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???「大掃除を手伝って欲しいんです」???「こんな時期に大掃除?珍しいわね」
???「散らかってるのか?」
???「橙の……部屋……」
???「瑠璃くん〜キモイ顔になってるよ〜」
ここは、生徒会室。「橙」は「雨花」、「橙」、「桃時」、「兎白」、「瑠璃人」に大掃除を手伝うよう頼んでいた。
橙「散らかってはいないんですけど、書類棚にごちゃ混ぜでプリントなどを入れてしまったり、断捨離したいものもあるので手伝って欲しいんです」
桃時「悪いけどアタシは無理だわ。そういう体力仕事に向いてないし……」
兎白「俺も申し訳ないが断る。今日は後輩の自己練習をみなくちゃいけないんだ」
橙「分かりました。雨花さんと瑠璃人さんはどうでしょう?」
瑠璃人「オレは全然構わないぜ!二年生は今日部活休みだからな!丁度良いぜ!」
雨花「わたしも良いよ〜!」
橙「ありがとうございます!では、仕事を終わらせたら私の家に一緒に行きましょう!」
雨花、瑠璃人は橙と一緒に大掃除をすることになった。
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橙「ここですよ」
瑠璃人「でっけぇ!」
雨花「わたしは桃時ちゃん家も兎白くん家も行ってるからもう驚かないよ。橙ちゃん家にも行ってるし」
橙「どうぞ!入って下さい」
瑠璃人「お邪魔しまーす」
雨花「失礼します」
雨花、瑠璃人は橙の家に入る。家の中は吹き抜けになっており、そこらじゅうの窓から光が差し込んでいた。
橙「元々、私の父が仕事用のために使っていた家だったんですが、母と暮らさないようになってからはここで生活してます」
瑠璃人「こんな立派な家が仕事用?!すごいな……」
瑠璃人「でもなんか明るくて開放感のある家だね」
橙「前住んでた家は、閉塞感のある家だったので、父が改築してくれたんです」
雨花「そっか。家族との想い出が悪いことばかりじゃないのは良いことだね」
雨花はニコッと笑う。
橙「!、うふふっ。そうですね」
瑠璃人「なぁ!早く橙の部屋行こうぜ!」
橙「はいはい。では行きましょう」
雨花たちは橙の部屋に移動した。
瑠璃人「ここが橙の部屋かぁ」
雨花「相変わらず百科事典とか図鑑とかかしこさんなものが沢山置いてある……」
雨花「これはほとんど母が用意したものなんですけどね」
橙の部屋は参考書や教科書、単語帳の山や暗記をするためのポスターなどが大量に貼ってあった。
雨花「……橙ちゃんはこの部屋どう想ってるの?」
橙「……母との繋がりを完全に切りたくないんです。あんな人でも私の母親ですから」
雨花「……そっか」
瑠璃人「よぉっし!綺麗にするぞ!」
雨花「瑠璃くん……」
橙「私の部屋に来たことで目がキラキラしてますね。ふふっ」
瑠璃人は掃除する気満々である。
雨花「じゃあやりますか!」
雨花たちは掃除を始めた。
瑠璃人「ん?これって橙の小学生の頃の卒アルか?!」
橙「そうですよ。よくみつけましたね」
雨花「えぇ!?みたいみたい!!」
橙「別に構いませんが……」
瑠璃人「よっし!競走だ!雨花!誰が一番早く橙の写真をみつけられるか!卒アルを最後までみて最終的にどこのページに橙が写ってるか言うんだ!」
雨花「別に良いよ」
瑠璃人「よぉーいスタート!」
雨花「………」
瑠璃人「うぅーん」
雨花「………次のページ移って良い?」
瑠璃人「え!?もうこのページみたのか?!」
雨花「瑠璃くんが読み終わるまで待つよ」
瑠璃人「いや!大丈夫だ!行くぞ」
数分後
瑠璃人「け、結局みつけられなかった……」
雨花「このページに写ってるんだよ」
勝者:雨花
橙「はいもう終了です。そろそろ掃除手伝って貰えますか?」
瑠璃人「はぁーい……」
雨花「やりますか」
雨花たちは引き続き掃除を行う。
瑠璃人「何か活字だらけで目がしょばしょばしてきたぜ……」
雨花「あはは。でもあと少しでこの戸棚は片付くじゃん。橙ちゃん今別の部屋掃除してるみたいだから次の棚に移って良いか聴いて来るね」
瑠璃人「へいへい」
雨花は橙の元に向かった。
雨花「(橙ちゃん。この部屋かな?……ん?ドアが開いてる……)」
雨花はゆっくりドアを開ける。すると、
