テラーノベル
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「光を知る月、影に触れる太陽」
キヨ×レトルト
大好きな2人の物語です。
ご本人様方は全く関係ありません。
ただの妄想です。
キヨ・レトルト 同じ大学の同じ学部です。
“君の心の中を見れたなら….”
そんな魔法の様な物語。
大学の帰り道。
サークル仲間と別れ、ひとりで駅へ向かう途中の暗い路地裏。
キヨはふと、不思議な空気に足を止めた。
そこには小さな屋台のような店があった。
提灯の明かりに照らされて、古びた木箱や色あせた布で飾られている。
店の奥には背の曲がったおばあちゃんが座っていて、じっとキヨを見つめていた。
「いらっしゃい。坊や、これを探してるんだろう?」
かすれた声が耳に届く。
キヨは思わず肩を揺らした。
「……え?」
おばあちゃんはゆっくりと木箱を開け、手のひらに収まるほどの小さな人形を取り出した。
古びているけれど、不思議と温かみのあるその人形。
「これを持っていれば、好きな人と気持ちが繋がるの。 相手が笑えば坊やも嬉しくなるし、泣けば胸が痛む。 本当の心を知ることができるのよ」
キヨの胸が大きく跳ねる。
頭に浮かんだのはただひとり。
――同じ学部で、いつも笑っているあの人。
彼の笑顔は柔らかくて優しくて。
でもどこか遠い月の様な存在のレトルト。
信じられない。けれど、信じたくなる。
「……もし、本当に……レトさんの気持ちが分かるなら」
キヨはおばあちゃんから人形を受け取り、強く握りしめた。
その瞬間、胸の奥がじんわり熱くなる。
その姿を見ながらおばあちゃんが静かに告げた。
「その人形の使い方は坊や次第よ。その人形を持っていることを絶対に知られてはいけない。そして、必ず自分のそばに置いておくのよ。これだけは守ってね?」
キヨは静かに頷いた。
「さぁ、坊や。目を閉じて。その人形を握って繋がりたい相手を思い浮かべてキスをしてごらんなさい。」
キヨは言われるがまま、おばあちゃんの指示に従った。
目を閉じて、月明かりの様にふんわりと笑う
レトルトの笑顔をを思い浮かべた。
(レトさん….)
チュッ。
キヨが目を開けて辺りを見回すと先ほどまであった小さな店もおばあちゃんも消えていた。
キヨは驚いたが不思議と恐怖はなかった。
ふわふわと宙に浮いている様な不思議な気分のまま路地裏を出た。
不思議な人形と共に、キヨの片想いの日々が動き出す――。
最初の数日は、何も起こらなかった。
買った人形は机の上にぽつんと置かれているだけで、ただの古い飾り物のように見えた。
「……やっぱり怪しいよな」
キヨは苦笑して、それでも毎晩その人形を手に取ってみる。
けれどある日。
講義の最中、ふいに胸がざわめいた。
理由もなく、切なさが喉の奥につかえるように込み上げてくる。
「なんだこれ……」
額にうっすら汗が滲んだ瞬間、視線の先でレトルトが机に突っ伏していた。
普段なら明るく笑っている彼が、珍しく元気をなくしているように見えた。
(…なっ、なに?この気持ち…。レトさん…の?)
信じがたい思いに戸惑う。
次の日、 廊下で今度は急に胸の奥が熱くなった。
どうしようもなく心が弾むような感覚。
思わず辺りを見回すと、レトルトが仲間に囲まれて楽しそうに笑っていた。
その笑顔が眩しくて、だけど同時に胸の高鳴りが自分のものなのか、彼のものなのか分からなくなる。
「……繋がってる……?」
小さく呟いた声は、自分でも信じられないほど震えていた。
その日からキヨは気づく。
胸の痛みも、嬉しさも、ふとした寂しさも――少しずつ、自分の中に流れ込んでくる。
それが全部、レトルトの感情なのだと。
つづく
コメント
2件
描くの早過ぎませんか!?ありがとうございます!!今回の作品も楽しみにしときます!ー