テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
2,583
324
9話目もよろしくお願いします!
いよいよ魔女との戦いが始まります🔥
とても長いのでゆっくり読んでください🙇♀️
スタートヽ(*^ω^*)ノ
満月の光が、森を白く染めていた。
森は静まり返って 風すら息を潜めている。
その中心で—— 四つの影が、ゆっくりと姿を現した。
キヨ
レトルト
ガッチマン
うっしー
四人が構えた、その瞬間だった。
森の奥——
ざわり、と空気が歪む。
次の瞬間、黒い“モヤ”のような塊がゆっくりと現れた。
重く、濁った闇。
まるで意思を持つかのようにうねりながら近づいてくる。
🧑🦰「……っ」
キヨが目を細める。
レトルトの耳がぴくりと動いた。
ガッチマンはうっしーを抱き抱えた腕がゾクッと震える。
うっしーは鋭い目線で黒いモヤを睨んだ。
霧が晴れるようにモヤはゆっくりと形を変えていく。
その中から現れたのは——
“魔女一族”
無数の黒い影を まとった異様な存在たち。
そして、その先頭に ひとりの女が立っていた。
年老いた姿。
皺だらけの顔。
底の見えない闇を宿した目。
——赤ずきんの祖母。
すべての元凶。
ゆっくりと、口元が歪む。
「……こんばんは。今夜は月が綺麗ねぇ」
静かなその声は ぞっとするほど穏やかで、不気味だった。
キヨは無意識に一歩踏み出す。
四人全員が——
“こいつが本体だ”とすぐ理解した。
女はくすりと笑い その目がひとりずつ舐めるように動く。
🧙♀️「人間に、鳥に、魚に、獣……なんだか懐かしいわねぇ。本当に懲りないのね。弱いくせに魔女に逆らうなんて、、ほほほ」
その言葉に キヨは叫んだ。
🧑🦰「黙れ!! 今度こそ終わらせる!!」
🧙♀️「終わらせる、ですって?」
魔女は 大きく笑った。
🧙♀️「ふふ……あはははははっ!!」
森に響く歪んだ笑い声。
🧙♀️「お前ら如きに、そんなことできるわけないでしょ」
笑っているのに 目だけが底のない闇のように黒く濁り切っていた。
🧙♀️「やれるもんならやってみな!!」
その一言と同時に——
ブワッ!!
魔女の背後にいた影が一斉に弾けた。
黒い霧となって 四方八方へと飛び散っていく。
木々の間へ
空へ
川へ
一瞬で、気配が拡散する。
四人は顔を見合わせ 小さく頷く。
🧑🦰🐺🦅🐟「行くぞ!!!!」
その一言で、 全員が同時に動いた。
満月の下、四人はそれぞれの戦場へと飛び込んでいった。
◉ガッチマン視点◉
バサッ——!!
ガッチマンはうっしーを抱え一気に空へと舞い上がった。
夜風が強く頬を打つ。
そのまま一直線に川へ向かう。
ザァァァ….
水面すれすれで高度を落とし静かにうっしーを下ろす。
水が揺れ うっしーはそのまま水の中へと沈んだ。
だがすぐに顔を出す。
その瞬間——
ぎゅっ。
ガッチマンが強く抱きしめた。
🦅「うっしー、死ぬなよ。絶対に…」
珍しく真剣な声。
すると——
🐟「バーカ」
うっしーが鼻で笑う。
🐟「俺が死ぬわけねーだろ。 俺を誰だと思ってんだ」
そのまま、ぎゅっと抱き返す。
短い沈黙。
水音だけが静かに響く。
やがて——
二人はそっと腕を離した。
ガッチマンは コツンと うっしーの額に自分の額を軽く当てた。
🦅「……うっしー」
少しだけ声が柔らかくなる。
🦅「大好きだよ…..。 戦い終わったら、迎えに行くね」
一瞬の間。
そして——
🐟「おう」
うっしーはいつも通りの顔で笑った。
そのまま、そっと—— キスを交わす。
ほんの一瞬。
確かな約束の口付け。
🐟「行ってこい」
うっしーの声が夜に静かに響く。
その合図で——
バサッ!!
