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#大人恋愛
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「昨日、我が社の企画部の新人、伊藤リュウジくんが販促コンペで最優秀観客賞を受賞しました〜拍手〜!!」
企画部のみんなが、部長の横に立っていたリュウジに大きな拍手を送っていた。
「会場まで見に来てくださったみなさんも、本当にありがとうございました」
彼が深々と頭を下げると、「おめでとう!」「よくやった!」と、声が上がった。
「今後期待してるよ!」
「ありがとうございます」
「この賞の企画書は、来年夏に向けての大々的なイベントにするから、企画二部と三部、合同で一緒に動けるように、今からスケジュールチェックしておいてくれ」
「はい!!」
朝礼で、コンペについての説明や挨拶が一通り終わると、リュウジはさらに会社幹部や他の部署へ部長と回る予定になっていた。サンゴだけは、またいつも通りのオフィスが戻ってきていた。
午後一時。
久しぶりに八村と蘭に誘われたランチから戻ると、リュウジはすでに、デスクでキーボードをカタカタと早撃ちしていた。彼が、何度も書類を見ながら忙しそうにメール返信をしている様子を、サンゴは横目でチラッと覗き見た。
(ドキドキしてるのって、また私だけなのかな?)
「せんぱーい、どうしましたぁ?もしかして、新しい案件来てます?こっちの見積書とかの返信、終わった後でいいですか?」
「ああ、うん。全然、終わってからで大丈夫」
「はぁーい」
いつも通り、一瞬、可愛らしい笑顔がこちらを向いて、またパソコンへ視線が戻る。リュウジは、いつもと変わらない様子でギャル語だし、可愛らしくにっこりしてるし、通常運転そのものだった。まるで、昨日の夜、何もなかったかのようなクールさだ。
(あれ?結局、私たちって、どうするんだっけ?)
付き合うとか、そう言う話、言われてないような気がしていた。何か肝心な話はなかったっけ?色々思い返すが、何も浮かばない……。
一瞬、「結婚するから大丈夫」とかサラッと聞いた気が……思い出すと顔が真っ赤になってしまう。でも、いつも大体不思議なことを言ったり、冗談めいたことを言う彼のことだから、よくわからない。
しかも、付き合う前から結婚とか口走るような男は大体無責任な奴が多いとか、先輩の話やら体験談とかで散々聞いていた。あの言葉も、行為のために適当に言われただけかもしれない……。
そう思うとなんだか血の気が引いてきた。サンゴの中で、騙された?軽薄すぎない?と言う、疑わしい気にすらなってきた。
(ちゃんとどこかで、一度時間を作って話さなきゃなのかな……)
キリッとした真剣な目で、仕事に打ち込んでいる彼の横顔を見て、やっぱり胸の奥がギュッと苦しくなる。鼓動が早くなって、じんわりと身体中、優しい気持ちに包まれる。
(私は、リュウくんのこと、やっぱり大好きだな……)
妹みたいな可愛さもあるけれど。小動物とか、カワウソやぬいぐるみみたいとか思うこともあるのは事実だけれど。
大きくて深くて、目指しているところに真っ直ぐな熱い気持ちも、普段から可愛くして楽しませてくれようとする優しい心も。あの丁寧であたたかな指や手も。
彼のことを本当に大切で、好きだと思う気持ちで、身体中いっぱいになる。サンゴは、自分の両手で両腕をぎゅっと抱き締めた。
(私の方は、この気持ちに、間違いはないと思う)
彼がどういう気持ちなのか、まだわからない。もしかしたら、本当に一夜限りだったのかもしれないし、勢いが高まってただけだったかもしれないけれど。サンゴの中では、本当に好きで、真剣に付き合えたらいいな、という気持ちに間違いはないと思った。
(だからって、女性の方から直球で聞くわけにもいけないらしいし。一度、そんな時どうすべきか、ネットで調べてみようかな)
大量のメールに返信しながら、サンゴが気持ちを落ち着けているところーー
「おーい!伊藤くん!ちょっとこっちきてくれる?」
「はい!」
部長に手招きされて、リュウジがサッと席を立った。部長から何かを見せられて、デスクで指差しながら話している二人を見ていると、今度は部長がサンゴを手招きしていた。
「有村くんもちょっといい?」
「はい!」
部長の席へ急いで向かうと、二人は招待状を手にしていた。
「コンペの受賞者たちのお祝いの小さなパーティーへの招待状が来ていてね」
指さされた会場とホテルの名前に、サンゴは一瞬目を疑った。
(わああああ!!あの超高級ホテルの超高級フレンチで立食パーティ!!?)
部長の手元を何度確認しても、その文字がしっかりと刻まれていた。
「次の土曜なんだけどね。二人で行ってきたらどうだ?」
「俺、先輩が一緒じゃないと行かないです」
部長の言葉が終わる前から、リュウジは食い気味に声を出した。
(嘘でしょ?最高!!いいのかな!?夢みたい!!!)
ネットや情報誌でずっと憧れてきた場所へのお誘いに、すぐにでも飛びつきたい気持ちだったけれど、一応、部長の顔色を伺う。
「いいんでしょうか?部長は行かないのですか?」
「俺はなんもしてないしな。有村くんが一緒に、本当に頑張ってコンペの準備してくれたの、みんな知ってるからね」
部長は優しい言葉で、アイボリーの招待状を手渡してくれた。サンゴはそれを見て、なんだか胸の奥からジーンときた。
「わああ!本当にありがとうございます!!!」
深くお辞儀をして、感動で胸を抑えていると、リュウジはなぜか部長にも、サンゴにも睨みを効かせていた。
「先輩が行くのが当たり前です!!何を全く……」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
部長から両手でしっかり招待状をいただいて、サンゴはホクホクした気分で席に戻った。後ろからついてきたリュウジがぶつぶつ言う声も、その時はほとんど耳に入っていなかった。
(明後日かあ。何着て行こうかな。着る服あったっけな?)
念願の超お洒落なホテルでの、立食パーティ。この大都会で、まるで夢か御伽話のように感じていたイベントに、まさか自分が出れられるなんて!!
終業後、サンゴは急いで電車に飛び乗り、家にあるフォーマルな服を引っ張り出して、緊急一人ファッションショーを開催した。
(こんな2年前の結婚式用の服じゃ……ダメじゃない?)
あったものをすぐにフリマに売ることにして、衣装情報を検索しまくる。
(買うのは、さすがにもう間に合わないかも……)
結局、金曜の夜もサンゴの頭は、パーティのことで頭がいっぱいで、急いで退勤した。そして、会社や繁華街からも割と近いところにあった、程よくフォーマルなワンピースのレンタルショップへ急行した。
そこでは、ちゃんとヘアアクセサリーから、パンプスまで、全身コーディネートの一式を、思いの通りに揃えられた。サンゴはそこで、ようやく納得できる状態で、パーティーに挑めることになった。
その二日間。
隣の席にいたリュウジが、何度も声をかけようとしていたことなんて、全く気づかずに……。
コメント
1件
第13話読みました!リュウジの受賞、おめでとうございます!サンゴの「付き合うって何も言われてない…」ってモヤモヤ、分かりすぎて胸がギュッとなりました。でも「やっぱり大好き」って気持ちに至るシーン、すごく良かったです。そして憧れの超高級ホテルパーティへの招待!サンゴのテンション爆上がり具合、可愛すぎます。次の展開、すごく気になります!🔥