リクエスト作品!
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ぬるく熱を帯びた夜。
抱き合ったまま、何度も確かめ合ったあとの静けさの中、翔太の声がぽつりと落ちる。
「……0.01って、こんな生みたいだったっけ?」
その声に、小さくまばたきをした。
いつも通りのトーン。
ふざけたわけでも、特別な意味もなさそうな。
ただ、感じたままを漏らしただけ。
だけど。
その“生みたい”って言葉が、妙に耳に残った。
何も言わず、俺は静かに翔太の髪に指を通す。
しっとりと濡れた髪が、指に絡まる。
聞かない。
それがいつの経験か、誰とのものか。
そんなこと、今さら詮索してどうする。
けど、気になってしまう自分がいた。
胸の奥で、じんわりと、ほんの少しだけチクリと痛む。
翔太があっけらかんとした顔で、腕の中で寝転がってる。
不安なんてない。
迷いも、他意も。
なのに、どうしてこんなに心がざわつくんだろう。
「……なにそれ」
気づかれないように、小さく呟いた。
「ん?」
翔太が見上げてくる。
その瞳に、揺らぎはない。
ただ、まっすぐ俺を見つめている。
俺は答えず、代わりにそっと唇を重ねた。
触れるだけの、やわらかいキス。
「……ん、また……?」
翔太の息が漏れる。
構わず、もう一度唇を押し当てる。
次は少し深く。舌を入れて、奥をゆっくりなぞっていく。
「……ふ、っん……んぅ……」
翔太の声が、首筋にかかる。
腕の中で反応してくれるこの温もりが、全部自分のものだと信じたくて、
ただ、何も言わずにキスを重ねた。
肌が擦れて、熱が移る。
今、この時間だけは、
“俺だけ”を感じてほしかった。
「……翔太、」
名前を呼んで、額を寄せる。
翔太は目を閉じて、微かに笑った。
「……なに、涼太」
その笑顔が、全部を溶かしていく。
——もう、いいや。
過去は聞かない。
知る必要もない。
今、こうして俺の腕の中にいるのが、
それだけで、充分だった。
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