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「友美、これってさ……コメディのつもりで書いてるんだよな?」
「そうよ」
すぐに返ってきた返答、それでも書也は頭を掻く。
「友美、これはヒーローものを意識した作品だと思うが……敵怪人のやってる事がしょぼくないか?」
「そうね」
友美はそんな事かと言うように単調な言葉で返した。
「怪人である黒板当番魔。黒板消しでのチョークの粉を舞わせ、生徒を困らせるシーンがあっただろ? しょぼくないか?」
「軽いノリの方が分かりやすいじゃない」
「軽いノリは良いんだが……怪人はチョークの粉を舞わせただけで、確蟹ホームランのバットで打ち上げられて、花火で爆発四散させられるのか?」
「悪人だからそれぐらいやっても良いと思ったけど……滅殺はやりすぎか……じゃあ、病院送りの設定にしておくわ」
友美はそう言って、机に置いてあった手帳に何かを書き込んでいく。
「なにか子供向けのヒーローアニメみたいになってないか? 悪の規模が小さいというか……例えば怪人サッカー坊主。サッカー部員達をボールで吹き飛ばし、サッカーゴールのネットに縛り付け、サッカーの試合に参加しないようにさせるとか、怪人ウナギ焼鬼嫌とか、ぬるぬるの天然ウナギで縛り付け、ウナギを焼いて煙でいぶし、うな重を食べるのを見せつけるとか……敵怪人の目的が全く分からないんだが」
「設定を書くの忘れてたわ……怪人は人間達から負のエネルギー的なものを吸い取っているのよ」
書也は友美の後付け設定に呆れ顔になる。
「怪人は何の為に人間から負のエネルギーを吸い取っているんだよ?」
「確か……新たな怪人を作る為よ!」
声を上げて言う友美。
「それだったら世界を滅ぼす為の負のエネルギーとか、世界征服を進める為の大魔王復活の負のエネルギー集めの方がよくないか? それだったら怪人を殺しても正当性があるような気がするし」
友美は何かを思いついたように目を輝かせ、手帳に記載を続ける。
「でも、負のエネルギーを浴びて怪人化する人間とか萌えない? それが友人だったり、恋人だったり……」
友美の言葉に書也は再び呆れ顔になる。
「さっきと言ってる事が違くないか? その設定だと友人や恋人を確蟹ホームランで爆発四散させて、殺す事になるんだが、さっき設定を変えた病院送りでもまずい気がするしな。子供向けヒロインなら必殺技で浄化させて元に戻していた気がするが」
「そうよね……さすがに友人や恋人は使えないか……じゃあ、負のエネルギーを使って物品が怪人化するとか、付喪神的な何かよね」
「あと、怪人で思い出したが……怪人がやる行為にヤバいのが結構あった」
「ヤバい? 何がヤバいのよ?」
「怪人アルハラなんだが……酔拳までは別に良かったんだが、一升瓶の酒を未成年に無理矢理に飲ませるとか、コンプラ的にどうよ?」
「あれね? 別に良いじゃない。格闘ゲームの投げ技とかで、未成年に酒を飲ませる攻撃技が普通にあったわよ。それにRPGゲームのクロノなんちゃらとかで、ボタン連打で酒を飲み続けるイベントがあったわ。あれも主人公は未成年だったじゃない?」
そんな事かと、友美はすました顔で前例があると言う。
「あれは酒とは語られていないんだが……ラノベ関連だとコンプラを気にする傾向があるから、そこは注意した方が良いんじゃないか? それと、怪人アルハラが確蟹VⅤにどぶろくをぶっかけるシーンはあるが、これはエロスの影響か?」
書也の問いに対し、友美は思い出したかのように頬を染める。
「いいじゃない! ちょっとエッチな萌えシーンがあっても……それとも男子が白い酒粕に塗れる方が好みだったり?」
