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額の尖角に紫の魔力を集めて色めき立ったギレスラを掌で制したレイブは言葉を続ける。
「あいにく俺たちは正気だが、こんな穴ぐらで小人の世話をしているほど暇じゃないんだよ、大切で急ぎの用事があるんだ…… 通り抜けさせてくれないのなら今来た道を戻るさ、まさかお前達ラタトスクが俺たちを止めたり労働を強制できる、そう思っている訳じゃないだろう?」
パイロは人懐っこい様子で首を左右に振りながら答えたが、可愛らしく見える表情は同時に無機質で残忍な物にも見えた。
『哀れですね、アナタ方と出会った辺りではニンゲンが正常ではいられない密度の魔力に満たされていたのですよ…… どうやらレイブさんは小人になるしかないようです…… まあお世話はしっかりして貰えるので幸せかもしれません、うん…… それから、無論私達では皆さんを止める事など出来ません、が、そちらも心配要りませんよ』
ザザザザッ
「むっ!」
突然周囲に現れた幾つもの気配を感じて警戒心を強めるレイブ、ギレスラ、ペトラ。
ラタトスクのパイロは声のトーンを変える事無く説明を続ける。
『まだペトラさんの質問に答えていませんでしたね、彼らがこの回廊を拵えて小人たちの世話をし、今から皆さんを捕まえてレイブさんの審査をしてくれる方々です』
周辺に現れた気配は実体を露にする。
レイブと同様に鍛えられた肉体は様々な色を帯び、金属質な体躯と額にそれぞれ数本の角を生やした男女の姿には見覚えがあった。
「これは鋼体術? 魔術師か」
パイロが叫ぶと同時に十数人の男女はレイブ達、スリーマンセルに踊りかかる。
『彼等こそは小人の守護者にして統治者っ! ゴブリンに親切な者、ホブゴブリンですっ!』
太陽は依然真上から照り付けていた。
つまり戦いが始まってからほぼ時間経過が無かった事を表している。
数十匹のラタトスクは岩壁の前に一塊になってガタガタ震え続けていた。
彼等の前、レイブたちとの間には五体投地、所謂土下寝状態で許しを請う十人の男女の姿が見える。
彼等の左右には意識を刈り取られて泡を吹く五人の仲間が無造作に転がっていた。
戦いが始まると同時にレイブは叫んだのだ。
殺すな、手加減しろ、と……
ペトラとギレスラは言い付け通り軽く痛めつける事が出来たのだ、だがしかし、バッタに手加減は難しかったらしい……
何しろ中身は『百頭の魔』テューポーンでバッタデビュー以降の初戦である、止むを得ない事だったかもしれない。
瀕死とは言え殺していない事を鑑みれば、寧ろ良くやった! そう評しても良いだろう。
#ダンジョン