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#高校生
第42話 「背番号20」
夏の福岡大会 二回戦。
柳城高校 ― 北九州商業。
球場には朝から多くの観客が集まっていた。
春のセンバツ出場校。
昨夏の福岡王者。
柳城は、もう追う立場ではなかった。
追われる立場だった。
試合前。
ベンチで背番号20が静かにスパイクの紐を結んでいる。
小早川塁。
一年生投手。
昨日の登板が新聞で小さく紹介されていた。
「最速142キロの一年生」
本人は興味がなかった。
目の前の試合の方が大事だった。
プレイボール。
柳城先発はエース柴崎。
三年生。
去年の甲子園も経験した右腕だった。
初回から安定していた。
二回。
柳城打線が先制。
スクイズ。
盗塁。
タイムリー。
柳城らしい野球で2点を奪う。
2対0。
その後も試合を優位に進める。
五回終了。
4対1。
しかし六回。
北九州商業が反撃する。
連打。
四球。
一死満塁。
球場がざわつく。
福間監督が立ち上がる。
ベンチへ視線を送る。
「塁」
背番号20が返事をする。
「はい」
「行くぞ」
一年生がマウンドへ向かう。
スタンドがどよめく。
「また一年か」
「思い切ったな」
舞は祈るように見つめる。
史陽はショートの位置で待っていた。
兄弟で守る初めての公式戦。
塁はマウンドを均す。
深呼吸。
一死満塁。
絶体絶命。
打席には四番。
初球。
ストレート。
ファウル。
二球目。
外角低め。
空振り。
追い込んだ。
三球目。
渾身のストレート。
振った。
空振り三振。
球場が沸く。
二死。
あと一人。
次打者。
強烈な打球。
三遊間。
抜ける。
誰もが思った。
だが。
史陽が飛び込む。
捕球。
立ち上がる。
送球。
アウト。
チェンジ。
塁は拳を握る。
史陽は何事もなかったように守備位置へ戻る。
福間監督だけが小さく頷いた。
八回。
柳城追加点。
5対1。
九回。
最後の打者を三振に仕留める。
ゲームセット。
柳城高校 5―1 北九州商業。
三回戦進出。
整列後。
記者たちが集まる。
質問は決まっていた。
「一年生バッテリーならぬ、一年生投手と一年生遊撃手についてどう思いますか?」
福間監督は少し笑った。
「まだ一年生です」
それだけだった。
しかし記者たちは気付いていた。
柳城には新しい力が育っている。
そしてその中心にいるのが。
小早川塁。
小早川史陽。
兄とは違う道を歩き始めた双子だった。
第42話 終
コメント
5件
第42話読みました!背番号20の塁くん、あの満塁のピンチで一年生がマウンドに上がる緊張感、画面越しに伝わってきました。空振り三振奪った後の拳、史陽くんのファインプレー…兄弟で守る初めての公式戦って胸熱すぎます。新聞に載ったって話題になってるのに本人は「目の前の試合」だけ見てる感じもすごく好き。福間監督の「まだ一年生です」も余計な言葉なくてカッコよかったです。次も楽しみにしてますね🥀