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花桜月華
236
#溺愛
星キラリ

6,099
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ハイスクールの友達には、あいかわらず竜馬は恵まれず、フットボール一色の学校の人気のあるグループから、はじかれているクラスの三人の少年達の仲間に、なんとか入れてもらえてはいたが、その少年達の友情は薄情なもので
学校を卒業したらすぐにみんな違う州の大学に通う予定で、バラバラになるため、特別夢を語り合ったり、青春を謳歌しようとしたりするのではなく、ただあと少しハイスクールの残った学校生活の無駄な時間を、コイツらでつぶそうかという感じなので、特にお互いの家に集まったりせず、ただ休み時間になんとなく一緒にいるだけの仲だった
秋の日差しは、日中はとても暑いが、夜は寒いぐらいで、シカゴ産の高級マスクメロン達には最高の気候だった、街の畑ではシカゴ名物のメロンがあちこちで大きく実をつけていた
それでも竜馬は寂しくなかった、この頃には、夜になるとジャスティンが毎夜、遊びに誘いに来るからだった
そして竜馬はそれを心待ちにしていた、ジャスティンと仲良くなるのは簡単だった、なぜなら向こうが竜馬を好いていてくれるからだ
夜も9時過ぎになると、1階のカルロスは、大抵シカゴウイスキーの飲み過ぎで、へべれけになり、ソファーで泥酔しているので、そもそも夜、竜馬が部屋で何をしているかなんて、まるで関心が無い
そんなカルロスを騙すのは簡単だった、竜馬が机に座って勉強をしていると、カサコソと大きなゴキブリが机を横切って行った、日本にいた頃は、これより小さなゴキブリを見ただけで大騒ぎしたものだ、しかしここはシカゴだ、竜馬はノートをクルクルを丸めてそのカブトムシほどのデカいゴキブリをバシンッと一撃で仕留めた
自分が勉強している目の前を横切っていったのだからゴキブリが悪い、せめて部屋の片隅を謙虚にゴソゴソだけしていれば目をつぶってやったものを、竜馬はつぶれてひしゃげたゴキブリをノートですくって、窓からポイッと捨てた、きっと野良猫のおもちゃにでもなるのだろう
すると遠くの方で、青いコンバーチブルのヘッドライトがこちらへやってくるのが見えた、そのライトは二回チカチカと竜馬の部屋を照らした
「ジャスティンだ!!」
竜馬は窓越しにジャスティンの車を確認した、そして一応カルロスが、万が一部屋の様子を見に来ても大丈夫なように、シーツを丸めて、布団の中に隠し、竜馬が寝ているようにベッドをこんもりと膨らませた
二階の窓にもたれるように伸びているイボタノキの木の枝を掴んでは、まず折れないか確認しながら、木に体重を移動した、そしてサルの様に両手で太い枝にぶら下がって、狙いを定めて地面に着地する
二階に帰る手順はこれの逆だ、竜馬はジャスティンの待つオープンカーのコンバーチブルに駆け出した
「ジャスティン!」
「遅いぞ!」
竜馬はオープンカーのドアをヒラリと飛び越えて助手席にスポンッと飛び乗った
「カルロスは?」
「泥酔してる、いつものことだよ」
「なぁ、ミシガン湖のカモメを見たことはあるか?あいつら一晩中鳴いて喧嘩するんだぜ」
「見たい見たい!」
ジャスティンは人生にあらゆる楽しみを見出すような人間だった、朝方のミシガン湖は、ウィンディーシティー風の街と呼ばれるだけあり、湖はまるで巨大な海のように白波が大きく立ち、さらに渋谷交差点よりも大勢のカモメ達が密集していた
竜馬はその光景を見て感動した、どこからこんなにカモメが集まって来るのか、日本では絶対見れないだろう、そしてジャスティンの言う通り、カモメ達はかん高い声で「ティ~ン、ティ~ン」と鳴いて常にお互いをつつき合っている
無造作に放置されたセルボードがまるで一枚の絵葉書のようで、サマータイムの時期のシカゴは、朝3時過ぎでも明るかった
