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第11話「交錯する光と影」
あの羅金との戦いから、気づけば四年ほどの歳月が流れていた。
過酷な任務をこなし続ける中で、俺の年齢は十五歳になっていた。
体もさらに引き締まり、蜜ノ呼吸の精度も柱の緋蜜さんに迫るほどに上がっている。
けれど、俺の心にはずっと消えない曇りがあった。
――蜜流からの手紙が、いつからかパタリと来なくなったのだ。なぜだ。
あんなに心配性だったあいつが、手紙すら寄こさなくなるなんて。
胸の奥をざわつかせる嫌な予感を、俺は任務の忙しさで無理やり掻き消していた。
そんな俺は今、怪我の治療のために『蝶屋敷』に滞在している。
居心地は悪くないはずなのだが……ここには、最高に鬱陶しい奴らが何人かいた。
――十分前。
「ギャァァァァァァァァ!! 鬼!! 鬼が居るよぅ!! 炭治郎ーーーー!! なんで!? なんで日向を歩いてんのォォォォ!?」
屋敷の廊下で鉢合わせた瞬間、金髪の隊士が涙と鼻水を撒き散らしながら絶叫した。
……あぁ、コイツ、俺の癖っ毛を見て鬼だと思ってんのか。最悪だ。っていうか、なんで金髪にしてんだよ。イキってんのか?
「鬼か!! 俺がぶっ倒してやるぜぇ!!! 相手になれ!!」
「猪の頭」を被ったさらに鬱陶しい半裸の奴まで乱入してきて、俺めがけて突進してくる。だるすぎる。
刀を抜く気すら起きない。
そんな騒ぎの中、背負い箱を背負った額に傷のある少年が、鼻をピクピクと動かしながら俺の前に割って入った。
(……何だろう。この人、鬼ではない。……優しいような、そんな、ひどく悲しいような匂いがする。人だ……)
「こら!! 善逸! 伊之助! この人は鬼なんかじゃない!!」
少年の必死の制止で、ようやくその場は収まったのだが。
――そして、今。
「紺さーーん! 一緒に機能回復訓練どうですかー?」
懲りずに笑顔で話しかけてくる炭治郎という少年に、俺は冷たい視線を向けた。
「うるせぇ。お前らと馴れ合う気はないっつってんだろ」
次の日。
「紺さーん!!」
またその次の日。
「紺さーん、どうですかー?」
(何かあるのだろうか……。紺さんは、ずっと1人で悩んでるように見える)
炭治郎は俺をじっと見つめていた。
そのお節介なほどの優しさが、今の俺には少しだけ眩しくて、余計に心を締め付ける。
そして、その次の日。
「カァァァ! 村ノ子供達ガ次々消エテイル!! カァァァ!! 蜂須賀 紺、次ノ任務ニ向カエェェェ!! カァァァ!!」
鎹鴉のけたたましい声が屋敷に響き渡る。いよいよか。
やっとコイツらの鬱陶しさから離れられる。
そう思って身支度を整え、屋敷を出ようとした時だった。
「あの……! 紺さん……!!」
炭治郎が息を切らせて俺の前に立ち塞がった。またか。
「だから、お前らと馴れ合う気はねぇって……」
「明日、任務へ行くのでしょう? せめて……何があったのか、教えてください……!!」
真っ直ぐに俺の瞳を覗き込んでくる、炭治郎の濁りのない目。
俺が抱える孤独や、消えた蜜流への焦りを見抜いたかのようなその問いかけに、俺は言葉を失った。
――第十一話・完――
コメント
3件
第11話、拝読しました。四年後の紺くん、ぐっと大人びたのに心の内には蜜流さんへの想いがずっとくすぶっていて、切ないですね…。炭治郎が「悲しい匂いがする」と感じた一文に、思わず胸が締め付けられました。あの濁りのない瞳で真っ直ぐ問いかける炭治郎には、私もグッときます。一人で抱え込む紺くんに、誰かが「どうしたんだ」と手を伸ばしてくれる――その温かさが沁みました。続きが気になります。