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#王子
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けれど、寝汗が彼の薄いシャツをぐっしょりと濡らしているのに気づき、私は着替えを申し出た。
「アイゼン様、汗を書いてると思いますので、着替えましょうか。新しいシャツとタオル持ってきました」
ベッドの傍らに歩み寄ると、アイゼン様は重たい瞼を持ち上げ
「悪いな……」と小さく呟きながら、自らのシャツのボタンに指をかけた。
私は反射的に、弾かれたように後ろを向いた。
シュルリ……。
静まり返った部屋に、布が肌を滑る衣擦れの音がやけに鮮烈に響く。
背後に感じる濃厚な熱気と、微かな汗の匂い。
ただの看病なはずなのに、私の鼓動は早鐘を打つように激しくなった。
「ノエル、タオルを貸してもらえるか」
その掠れた声に促され、おずおずと振り向いた私は、そのまま息を呑んで硬直した。
月明かりに照らされた、アイゼン様の露わな上半身。
普段、隙のない漆黒の軍服に包まれているその下には、これほどまでに見事な体躯が隠されていたのか。
鍛え上げられた胸板、浮き上がる腹筋の陰影。
それは、私のような華奢な女性とは根本から異なる、圧倒的な「男性」の肉体だった。
病による不調で、いつもより少しだけ筋肉の緊張が緩んでいるようにも見えたが
それがかえって、彼の人間味と生々しい色香を際立たせていた。
(……なんて、美しい人なんだろう)
恥ずかしさよりも先に、ひとりの造形物としての完成された美しさに、目を逸らすことすら忘れて見入ってしまう。
けれど、彼が腰にタオルを当てたまま
熱のせいで思うように体が動かない様子を見て、私はハッと我に返った。
「……あ、ご自分では背中の方は拭きづらいですよね? 私、お手伝いします!」
アイゼン様が腰にタオルを当てたまま固まっているのを見て、思わず声が出た。
恥ずかしいとか言う感情より先に、「できないことを助けてあげたい」という思いが湧き上がる。
「……あぁ、頼む」
小さな呻き声のような承諾を得ると、私は緊張しながらもベッドサイドに膝立ちになった。
アイゼン様の背後に回り込むと、眼前に広がるのは、岩山のように逞しく分厚い背中。
この大きな背中で、彼はひとりで帝国という巨大な重荷を背負ってきたのだ。
そう思うと、胸の奥がキュッと締め付けられた。
タオルを持つ指先が、どうしても震えてしまう。
だって、あの鋭い眼光ひとつで大陸を震わせる皇帝陛下の肌に、直接触れようとしているのだから。