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宇宙歴2XXX年――
銀河系を浮遊する第376星団は社会問題の上位にあげられる宇宙生物の侵略を受けていた。
「ピロロン!」
風船型の頭と紫のボディー。猫のような大きな瞳はどこに視線を向けているのか分からない。
なめらかに動く10本の足はタコのように自由自在。この世界の悪役。
星団へと浸食する沢山の足軽エイリアンの一体である123号はいつものように未来型銃を片手に宇宙防衛軍のアジトを襲撃していた。
「エイリアンめ!俺たちのコロニーの平和は乱させない!」
整った顔の青年は足軽エイリアン123号の前に飛び出した。この世界の主人公だ。
「ピロロロン!」
足軽エイリアン123号は宇宙防衛軍の主人公が理解できない言語で語りかけた。
「覚悟しろ!」
宇宙防衛軍の主人公は目の前の足軽エイリアン123号の言葉などに聞く耳は持たない。
そりゃあ、そうだ。彼の敵は僕ではなくこの後に登場するラスボスエイリアンである。
ここであっけなく主人公にやられるのが役目だ。いつものようにザコキャラの鏡のように前に飛び出す。
主人公の銃に命中すれば役目は終わるはずだった。
しかし、今日はいつもと違った。
足軽エイリアン123号と宇宙防衛軍の主人公の間に隕石が落ちたからだ。
ここはコロニーの中枢だ。隕石が起こる確率などかなり低い。いや、そもそもこのタイミングで隕石が落ちるという展開は初耳だ。もしかしたら創造主様が新たに創造した物語の可能性もあるだろうが…それにしたっておかしな話だ。
なぜなら隕石の描写は明らかにこの世界の物とは異なっているからだ。
しかも小刻みに動いている。まるで生きているかのように…。
「なんだこれは?」
宇宙防衛軍の主人公も困惑しているようだ。
二人してしばらく観察していると隕石はニョキニョキと姿を変え、形を成していく。
この世界の悪役キャラである足軽エイリアン123号よりもはるかに大きく、不気味な容姿のモンスターが現れる。
思わず呆気に取られていた。
「なるほど。新手のエイリアンか!」
宇宙防衛軍の主人公はこの状況を自分の知識を元に推測した。
やはり、状況判断能力はザコもといモブエイリアンである自分とは違うと足軽エイリアン123号は思った。
ギュルッ!
肌をゾワゾワとさせる新手のモンスターは軽快に鳴き声を上げた。
「いいさ!先にお前を始末してやる!」
宇宙防衛軍の主人公はカッコよく決め台詞を唱えた。
人言語を話せない足軽エイリアン123号としてはちょっとうらやましい。
そんな呑気な事を考えている間にモンスターは主人公の必殺攻撃も物ともせずその胴体にかぶりついた。
「なっ!どうして主人公の僕が…」
その言葉を最後に宇宙防衛軍の主人公は跡形もなく消えた。
「ピロン!」
足軽エイリアン123号は言葉を失った。
主人公が消滅するなど聞いていない。
どうすればいいのか分からない。
ガルルルッ!
巨大な騒音のモンスターの泣き声のせいで飛ばされそうになる胴体を吸盤で必死に支える。
そして、物は試しとばかりに持っていた未来型銃をぶっ放す。
だが、所詮はモブキャラ。へなちょこな攻撃はモンスターのボディを跳ね返るだけだ。
そのお返しとばかりにモンスターの口から光線が足軽エイリアン123号を襲う。
万事窮すのモブキャラに救いがあるわけがない。
足軽エイリアン123号は主人公ではなく謎のモンスターの攻撃によって退場することを覚悟した。