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『いろいろだよ。車だったり、電車だったり』
『びっくりだな。本宮君ほどのお金持ちは、リムジンか何かで送り迎えかなって』
一弥先輩が、少し笑いながら言った。
『執事とか、じいや…とか?』
朋也さんも冗談っぽく返した。
『そうそう、イメージね。お金持ちは電車に乗らないと思ってた。まあ、本当にイメージだけどね』
『お金持ちって…そんなたいしたことはない。それに、この会社は父さんが築いた物だから』
それは…
大謙遜だよ。
たいしたことあるよ、かなり。
『じゃあ、僕は反対方向だからあっちのホームに行くね。2人は一緒なんだ』
『ああ…そうみたいだな。俺は、高階駅だから』
たまたま本当に朋也さんの家も、私と同じ側のホームだったんだ…
良かった、ごまかせる…
高階駅か…
私の駅より、さらに15分程行ったところ。
高級住宅が集まる地域だ。
やっぱりすごい。
一体どんな豪邸に住んでるんだろう…
明日…
行けるなんてワクワクするよ。
私達は、一弥先輩に手を振って別れた。
電車もラッシュは超えて少し空いている。
『今日は遅くなったからスーパー閉まってますね。晩御飯どうしますか?』
『今日は…カップラーメンにしよう』
『え?カップラーメンなんて食べるんですか?』
『俺を何だと思ってるんだ?嶋津君にしても、恭香にしても』
2人でちょっと笑った。
『毎日、お抱えシェフが作る高級料理みたいな…イメージですね』
『母さんがいなかったから、お手伝いさんがいろいろ作ってくれたけど…普通の食事だ。たまに…確かにシェフを呼んだりすることもあったけどな。誕生日とかお祝いごとがあった時とか』
え…
お母さんがいない?
そうだったんだ…
知らなかった。
『お母さん…いない…んですか?』
デリカシーのない質問だった。
『子どもの頃にね、病気で』
『ごめんなさい…』
『全然いいんだ。ずいぶん昔の話だし。俺が言ってなかったから…悪かった』
私は、首を横に振った。
朋也さん、時々、ものすごく優しい声になるから…
なんだかキュンとしちゃうよ。
駅について私達はコンビニに入った。
朋也さんは、カップラーメンとおにぎりを買った。
私も、カップラーメンとサラダを。
他にもいろいろ買ったのに、朋也さんが全部お金を出してくれた。
『早く帰ろう。お腹空いた』
そう言って、朋也さんは、荷物とカバンを持ってる反対の手で私の手を握ってくれた。
手を繋ぎながら…
早足で帰った。
何だか…
嬉しい。
カップルってわけじゃないけど…ドキドキする。
昨日の嫌な記憶も、朋也さんがいてくれるから思い出さずに済んでいる。
部屋に入って着替えも済ませ、今日は先に食事をした。
それから、順番にお風呂に入って…
私が入っている間に、朋也さんは実家に電話してるようだった。
きっとバーベキューのことを頼んでくれてるんだ。