方その頃。
向井は阿部の横に腰を下ろし、天井を見上げて笑った。
「阿部さんってさ、なんや完璧に見えるけど……時々めっちゃ意地悪やね?」
阿部は視線を外さず、淡々と答える。
「意地悪かどうかはわからないけど、……欲しいものは譲らない。」
「もしかして……ふっかさんのこと?」
向井はわざと軽く言いながら、その横顔をじっと見つめた。
(俺が欲しいんは……阿部さん、あんたなんやけどなぁ)
その想いを口にすることなく、向井はいつもの明るい笑顔で笑い飛ばした。
そして阿部は、心の奥で固く決意する。
(ふっかは絶対に、俺のものにする。)
けれど、深澤の視線は無邪気な関西弁の後輩に。後輩の想いは、静かに阿部へ。
三人の心は、一方通行のまま絡まり合っていた。
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