ガッチマンは一気に空へ飛び立った。
満月の光を背に受けて。
そのまま、高く——高く。
大空へ。
ガッチマンは満月の下、空を駆ける。
風を裂きながら一直線に飛ぶ中、背後にぞわりとした気配を感じて振り返った。
そこに広がっていたのは、箒に乗った無数の魔女だった。
(多いな…ひとりでやれるか…)
「1人で何ができるのよ」
甲高い声で 魔女が嗤う。
「あー、鳥だものね。 鳥頭ってすぐ忘れちゃうんだっけ?戦いのことも忘れちゃったかしら?」
ゲラゲラと空に魔女達の嘲笑が響く。
「……ちっ」
ガッチマンは拳を握り締めた。
その時——
バサッ!!!
背後から、強い羽音。
「誰が鳥頭だって?」
低く響く声に振り向くと、そこには同じく空を舞う影。広がる羽、揃った隊列——鳥人族。
「お前ら…」
ガッチマンの目が見開く。
「ガッチマン、お待たせ!俺らも戦うぜ?この空は俺らのもんだろ、な?」
その言葉に、ガッチマンの口角が自然と上がった。
「当たり前だろ!!行くぞ!!」
次の瞬間、無数の羽が一斉に広がる。魔女の群れと、鳥人族の群れが満月の光の中でぶつかり合う。
「鳥なんて飛べなきゃなんにもできないじゃない。その羽むしり取ってやるわ」
魔女がそう言って笑うと、満月に照らされた影が地面からうねり始めた。黒い塊が蠢き、空へと伸びてくる。
(あれは……レトさんが言ってた影の攻撃か。)
ガッチマンは一瞬で理解する。
「そうはさせない!影なんて所詮、光がなければ動けもしないじゃん。はは、鳥頭はどっちだよ。」
次の瞬間——
バサァッ!!!
ガッチマンは大きく羽を広げ、全力で羽ばたいた。
巻き起こる暴風。
空気が唸り、雲が押し流される。
みるみるうちに空が覆われ—— 満月が雲で隠れた。
光が消える。
その瞬間、伸びかけていた影がピタリと止まり形を保てず崩れ落ちていく。
「なっ……!?」
魔女の声が揺らぐ。
ガッチマンはその隙を見逃さなかった。
風を切り裂きなが一気に高度を下げ目にも止まらぬ速さで魔女めがけて急降下した。
ガッチマンは懐から銀の短剣を引き抜き、そのまま一直線に魔女へ突っ込む。
「ぎゃぁぁあぁあ!!!」
銀の短剣は魔女心臓を貫いた。
魔女は歪んだ絶叫と共に 黒い霧となって散る。
「…っ。鳥の分際で….まだまだこれからよ」
ゾッ、とする気配を背後から感じる。
しかし、ガッチマンは振り向かずそのまま翼を大きくしならせ魔女に振り上げた。
そのまま魔女は箒から振り落とされ地面に打ち付けられた。
「な、…なんで….見えてなかった…はずなのに…」
「鳥は視野が広いんだよ、覚えときな」
そして魔女は黒い霧となって消えていった。
その後もガッチマン率いる鳥人族は空中を駆け巡り魔女を倒し続けた。
バサァッ!!
巻き起こる風圧で体をひねり、真横へ急旋回。
次の瞬間——
シュッ….
