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飴玉になんか裏が ありそうだね なんか最後にめっちゃ 笑ってたけど それってあの 飴玉くれた男の子では、、? ←絶対違う
私が悪いってことくらい分かってる。
でも、こんなに働いても時給890円しかくれないうちの店もどーなの??
『人手が足りない。バイトできる子いない?』って聞いてくるくらいなら、うちらの時給を上げて、辞められない努力しろよって話!!
私の名前は栄田ミナミ、22歳。
その日、私はバイト先の飲食店の売上金をそっと抜いた。
はじめてのことじゃなかった。
もう何度かしてた。5000円くらいをちょくちょく。
でも、毎回バレなかったから、今回はちょっと……調子に乗ってかなり盗んだ。
その額、10万円…。
ま、大丈夫だよね…。うちの会計ザルだし。
『新しい浄水器買いました~』って言えば、10万円くらい余計に経費が計上されててもバレないと思うんだよね。
「お姉ちゃん、お金困ってるの?」
突然の声に、私はギクッとした。
お金──まさに10万円を店からパクった帰りのことだった。
警察??いやいやまさかね。
こんな秒でバレるわけないよね…?
恐る恐る振り返ってみると、そこに立っていたのは小学5年生くらいの男の子だった。
白いロングTシャツにデニムのサロペット姿。
青い帽子を目深にかぶっていて、目はほとんど見えていない。
「お金がないの?」
男の子ははっきりとそう言った。
「お金…な、なかったらなに??私、急いでるんだけど」
「お金あげようか」
???
何言ってんの?この子。
けれど、私が考えている間もなく、男の子はポケットからぐしゃぐしゃの1万円札を出し始めた。
いち、にい、さん…じゅ、10万円…!
「感情飴玉舐めてくれたら、10万円あげる」
男の子は感情のない声でそう言う。
かんじょうあめだま…ってなに?
男の子は今度はポケットから飴玉をひとつ取り出した。
「この飴玉舐めてくれたら10万円」
うわー、めんどくさあ。
子供の遊びかよ。
「ハイハイ。どーせその10万円、子供銀行のものなんでしょ」
「触ってみていいよ。本物だよ」
男の子はくしゃくしゃの万札を私によこした。
じっと見てみる。
たしかに…透かしも入っているし、本物の諭吉だ。
え、この10万円…本物なの??
「この10万円本当にくれるの?」
「感情飴玉舐めたらね」
「舐めるからちょーだい」
男の子から感情飴玉とかいう飴玉を受け取ると、私はしげしげと飴玉を眺めてみた。
何の変哲もない…飴に見える。ちょっと怖いけど。
ぺろ…。
舐めてみた。
グレープ味みたいな味がする。
ちょっと怖かったけど、なんてことのない飴だ。
けっこうおいしい。
「ねえ、この飴玉舐めたら感想でも言やあいいの?…え??」
次の瞬間、私は目が点になった。
さっきまで目の前にいた男の子がいなくなっていたのだ。
目の前には寒々とした道路。道は見通しもよく、隠れられそうなところもない。
私はあっけにとられてあたりを見回した。
「あ…え…??」
10万円は手の中にしっかりと握りこんでいる。
感情飴玉はいつの間にか口の中で溶けてなくなっていた。
★
変なの。こういうのを狐につままれた気分っていうのかな。
ま、10万円手に入っちゃったから、全然いいんだけど。
家に帰ると、私はすぐにスマホをいじりはじめた。
ショウタ君のSNSを見るのだ。
おっ。更新されてる!更新されてる!!
ショウタ君というのは、私が最近ドはまりしている地下アイドルだ。
ミーチューブ活動もしていて、毎週金曜日にはライブ配信も行っている。
私はショウタ君に認知されたくて投げ銭を投げまくって、絶賛金欠というワケ。
そう、今日お店からパクってきた10万円も、さっき変な男の子からもらった10万円ももちろんお布施に使うつもりだったんだ。
『ママほしーーーwwwwww』
ふいのショウタ君のつぶやきに、私は目を見開いた。
ママ??
ママって…。
ママ活のことだよね??
ママ活って、おばさんが若い子にお金を払ってデートしてもらう契約…のことだ。
もしかしてショウタ君。お金を払えば会ってくれるの…?
今、手元には20万円ある。これだけあれば一回くらいデートしてもらえる…???
妄想が始まると止まらなかった。
ショウタ君とリアルデート。2人だけの空間。
ソフトクリームを食べさせあったり…そんなことができたら夢みたいだ。
『ショウタ君、ママになるにはいくら必要ですか?』
気が付くと私はそんなメッセージを送っていた。
ショウタ君からのメッセージはびっくりするほど早かった。
『2時間デートで5万円くらいもらえたら嬉しいです!』
5万円…!!
余裕でデートできるじゃん!!
『あと、裏オプありますwwww』
裏オプ…??
裏オプってなんだろう。裏オプションの略…だよね??
お金を払えばデート以上のことができるってこと…?
それって何をしてくれるんだろう…。
『裏オプってなにがあるんですか?』
『それはメッセージ画面では言えないです。でも、お金はずんでくれたら、きっと楽しいことができると思いますよー』
『えー、気になります!!そしたらデートの日を楽しみにしてます!!』
うわ、うわ、うわ!!!私、ショウタ君と直接つながれちゃったよ!!!
どーしよーーーー!!!!
リアルデート確定だ~~~~~~!!!!!!
「あはははははははは!!!!!!!!!!!」
感情が高ぶったそのときだった。
私の口から信じられないボリュームの笑い声が飛び出たのは──。