才花は黙り込んであれこれ考え、泣くこともなくソファーに横になったと思うと、思考をシャットダウンするように寝てしまった。
ショックを和らげる自己防衛のために、自ら意識を飛ばしたのかもしれない。
才花をベッドに運び、彼女が横になっていたソファーにもたれて目を閉じた俺に、小さく声が掛けられた。
「寝た?」
「力尽きてな…」
「微妙なタイミングになったな」
「こちらからリークしても、警察のタイミングはコントロール出来ねぇ」
「吉井さんたち、こっちの警察なら融通がきくけど…才花ちゃん、一番不安定だよな」
「不安定どころか、危ういな」
以前、才花のことを調べる依頼をした人間に、今回の事故も調べるように俺は依頼していた。
事故については、そいつから先に連絡があって知った。
だから俺たちは、西河京子と江川ミナミの関係性を警察にリークしていたのだが、才花の感情の一進一退が危うい状態の時に、警察からの連絡が重なったのはキツイな。
「羅依、電話」
音もなく光る電話に気づいたタクの声で、ローテーブルの上のスマホを取る。
「ん」
‘連絡ありましたか?’
「あった。才花にとっちゃ、最悪のタイミング」
‘チッ…多分すぐに出てきます。傷害罪は15年以下の懲役か50万円以下の罰金’
「出てきた方がいいか?」
‘不起訴で刑事事件に発展させずに保釈となった方が痛い目に合わせられるが、その前に示談金は受け取ってください’
「だな。また連絡する」
‘羅依、踏ん張れよ…’
「当然」
‘頼もしい。では、また’
俺の悪友とも言える親友。
調べを依頼した人間で……あの夜、才花の送迎をした男だ。
踏ん張れよ……か……俺が踏ん張って才花が救われるならいくらでも、だ。
コメント
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調べを依頼して、あの夜の送迎をした悪友はいったい何者だろう。 踏ん張れよって言ってた。羅依踏ん張れ! 示談金に慰謝料?他になにがある?精神的苦痛?生活費?絞れるだけ搾り取ってやれ!なにも出来なくしてやれ!