ガッチマンの羽を影の刃が切り裂いた。
「チッ……」
舌打ちしながら羽を庇う。
そんなガッチマンを魔女達が執拗に追い回す。
上へ、下へ、左右へ。
空を蹴るように、軌道を変え続ける。
だが——
怪我をしているとはいえガッチマンの速さはレベルが違った。
「捕まるかよ」
ガッチマンは一気に高度を上げ 月を隠した雲の中へと姿を隠す。
暗闇の中——
「どこ——どこにいったの!」
魔女はキョロキョロと辺りを見回す。
その直後。
「ここだよ」
ガッチマンは笑いながら真上から魔女に掴みかかる。
ドンッ!!!
重力を乗せた急降下。
ガッチマンの蹴りが魔女を地面へ叩き落とす。
黒い影が夜の空気に弾け飛ぶ。
そのまま間髪入れず風が流れる様に 銀の短剣が魔女達を切り裂いていく。
一体、二体、三体。
すれ違いざまに切り裂つけ次々と魔女は黒い霧になって消えていく。
「行くぞ!!まとめてかかってこい!」
息一つ乱さず、空中で構える。
その背後で仲間の 鳥人族が戦う羽音が重なった。
空は完全に——ガッチマン率いる鳥人族の領域だった。
◉うっしー視点◉
河岸。
水面が静かに揺れる中、魔女とうっしーが睨み合っていた。
「陸にも上がってこれない魚に、勝ち目があるとでも思ってんの?」
見下した声で魔女たちが笑う。
だが——
「勝手に言っとけ、雑魚が」
うっしーは、微動だにしない。
その瞬間——
ボォッ!!!
魔女の手から、炎が噴き上がった。
「焼き魚にしてやるわ!! ははははは!!」
魔女の高笑いと同時に赤く激しく燃え上がる火が 一気に広がり川へと広がる。
ジュウウウッ!!!
水面が一瞬で沸騰して 白い蒸気が立ち上る。
「ちっ。あっちーな、クソが」
火の熱は水の中まで伝わってくる。
だが——
ザバッ!!
うっしーはそのまま水の中へと潜った。
「はっ……その程度かよ」
うっしーはニヤッと低く呟いた瞬間、
ゴォォォ……
川が唸る。
流れが変わる。
一点に集まる。
圧縮されていく水。
次の瞬間——
ドンッ!!!
巨大な水の塊が、炎に向かってぶつかった。
バシュウウウッ!!!
火と水がぶつかり爆発的な蒸気が発生する。
視界が真っ白に染まる。
「ちっ……!」
魔女が舌打ちする。
その蒸気の中、うっしーの 気配が消える。
「ど、どこ——!?」
バシャァッ!!!
背後から水が弾ける。
「遅ぇんだよ」
うっしーの声。
そのまま——
ドゴンッ!!!
水をまとった拳が魔女の横腹に叩き込まれる。
炎が散る。
体が吹き飛ぶ。
だがすぐに——
「燃え尽きろ!!」
別の魔女が叫ぶ。
ボォォォォッ!!!
川すら飲み込む様な巨大な火柱が立ち上がる。
だが—— 水が応える。
ゴォォォォ……
まるで意思を持つ様に川全体が持ち上がる。
「舐めんじゃねーぞ、クソ魔女供が」
次の瞬間——
ドンッッ!!!
巨大な水流が火柱を正面から叩き潰した。
火と水がぶつかり合い 戦場が揺れる。
ドンッッ!!!
うっしーの繰り出した水柱が魔女たちを次々と飲み込んでいく。
「なっ——!?」
バシャァァッ!!!
そのまままとめて川の中へ引きずり込まれる。
水しぶきが上がり辺りは静寂に包まれる。
だが——水の 中は違う。
ゴボッ……ゴボゴボ……
そこには 無数の魚たち。
小さなものから大きなものまで びっしりと集まっていた。
「うっしー、一緒に戦うからね!」
魚達が次々と加勢し始める。
「お前ら….来てくれたのか。焼き魚にされちまうぞ」
「大丈夫だよ!水は命の源だから絶対守ろうね!」
「ありがとな。よし!!行くぞ」
うっしーの声と同時に——
ガブッ!!!