裸の男子生徒が酒粕に塗れになるシーンを想像して、そのシーンを振り払うように書也は思わず首を横に振る。
「いや、そうじゃない。お前らしからぬシーンが挿入されていると思ってな。その他にも怪人セクシャルキャットの同性の友人の合意を得た上での満員列車で痴漢行為だが。これは大丈夫なのか? いや、そもそも、その痴漢行為を確蟹VⅤが来るまで、誰も止めないのか? 満員電車なのにだ」
書也は人がひしめく満員列車で猫娘が肉球で女子高生の尻を触り続ける姿を想像して、書也は頬を染めて言う。
「そう! そこなのよ! わたしが書きたかったのは!」
急に声を上げる友美に書也は驚き、仰け反りかける。
「どうした急に!? どういう意味だ?」
「同性同士ならいちゃついても友達同士のふざけ合いみたいな感覚じゃない。さらに言えば、怪人セクシャルキャットは猫に近い獣人。ペットや動物って、実際に裸でいろんなところを触って大丈夫な訳でしょ?」
「怪人セクシャルキャットって……獣みたいに体毛に覆われた完全獣人型タイプの奴なのか? 猫娘みたいな奴なのを想像した。ケモナーかよ!?」
変な妄想をした書也は思わず頬を染め、声を上げる。
「け、ケモナーでも良いじゃない!? そういうところが好きな読者もいるはずでしょ!?」
友美はさらに頬を染めて言う。
「そもそも怪人セクシャルキャットで書きたかった部分って何なんだ?」
「よく聞いてくれたわね書也。怪人セクシャルキャットで書きたかったのは悪のグレーゾーンで裁けない悪を書きたかったのよ。友人が同意した痴漢で、相手は獣に近い人、いくら怪人でも確蟹VⅤに対応しにくい相手なのよ」
思わずおでこを押さえる書也。それに対して友美はなぜか目を輝かせている。
「ん? ごめん、よく分からないんだが……最終的には怪人セクシャルキャットはどうなる?」
「怪人セクシャルキャットを悪として裁けないと知った確蟹VⅤは見守る事しかできずに敗北するのよ」
「ただの迷惑客かよ!?」
「このやるせなさや悔しさを読者に伝えたいのよ!」
力説する友美に書也は呆れ顔にしかならない。
「分かった……そのへんはつっこまないでおく。最後にだが、明らかにコンプラに引っ掛かる最終話」
「ああ……あれね?」
少し青ざめた顔になる友美。どうやらコンプライアンスに引っかかる部分の自覚はあるらしい」
「怪人幹部のヘビースモーカー大佐だが。あれは何だ? 確蟹VⅤのメンバーが全員捕まり、分煙室に閉じ込められて、接着剤で金属製のボックスソファに接着され、延々と煙草の煙を吸わされるっていう……」
「だってしょうがないじゃない!? だってここまで悪のシュールな書き方をすれば、敵の拷問だってシュールにならざる得ないし、ギリギリのラインでこれは許されるんじゃない?」
「そこはシュールな悪だって自覚はあったんだな? ヘビースモーカー大佐が他人の吐いた煙を吸うより、自分で煙草を吸った方がまだ長生きできるって言って、確蟹VⅤに煙草を勧めるシーンがあっただろ? 未成年に煙草を勧めるな」
呆れ顔で言う書也に友美はもじもじと両手の指を何度も突く。
「そこはわたし的に譲れないというか……」
「煙草の煙は嫌な拷問にはなりそうだが、猛毒ではないし、何十年で死ぬかって言うレベルだろ? それに煙草の煙ぐらいなら、我慢強い奴なら耐えられるような想像をしてしまう。煙なら、名前をスモーキー大佐とかにして、確蟹VⅤを網で釣って、燻製にするとかでも良いじゃないのか?」
「少女達を燻製にするなんて、なんて事を考えるのよ書也!?」
なぜか逆に非難される書也は思わず茫然とする。
「もう、好きにしてくれ」
こうして友美の小説に対しての批評は終わりを告げた。
#変身ヒロイン