「ねぇ!ジャスティン、こいつら「ジャスティ~ン、ジャスティ~ン」って鳴いてるよ!」
ハハッ「良く言われるぜ、コイツらみんな俺の信者だ」
実際良く聞くとカモメは本当に「ジャスティ~ン」と最後に語尾を高く上げて鳴いていた
竜馬はカモメを追い回すのが楽しくて、砂浜を蹴り、そこら中を走り回った、そして竜馬が持参したスナックを食べていると、カモメの大群に襲撃され、今度は竜馬が逃げ回った、ジャスティンはそれを見て大笑いをしていた
「なぁ・・・お前を見ているとさ、日本って良い国なんだなと思うよ」
「そう?」
「ああ・・・お前を見ていると、危なっかしくてしょうがないよ、まるで生まれたての赤ん坊がそこらをウロウロしてる感じだ、例えばさ、道端で人が倒れていたら、お前どうする?」
「そんなの大変だよ、どうしましたか?って声かけて、救急車呼ぶよ、日本人ならみんなそうするよ」
ジャスティンは途端に笑い出した、その声に反応したカモメがジャスティン達の周りで一層「ティ~ン、テ~ィン」と鳴いた
昇る朝日が、彼のロイヤルブルーの瞳を煌めかせた・・・根元が茶色い金髪は、強い風に吹かれ、あっちこっちに旗のようにたなびいている・・・ボサボサ髪でも十分彼はハンサムだった
「いいか!誰も教えてくれなかっただろうから、俺が教える、アメリカじゃ道端で人が倒れていても絶対助けるな!ドラッグをやっているかもしれないし、ナイフを持っていて、お前を刺すかもしれない、ましてや拳銃を持っていたら、お前はもうあの世行きだ、人が倒れていたら、まず無視しろっ、いいな」
「う・・・うん、分かった」
乾いた唇を舐めて言い返す
「それにマウンテンバイクでウロウロするのもやめるんだ!アメリカの子供は何処へ行くにも、必ず親に車で送り迎えしてもらえる、なぜなら誘拐されるからだ、そして高校になると、みんな車の免許取って、車で移動するんだ、車なら拐われる確率が低くなるだろ?州によっては14歳で取れるんだぜ、費用も100ドルぐらいで取れるぜ」
「ええ?!それならすぐ取れる、僕、免許取りたい!」
竜馬は喜んで言った、100ドルなら一郎さんにもらったお金がまだある、免許を取ったら車やバイクで色んな所へ行けるし、アルバイトもしてみたかった
「どうしてここにホームスティすることになったんだ?ましてやあんなカルロスの所なんか」
ジャスティンの問いかけに、竜馬は朝日が昇る爽快で美しいミシガン湖を眺めながら言った
「別に・・・日本にいても意味がなかったからさ・・・」
―ジェニちゃん・・・―
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日本の事を思い出すと途端に彼女の顔が思い浮かぶ・・・自分でもどうしてこんな所にいるのかわからない・・・ただ・・・戻るとこが何処にも自分にはないことだけは分かっていた
ワハハッ「なんだ、お前もはみ出しものか、俺と一緒だな」
そう言ってシャスティンは竜馬の背中をバンバン叩いて笑った
あんまり彼がおかしそうに笑うから竜馬もつられて笑った
カモメはまたジャスティ~ンと鳴いた
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コメント
1件
ああ、この第141話、すごくいいなあ。竜馬が夜な夜なジャスティンに連れ出されて、ミシガン湖でカモメと遊ぶシーン、まるで自分もその場にいるみたいだったよ。カモメが「ジャスティ~ン」って鳴くって竜馬が言うところ、すごく可愛くて思わず笑っちゃった。それにジャスティンが「道端で人が倒れてても絶対助けるな」ってアメリカのルールを教えるところ、竜馬を本気で心配してるんだなあって伝わってきて、ちょっと切なくなった。二人とも「はみ出しもの」同士、だからこそ通じ合えるものがあるんだろうね。この友情、どう育っていくのかすごく気になるよ。