魚達が魔女の服に噛みついて水の中へと 引きずり込む。
次々と別の魚も食らいついていく。
「やっ……やめ——!」
水中で泡が弾け 声にならない悲鳴があがる。
ズルズルと—— 底へ。 底へ。
もがき苦しむ魔女。
空気を求め手を伸ばす が、届かない。
「ここは……俺らの場所だ」
うっしーの声が、水の中で低く響く。
次の瞬間——
ギュンッ!!
さらに強い水流が発生する。
逃げ場を完全に奪われた 魔女の体が揺れる。
そして——
ボコッ……ボコっ….
その姿が崩れ始め、 黒い霧へと変わり溶けるように消えていく。
一体。
また一体。
水の中で、確実に数が減っていく。
「っ……!」
水面の上に残っていた魔女たちの表情が歪む。
「引きずり込まれるな!!」
叫ぶ声。
だが——
バシャァッ!!!
再び、水が跳ね上がる。
「お前ら全員皆殺しだ。覚悟しろよ」
うっしーがニヤリと笑って水中に潜る。
川全体が、牙を剥いた。
引きずり込まれた魔女たちが水中で必死にもがいていた。
ゴボッ……ゴボゴボ……
泡が弾け空気を求めて水面に手が伸びる。
だが——うっしーはそれより早かった。
水中を滑るように泳ぎ回る。
「遅ぇんだよ」
次の瞬間——
バシィッ!!!
尾びれが唸る。
叩きつけられた魔女の体が、水面へと吹き飛ぶ。
バシャァァン!!!
水を割って空中へ放り出され、 そのまま落ちて死ぬ….. はずだった。
ガシッ。
「っ——!?」
うっしーの尾びれを息も絶え絶えになった魔女がガシッと掴み最後の力を振り絞る。
「死…ね…!」
歪んだ声。
その目は執念で濁っている。
次の瞬間——
ボッ。
小さな火。
それが 一気に燃え上がった。
ジュウウウッ!!!
「っあ゛ぁ……!!」
水の中なのに——
炎がうっしーの尾びれを焼く。
白い蒸気が一気に広がる。
「どう……?水の中、でも……燃える…のよ……」
うっしーの動きが、一瞬止まる。
その隙を逃さず—— さらに炎が強まる。
ジュウウウウッ!!!
「くそっ…あっつ…離せ……!!」
うっしーが尾を振る。
だが魔女は渾身の力を込めて尾びれにしがみついて 離れない。
「あんたも….道連れよ……」
魔女が最後の力でしがみつく。
水の中で火と水がぶつかり合う。
「ふざけんじゃねーぞ!!!」
うっしーは尾びれを掴む魔女の手を強引に振り払った。
バシッ!!
そのまま間髪入れず——
ガッ!!
魔女の首を掴む。
「っ……!」
抵抗する間もなく——
ズドンッ!!!
一気に川底へと引きずり込む。
水圧が増す。
光が消える。
深く、深く。
魔女の体が水圧に耐えきれず軋む。
「が……っ……!」
声にならない悲鳴。
さらに川底へと 押し込み叩きつける。
ドンッ!!!
その瞬間——
ボコッ……
魔女の体が歪み、崩れ——
黒い霧となって、消えた。
静寂の中、 水だけがゆらりと揺れていた。
うっしーはゆっくりと浮上しながら、焼けた尾びれに目をやる。
「……流石に、焼かれると痛えな」
ぽつりと呟く。
だがその目は——
まだ戦いをやめていなかった。
◉レトルト視点◉
レトルトは森の中を一つの暗い影に追いかけられていた。
いや、正しくは一一追いかけさせていた。
木々の隙間を縦横無尽に走り抜け、どこかへ誘い込むように….