ビリビリビリビリグシャッ
雨花「(なんか捨ててる……)」
橙が紙のようなまのを捨ててるのをみた。その時の橙の顔はとても虚ろだった。
雨花「…………」
雨花はドアを先程の所まで引くと、ノックした。
雨花「橙ちゃん!次の棚に移って良い?」
橙「あっはい!どうぞ!」
橙も部屋から出ると、瑠璃人のいる自分の部屋に向かった。
雨花「ごめん。橙ちゃん。わたしトイレ借りるね」
橙「はいどうぞ」
橙が部屋に入ったのをみると……
雨花「……よし」
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「帰ったぞ〜!橙〜!」
橙「あっお父さんが帰ってきました」
瑠璃人「保護者会で会った人か!」
雨花「わたしは初めて会うなぁ」
「ん?誰かいるのか?」
橙「うん。大掃除手伝ってもらおうと想って」
「そうだったのか!じゃあスイーツ出さないとな!冷蔵庫に美味しいコーヒーゼリーを入れてあるんだよ。雨花さんに瑠璃人君。一緒に食べよう」
瑠璃人「ありがとうございます!」
雨花「コーヒーゼリー……!」
雨花たちはコーヒーゼリーを食べることにした。
雨花「ん!超甘くてまろやか〜」
瑠璃人「おう!すんげぇうめぇ!」
橙「気に入って頂けたなら良かったです!」
「中々良い反応をしてるな!もっと食べてくれ!」
瑠璃人「ありがとうございます!」
雨花「頂きます!」
「橙にも友達ができて良かった。ずっと周りから疎まれていたから、こうやって家に呼べるほど仲良くなって……」
瑠璃人「オレは橙がいてくれて……その……安心できるんで!」
雨花「あはは。いつもそういうこと言ってるよね」
「おぉ!その話もっと詳しく……!」
橙「やめてよ!お父さん!」
こうして、コーヒーゼリーも食べ終わり、掃除も終え、雨花と瑠璃人は帰っていった。
橙「楽しかったなぁ」
「橙の他の何者でもない”今”を幸せにしてくれてるんだな」
橙「え?」
「今の橙は、とても幸せそうにみえる。……あの時お母さんに強いられていた時とは段違いだ」
橙「……うん。そうだね」
橙と橙の父親は、雨花と瑠璃人をみ送りながら、家に戻って行った。
数日後
「ん?私宛?」
ある日、橙の父親宛に封筒が届いていた。
「何だ?……!」
封筒を開くと中にはビリビリに破かれたものをテープで修理した橙の賞状が入っていた。
「他にも紙が入っている……」
その紙にはこう書かれていた。
「橙ちゃんのお父さんへ
まず第一に、この賞状を修理したのはわたしの独断です。橙ちゃんにとってこれは大切なものだと想いました。橙ちゃんは寂しそうに橙ちゃんの部屋をみせて貰った時に、お母さんとの繋がりを完全に切りたくないと言っていました。この賞状はお母さんとの繋がりの一つです。橙ちゃんは捨てたけれど、もしかしたらいつか捨てたことを後悔してしまうのではないかと勝手ながら想い、修理させて頂きました。余計なお世話なのは百も承知です。橙ちゃんにみせるかどうかはお父さんに任せます。きっと今の橙ちゃんは突き返してしまうかもしれない危うさを持っているかもしれないので。ここまで読んで下さりありがとうございました。
コーヒーゼリーを美味しく頂いた一人より」
「…………」
「橙ちゃん」と呼んでいると言うことは、
きっと雨花さんだ。
雨花さんは守ってくれたんだ。
橙が大切にしたいはずのものを。
橙の願う母親との繋がりを。
雨花さんは、どうしてそんなことができるんだろう。
雨花さんは、雨花さんの目は、優しさとは程遠い白いキャンバスに黒を塗りたくったようなそこらじゅうのものを飲み込む闇のような目をしているのに。
雨花さんがいてくれて
本当に良かった
橙の父親は賞状の入った封筒を抱き抱えると、家の中に入った。
橙「おかえり!」
「ただいま!早速夕飯作るからな!」
橙「うん!」
橙の父親はひとまず言わないことにした。
橙の精神状態が分からない以上、橙の気持ちを知ろうとし続けることしかできない以上、下手にいじるようなことはしない方が良いと想ったのだ。
「今日はカレーだぞ〜」
橙「わぁーい!やったぁ!」
橙の家には、ひとまず明るい陽だまりのような声色が響いたのであった。
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