あの日約束したこと。

これは、小学校6年生の時の話だ。美樹と楓人は幼稚園の時からの幼馴染。なのに楓人は、美樹との約束を─

先生）はいみんな、座って。大事なお知らせがあります。

美樹）どうしたんやろ

先生）楓人くん、ここへどうぞ。

美樹）（…え？楓人、なんかしたんか？）

先生）楓人くんが、転校することになりました

美樹）え…？

楓人）…….

─休み時間─

児童A）おい楓人！転校ってまじかよ！

児童B）もう一緒に遊べへんの？

児童C）嫌だよ、寂しいよぉ….

児童D）ねぇ、最後だし、俺たちと遊ぼうよ！

楓人）悪い、行くところがある

そう言って、楓人は美樹の所に走っていった。

美樹）….どういうことや

楓人）悪い、黙ってて

美樹）違うんや、それを怒ってるんやない

楓人）….え

美樹）楓人、忘れたんか？

楓人）何を、だ？

美樹）…忘れたんや

楓人）いやだからなにを…

美樹）幼稚園の時に約束したこと、忘れたんやな….

楓人）…！

みき）ふうとくん！わたしとふうとくんがともだちになったときのやくそく、おぼえてる？

ふうと）うん！おおきくなってもいっしょに、だよね！

みき）うん！おぼえててくれてうれしいな！

ふうと）ずっといっしょにいようね！

みき）えへへ、うん！

楓人）….忘れてるわけねぇだろ

美樹） …嘘やろ

楓人）本当だっつの

美樹）じゃあ、なんで…

楓人）兄がここから遠い高校に入ることに決まったから、受験まではまだ早いけど、もう引っ越すことにしたんだ。俺だって、美樹と離れたくないから近くの学校にしてくれって頼んだ。でも、兄は俺を嫌ってるし、俺の話を聞いてくれなかった

美樹）….

楓人）美樹、兄ふたりと俺と3人で住んでるのはわかってるだろ、だから、分かってくれ….

美樹）っ！お前なんてだいっきらいや！

楓人）お、おい！

走っていってしまった。しかし、途中で立ち止まって

美樹）早く、行けばええやん…

と、途端に泣き崩れる美樹。美樹の所へ行こうとする。

楓人）おい、待て話を….

美樹）もうええんや。今まで、ありがとうな

そう言って、また走っていってしまった。しかし、楓人は

楓人）今月しかこの学校にはいれないが、まだお前とたくさん思い出作りたいから…その…

美樹は一瞬こちらを向いた。その時、なにか喋っていたように見えたが、遠くて何を言っているか分からなかった。

美樹）…ばか

その次の日から、美樹は学校に来なくなってしまった。

そうして、一ヶ月が過ぎ、楓人がこの小学校にいる最後の日も、来なかった。しかし─

先生）楓人くん、ごめんなさいね。ちょっと職員室に来てもらっていいかしら

楓人）…はい？

そう言われ、先生について行った

先生）美樹さんから、これを預かっています。昨日の放課後、美樹さんが楓人に渡してほしいと先生のところに来たんですよ。

そう先生に言われ渡されたのは、美樹からの手紙だった。

楓人、この間は言い過ぎた。本当にごめんなさい。楓人のいない生活なんて耐えられそうになかったんや。どうか許して欲しい。時間があればでええ、○時に○○岸壁に来て欲しい。元気でな。

美樹

まさか …と最悪の事態を考えた。

楓人）先生、今何時ですか

先生）今、○時です。急に、どうしたんですか？

楓人）すいません、引越しの手伝いしないといけなかったんです。じゃあ、行きますね。先生、今までありがとうございました

先生）そうでしたか。貴方のことは忘れません。頑張ってね。

楓人）はい

咄嗟についた嘘だったが、美樹が自○するのではないかと考え、急いで玄関を出て○○岸壁に行った。美樹は、そこに居た。

美樹）…来てくれたんや

楓人）お前 …

美樹）ありがとう、きてくれて。でも、私のことはもう忘れて。

楓人）お前っ…！死ぬつもりじゃねぇだろうな

美樹）…なんで、分かったの

やっぱり死ぬつもりだった。

楓人）…俺の勘だ

美樹）あはは、何それ笑

そう言って笑う美樹。

楓人）笑い事じゃねぇ、死ぬな

美樹）…私の人生や、あんたに関係ないやろ

楓人）俺だって美樹のいない生活、考えれねぇよ….

美樹）…！

楓人）今会えなくなってもまたいつか会えるって信じたらいい。そうだろ

美樹）….簡単に言わんといてや

美樹は泣いている。

楓人）お前が教えてくれたんじゃねぇか！！

美樹）….え？

楓人）お前、幼稚園の時約束したこと、それだけだと思ってるだろ？まだあるだろ

そう、約束したあと、まだ続きがあった。

ふうと） もしはなればなれになっても、またあえばいいよね！

みき）うん、そうだね！

つい、楓人も釣られて泣き出してしまった

美樹）そういえば、そうやったなぁ….

楓人）….おう

美樹）….楓人

楓人）….美樹

抱き合うふたり。そうして、楓人はこう言った。

楓人）また4年後ここで会おう。○月✕日に。今日と同じ日付だ。約束、できるか？

美樹）うん、覚えておく。忘れないでね。

楓人）美樹こそ、忘れるんじゃねぇよ

美樹）…へへ

楓人）…うん

そう言って、涙を流しながら笑いあった。

そして、お別れだ。

2人は背中を向けながらこういった

「じゃあね。また、4年後この場所で─」

〜END〜