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37 - 「過去」❤️💙

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2025年04月15日

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ぬるく熱を帯びた夜。

抱き合ったまま、何度も確かめ合ったあとの静けさの中、翔太の声がぽつりと落ちる。


「……0.01って、こんな生みたいだったっけ?」


その声に、小さくまばたきをした。

いつも通りのトーン。

ふざけたわけでも、特別な意味もなさそうな。

ただ、感じたままを漏らしただけ。

だけど。

その“生みたい”って言葉が、妙に耳に残った。

何も言わず、俺は静かに翔太の髪に指を通す。

しっとりと濡れた髪が、指に絡まる。

聞かない。

それがいつの経験か、誰とのものか。

そんなこと、今さら詮索してどうする。

けど、気になってしまう自分がいた。

胸の奥で、じんわりと、ほんの少しだけチクリと痛む。

翔太があっけらかんとした顔で、腕の中で寝転がってる。

不安なんてない。

迷いも、他意も。

なのに、どうしてこんなに心がざわつくんだろう。


「……なにそれ」


気づかれないように、小さく呟いた。


「ん?」


翔太が見上げてくる。

その瞳に、揺らぎはない。

ただ、まっすぐ俺を見つめている。

俺は答えず、代わりにそっと唇を重ねた。

触れるだけの、やわらかいキス。


「……ん、また……?」


翔太の息が漏れる。

構わず、もう一度唇を押し当てる。

次は少し深く。舌を入れて、奥をゆっくりなぞっていく。


「……ふ、っん……んぅ……」


翔太の声が、首筋にかかる。

腕の中で反応してくれるこの温もりが、全部自分のものだと信じたくて、

ただ、何も言わずにキスを重ねた。

肌が擦れて、熱が移る。

今、この時間だけは、

“俺だけ”を感じてほしかった。


「……翔太、」


名前を呼んで、額を寄せる。

翔太は目を閉じて、微かに笑った。


「……なに、涼太」


その笑顔が、全部を溶かしていく。


——もう、いいや。


過去は聞かない。

知る必要もない。

今、こうして俺の腕の中にいるのが、

それだけで、充分だった。

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