そして、レトルトはピタリと動きをとめた。
レトルトと影の間を冷たい空気が吹き抜けていく。
レトルトと赤ずきんが睨み合っていた場所
そこは崖の上だった。
あの時、赤ずきんに突き落とされた場所。
血の匂いがまだ残っている気がする。
「ふふ」
赤ずきんが静かに笑う。
「自分が落とされた崖にわざわざ来るなんて…… オオカミって、ほんとに頭が悪いのね」
ニコニコとした笑顔。
だがその奥には明確な殺意の色が映る。
レトルトは動じない。
ただ、じっと見据える。
(……魔女がアホでよかったわ)
あの時。
鳥人族の村からキヨと森へ戻る途中。
レトルトは、確信していた。
——恐らく俺は、赤ずきんと戦う。
自分が“殺したはず”の相手が生きていたら。
あいつは、必ず仕留めに来る。
どうすれば勝てる….
一度は殺されかけてる。どうすれば….
(あ、そういえば….)
レトルトは赤ずきんと対峙したあの夜の事を思い出した。
崖のギリギリまで追い詰めたれた時、レトルトは足元に視線を落とした。
そこには無数の 細かいヒビが走っていて
ピキ……ピキッ……
とわずかに音がしていた。
この崖はもう限界に近い。
あと少し 強い衝撃が加われば——
確実に、崩れる。
崖の淵まで赤ずきんを追い込めれば….
(倒せる!!!)
「あれだけ切り刻んだのに生きてたなんて、オオカミってしぶといのね」
コツ、コツ、と赤ずきんの靴音が崖に響く。
「今度はちゃんと殺してあげる」
空気が、張り詰める。
だが——
レトルトは、わずかに口元を上げた。
(……来いよ)
心の中で静かに呟く。
準備はできている。
この場所も この状況も——
全部想定通り。
崖の上で真正面からぶつかり合う因縁の相手。
決着をつけるには 十分すぎる舞台だった。
赤ずきんの足元から——
ぞわり、と影が蠢いた。
黒い塊が広がり、無数の線となって伸びていく。
あの時と同じ 刃のように鋭い影。
「ふふ」
赤ずきんが、ゆっくりとレトルトを指差す。
その瞬間——
ビュンッ!!!
影が 一直線にレトルトへ向かってきた。
だが——
「同じ手なんか、喰らわへんよ〜」
レトルトは軽く笑う。
スッ。
一歩ずれ 影が横を掠めていく。
ヒラリ。
舞う様に体をひねり影をかわしていく。
ビュンッ、ビュンッと迫る刃をレトルトはまるで風を読む様に 紙一重で避け続ける。
「なっ……!」
赤ずきんの表情が歪む。
「なんで当たんないのよ!!」
苛立ちが滲む声で赤ずきんが叫ぶ。
そんな様子をレトルトは余裕の笑みを浮かべて見ていた。
「今日は満月やで?」
ひらり、と影を避けながら軽く言う。
「自分らだけが強くなる日やと思ってんの?」
影がレトルトの横を掠める。
「ざんねーん」
にっこりと笑う。
「オオカミも満月、好きやねん」
黄金の目が月を反射して鋭く光る。
「魔女って、結構アホなんやね」
「……っ」
赤ずきんの眉がぴくりと動く。
「同じ攻撃しかできひんなんて、芸なさすぎやろ〜」
赤ずきんを 確実に怒らせるためにレトルトは挑発するように笑う。
ピキッ……ピキッ….
足元のヒビが少しずつ広がっていく。
(あと少し。)
「……調子乗るなよ」
赤ずきんの笑顔が消えた。
その目に、はっきりと殺意が宿る。
影が—— さらに膨れ上がる。
レトルトは口元を歪めた。
(もう少し、近くに..,.)
