テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
【第1話 山行かせてや…】
「待って!よっちゃんw!」
「はよ捕まえてみぃw!!」
もう二度と会えないって言わんでくれ…
「よっちゃん!今日も遊ぼや!」
「ええよ!しんちゃん!俺ん家来る?お母ちゃんスイカ切ってくれんねんて!」
「えぇ!行く!!」
俺らは楽しく過ごしてくはずやってん…でもそんなん夢っやった…
「陽太!!陽太しっかりしいや!…いかんで……神様…陽太連れてかんでや… 」
「”ヒガミ様”の祟りじゃぁ…」
よっちゃんは…陽太は死んでもうた、ヒガミ様の祟りじゃろうて…神様なんかクソ喰らえだ…
「よっちゃん、俺らずっと
親友やで!! 」
約束したんに…よっちゃん…
「よっちゃん!!よっちゃん!!!」
土砂降りの山の中で親友を探すために危ないにも関わらずどんどん山奥まで歩いて行く
たった一人の”親友”のために
今月は特に暑く、扇風機では全く暑さを凌ぐことは出来なかった。家の庭で干された洗濯物が風になびき、セミが鳴いている。
「あっちー…お母ーちゃんパピコ頂戴、」
腹を出したまま畳に寝転がり扇風機の風に当たりながら母親にアイスを要求する
「自分で取りや!もうアンタ高校生やないの」
「はぁーい…」
渋々と冷凍庫を開け、アイスに手を伸ばす。真夏の冷凍庫は天国と言ってもいいほどに冷え切っていた。
「あー涼しい、俺冷蔵庫住みたいわ…」
「バカ言わんの」
今日は最高気温36℃の猛暑日、アイスだけでは自分が溶けてしまう様な暑さだ。犬の散歩すらも出来ないほどだ。道路のアスファルトが鉄板の様に熱く、近所の子供たちも外で遊んでいない。
「9年前はこんな日でもよっちゃんと遊んどったなぁ…」
「陽太くん亡くなってからもう7年やもんね、」
母親が真佑の後ろの卓袱台に切り分けられたスイカを置き、一切れ口にする。しばらくの沈黙が続き、真佑が口を開く。
「お母ちゃん…俺またあの山行ってみるわ…」
とんでもないことを言い出す息子に母親は驚く。そりゃ行方不明事件最多の山に向かうなど自殺行為も同然だ。
「真佑!アンタアホなったんか!あんな所行くもんやないで!家居りんさい!」
真佑の言葉に激怒した母親は真佑を叩き起こし真佑の頬を叩き、凄い剣幕で叱る。自分の息子が事件のあった山に行こうとするなどどこの母親でも止めるはずだ。
「よっちゃんが待っとるんや…俺、絶対行く」
真佑の勇気に圧された母は溜息を吐くと悲しそうな顔で山へ行くのを了承する。
「明日かいな……絶対生きて帰ってくるんやで、真佑」
「分かっとるよ、お母ちゃん、絶対よっちゃんと帰って来る…」
「絶対に、」
第1話 END