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第10話「血鬼術」
初任務を終えた帰り道。俺はまた、酷く荒れ果てた家を見つけた。
妙に胸騒ぎがして、俺は青藍色の刀に手をかけながら静かに中へと足を踏み入れる。
「なんだ……これ……」
目の前の光景に、息が止まりそうになった。部屋のあちこちで、人間が『黄金』になってガチガチに固まっている。
――血鬼術。
緋蜜さんが言っていた、鬼が使う異能の力だ。
「また美味しそうな小僧が入ってきたね。一応、僕は羅金(らきん)。無惨様の付き添い、ってやつ? まぁ上弦ではないんだけどね。君は? まぁ、聞いても殺すから良いんだけどね」
暗闇から現れたのは、ねっとりとした薄気味悪い笑みを浮かべた鬼だった。
「うるせぇ。お前に名乗る筋合いはねぇよ」
俺は不敵にニカッと笑ってみせ、一気に間合いを詰めた。
伍ノ型:とろける甘雨(とろけるかんう)
しかし、刃を振るった瞬間に違和感が走る。何だろう、妙にやりづらい。この鬼、部屋中にあるあの黄金を自由自在に操れるのか……!?
「さぁ、僕も見せちゃおうかな」
羅金が不気味に手をかざす。
血鬼術:溶金焼熱爆(ようきんしょうねつばく)
「っ……!!」
ドロドロに溶けた金が、爆発するように俺めがけて押し寄せてきた。
とっさに身を翻したものの、うごめく金がほんの少しだけ俺の体に触れてしまう。
(熱っ……!! まるで溶岩だ……これが、血鬼術……すごいな……!)
じりじりと肉を焼く激痛。けれど、俺の目は死んでいなかった。術を使った直後の今こそ、最大のチャンス。狙うは――首だ!!
肆ノ型:恋慕の溺泉(れんぼのできせん)
アクロバティックに跳躍し、甘い泉に溺れさせるように上空から羅金の首へ向けて刀を振り下ろした。
「おっと……危ない危ない」
「くそっ……!?」
間一髪で躱され、刃は鬼の手首を切り落とすに留まった。すぐさま再生していく肉体。くそ、外した!
上弦ではないと言いながら、やはりその力は上弦に匹敵するほどの化け物だ。
「さて、そろそろ帰るとするかな……そこの少年、また会ったら殺ろうね〜」
羅金はそう言い残すと、陽炎のように夜の闇へと消えていった。
だが、奴が去り際に指差したのは、俺のいる場所ではなかった。部屋の隅、ボロの大きな人形の陰――。
俺は刀をサヤに収め、そこに隠れていた男の子の元へと歩み寄った。
「大丈夫か?」
「……」
男の子はただ、カタカタと激しく体を震わせている。命は助かったものの、あまりの恐怖に声が出ないのだろう。
「っ……あ……」
小さな喉から、何かを必死に絞り出そうとしている。家族を奪われ、これからどうすればいいのか分からない……そんな絶望が伝わってきた。
(……鬼殺隊になれば、あいつを倒せるかもしれない、か)
俺は少し考えた。緋蜜さんの継子は、俺一人だけでいいと言われている。なら、紹介できるのはあの人しかいない。
「鬼殺隊になりたいんだったら、絡繰庵 ぜんまい、という者を尋ねるといい」
俺はぶっきらぼうにそう告げた。
生意気な俺にキレていたけれど、元鬼殺隊の凄い爺さんだ。きっと、この男の子を強くしてくれるはずだ。
第十話完
コメント
3件
うわっ、第10話、めちゃくちゃ熱かったですね……! 羅金の血鬼術、黄金を自在に操るって設定がまず面白いし、溶金焼熱爆の描写がまるで溶岩みたいで迫力ありました。主人公が「すごいな…!」って戦闘中に感心しちゃうところ、余裕というか好奇心がにじみ出てて好きです。ラスト、震える男の子にぜんまいを紹介するところも、ぶっきらぼうだけど優しい主人公らしくてじんと来ました。次が気になります!