「お前の影はもう見切っちゃったなぁ〜」
レトルトは肩をすくめる。
「ははっ。弱すぎて話にならんわ」
ヒラリと最後の影を避けながらさらに笑う。
「びびって近くにも来れないんやろ?」
赤ずきにわざと隙を見せるようにレトルトは挑発を続けた。
「影にばっか頼ってたんじゃ、俺には敵わへんよ〜」
その言葉に——
「黙れぇぇぇぇ!!!」
赤ずきんがついにキレた。
地面を蹴り 一直線にレトルトへ飛び込んでくる。 影ではなく、自分の体で。
(かかったな)
レトルトの口元が、ゆっくりと歪む。
次の瞬間——
ドンッ!!!
二人の体がぶつかる。
衝撃。 そして——
ピキッ……ピキピキッ…..ピキッ…
足元の地面に大きくヒビが走った。
「え——?」
赤ずきんの表情が一瞬止まる。
そのまま——
バキバキバキッ!!!
崖が崩れ始めた。
「引っかかったな、赤ずきんちゃん」
レトルトは赤ずきんの腕を逃さない様に掴んだ。
「ふふ、一緒に落ちよか」
ニヤリと笑う。
足場が完全に崩れ——
ドガァァァァン!!!
掴み合いのまま 二人の体は、崖下へと落ちていく。
風が唸る。
重力に引きずられる感覚。
その先——崖の下で 月明かりに照らされていたのは 無数の鉄の杭。
針のように鋭く尖った——
“針地獄”。
「っ……!!」
赤ずきんの顔色が一気に変わる。
「やだ……っ、やめ……!」
必死にレトルトを引き剥がそうともがく。
だが、レトルトは がっちりと掴み離さない。
「離せ!!離せってば!!!」
叫び声が、夜に溶ける。
その中で レトルトは静かに笑った。
「魔女って、鉄が苦手なんやっけ?」
にっこりと。
優しくさえ見える笑顔。
だが—— その奥にあるのは、冷たい殺意。
「っ……」
赤ずきんの体が震える。
「お前……最初から、このつもりで……」
「せいかーい」
あっさりと答える。
「魔女がアホで助かったわ」
ぐっと、さらに力を込める。
逃がさない。
絶対に。
「死ねよ」
その笑顔は——
恐ろしいほど美しく、 そして残酷だった。
地面に叩きつけられる——
その直前。
レトルトはふっと力を抜いて 赤ずきんを掴んでいた手を離す。
そのまま ドンッと 崖の側面を蹴って 体をひねり、空中で姿勢を変える。
ヒラリ 無駄のない動きで 静かに地面へ降り立った。
次の瞬間。
「ぎゃあぁぁぁぁぁああああ!!!」
耳を裂くような悲鳴。
レトルトが振り返ると 赤ずきんの体が 無数の鉄の杭に貫かれていた。
「っ……たすけ、て」
赤ずきんは杭を抜こうともがき苦しんでいたが 深く突き刺さった杭はそう簡単に 抜けるわけがない。
そんな姿を冷たい目で見下ろすレトルト。
「オオカミを馬鹿にすると、痛い目みるで?」
死にかけの赤ずきんに向かってレトルトはぽつりと呟く。
「それに——」
ふっと、視線を落とす。
「お前のせいで俺は、キヨくんに捧げたかった純潔を失ったんや」
小さく息を吐いて、肩をすくめた。
「……死んでとーぜんやろ」
ふと 脳裏に蘇る一一
地獄のような“治療”。
「やめてーー!!触んないでーー!!」
「暴れるな!お前の中に残る魔女の穢れを抜かないといずれ動けなくなるぞ!!動くんじゃない!!!」
ぐりぐり、ゴリゴリと—— 容赦のない手。
羞恥。
全部まとめて押し寄せてきて——
「……っ」
レトルトはぶるっと肩を震わせた。
「……ほんま、最悪やったな……」
戦いとは別の意味で、思い出したくない記憶。
だが——
「……でもまぁ」
ゆっくりと顔を上げる。
「生きてるし、ええか」
小さく笑う。
