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夜眠れず、窓の外をぼんやりと眺める。しばらく会えないとはどういうことだろう。何かあったのだろうか。
窓の外に浮かぶ半分に欠け、片割れをなくした月を見ながら、なぜか感じる焦燥感。なんとなく、嫌な予感がする。
デザイナーの彼にしばらく会えないと言われてから、一週間が経とうとしていた。特にすることもないので、担当医師であった青年からアドバイスを貰いながら、就職活動をしていた。
しかし、本当に時代は変わってしまった。誰にでもできるような単調作業はほとんどAI任せで、残っているのは研究や創作、エンタメ業や一部の接客業といったところだ。
だが、俺は創作などのクリエイティブな職業が、今でも人によって成り立っていることに感動していた。俺の記憶の一部では、あの頃にはもうAI絵師などというものが生まれていた。別に、絵を描くことを嫌っていたり苦手に感じている人に対する救済である技術自体を否定するつもりはないが、今考えてもAI絵師は好きになれる気はしなかった。なんとなく、人間特有の絵柄や構図、細部のこだわりなどの個性が潰されてしまっているように感じたのだ。だから、今でも人の手によってデザインやイラストが描かれていると思うと嬉しく感じたのだ。
さて、話はずれたがこれらの職業の中でどれを目指すべきか…。悩んでいると、元担当医師の彼が言った。
「やりたいこととか、やりたいことが無けりゃ特技でもいいんじゃないか?」
特技…、特技か。そういえば。
「どうだ、何かありそうか?」
「そういえば、俺機械とか得意だった気がする。」
「ああ、確かにな。学際の時、何かすごい改造して来たもんな〜。懐かし。でも、どうしてそんなこと覚えてんだ。」
「俺の事は忘れてたのに」と言わんばかりの顔に俺は「なんでだろ?」と返す。
「じゃあ、機械工学系の研究してみたら?教科書とかなら買ってやるし…。」
「そうしよっかな。相談乗ってくれてありがとう!」
「おう、頑張れよ。」
そういえば、デザイナーの彼は元気だろうか。久しく会えていないが…。電話による連絡が取れないので、いつも口頭での約束だったが、今回はその口頭での約束すらせずに帰ってしまったので、次がいつになるかわからない状況だ。
いつもの公園に行けば会えるかもしれない。気が向いたら行ってみることにした。
「そっちの様子はどう?」
「大丈夫だ。最近は俺いないところで外に出たりしてないし、就職の話とかでいっぱいいっぱいだから。」
「あなたの大丈夫は信用できない。」
「酷いこと言うねぇ。今回うまいことやってたらそんなこと起こってないよ、多分。それに俺そっちのは知らないぞ。」
「まあいい。とにかく満月の日は外に出さないで。」
「了解。巫女さん。」