赤ずきんはとうとう絶命し黒い霧へと変わりながら ゆっくりと消えていった。
静寂。
レトルトはしばらくその場に立ち尽くし
ふう、と小さく息を吐いた。
「……終わった」
低く呟く。
そして——
再び前を向いた。
まだ、戦いは終わっていない。
◉キヨ視点◉
キヨは森の中を走っていた。
無駄な動きは一切なく、ただ目的に向かって
まっすぐ。
迷いなく。
猟師の勘だろう。
キヨはどこへ向かえばいいか分かっていた。
そして、森の中の開けた場所で 足を止めた。
月明かりが地面を白く照らしている。
その中央に佇む人影が1人、背を向けたまま立っている。
「あら….」
女の声。
ゆっくりと—— 振り返る。
「もう見つかったのね」
月明かりに照らされた顔。
その笑顔は この世のものとは思えないほど、不気味だった。
「……っ」
本能が告げる。
“逃げろと”体が言っている。
だが——
キヨはゆっくりと息を吐き 震える足を無理やり止める。
「足が震えているね。怖いだろう?逃げてもいいのよ?」
魔女はニコニコと笑いながら言う。
「あなた、キヨマサとそっくりねぇ。 あの男はいい男だったわねぇ。魔女を絶滅させるんだっていつも躍起になってたわ」
くすくす、と笑う。
「でもねぇ——」
その目が細くなる。
「最後は私が八つ裂きにしたの」
静かに残酷に、そして嬉しそうに話す。
「キヨマサのあの強い目……忘れられないわぁ」
うっとりとした表情。
「ほんと、あんたら一族は懲りないのね」
ニヤリと笑い恐ろしいほど憎悪の含んだ目で魔女は笑う。
「……お前が」
低い声。
「俺の家族を殺したんだな」
震えているのは恐怖だけではない。
怒りと憎しみがキヨの体を震わせていた。
「そうよ」
魔女はあっさりと答えた。
まるで どうでもいいことのように。
その瞬間——
空気が、変わった。
キヨの中で 何かが静かに切り替わった。
魔女を見据えるその目は—— 獲物を狙う猟師の目。
「お前を、狩る。」
キヨは一言吐き捨てた。
そして——
ふっと、姿が消えた。
「——え?」
魔女の視界から完全にキヨは消えた。
父親から教わった、狩りの極意。
——気配を消せ。
——息を殺せ。
——獲物に気づかれる前に、間合いに入れ。
キヨは幼い時からそれを体に叩き込まれてきた。
森の中で生きるために。
そして—— 仕留めるために。
森に溶け込むようにキヨの 気配が完全に消える。
「ふふ、隠れたのかしら?」
魔女が笑う。
「無駄よ」
周囲を見渡す。
「私は全部見えてる——」
パンッ…!!!
空気を切る音。
「っ——!」
魔女の頬をキヨが放った猟銃がかすめる。
「全然見えてねぇじゃん」
どこからともなく、キヨの声。
「……っ」
魔女の目が細くなる。
「その銃……まさか……」
魔女の表情がわずかに崩れる。
魔女が見せた初めての動揺だった。
キヨはもう一度静かに銃を構えた。
「俺の家に代々引き継がれてきた猟銃だよ」
視線は外さず低く、淡々と告げる。
「父さんがさ—— “いつか使う時が来るから、ちゃんと手入れしとけ”って言ってたんだよな」
指が引き金にかかる。
「……今なら、その意味がわかるわ。
次は仕留める….これで終わりだ。」
そして、キヨが引き金に力を込めた——
続く
コメント
4件

ついに始まった!!!わ〜もう好きです🫶🏻︎💕︎💕︎ それぞれ全員カッコよすぎて、、、🥰🥰🥰今回もありがとうございます!

ガッチさんかっこよすぎん??うっしー??大丈夫??レトさん??○し方が解釈一致過ぎてなんかもうビックリよ??キヨ?死ぬなよォ!?!?