テラーノベル
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【零】花火よりも美しい貴方
赤)あ゙〜⋯もう無理、この時期の“ここ”ほんっとに嫌い⋯⋯。
青)はぁ?何言うとんの、“うち”が繁盛してるのはええことやんか。
赤)それはそうだけど⋯神社が汚されてる感じがして、何だか気分悪いの
青)⋯まあ、ド田舎村の住人にとって夏祭りは数少ない娯楽やし。舞い上がって周り見えんくなるのもしゃーないやろ
青)りうらは友だち呼ばんかったん?“神主の息子”にも夏祭りを楽しむ権利はあるはずやで。ま、俺は後継ぎやからそんなん許されるはずもないけどな
赤)⋯⋯呼んだよ、ほんの数人だけど
青)もっと大勢で楽しめばええんに⋯
赤)⋯神様の手前で失礼な態度とらないような子を、俺が厳選して招待した。まあ、招待してなくても来る奴は来るだろうけど⋯それに、まろにも申し訳ないし
青)ああ、俺か⋯別に俺のことは気にせんくてええんよ?これでも神主の座を継げることに誇りを持っとるから。
赤)⋯⋯嘘つき、
青)はは、バレたか。ま、弟は黙って素直に兄貴の嘘に感謝しとけや笑
そこそこ規模のでかいこの神社の神主の次男として生まれた俺──りうら──は、とにかく夏祭りが大嫌い。その理由は、言うまでもなく『この場所を汚染されている気がしてしまうから』である。
一方で、俺の兄──まろこといふ──は夏祭りを悪くは思っていないそうだ。ただ、長男の彼が父の後を継ぐことはほぼ確定しているわけだが、彼自身はそれに関しては良く思っていないらしい。
水)あ、いたいた!りうちゃーん!
水)あれ?りうちゃんの隣にいるあの人、なんか見覚えあるなぁ⋯?
黒)あいつ、ほとけが中1の時の中3生やからな。小学校でも世話とかしてもらった時あったやろ、多分。
水)嘘!?だから見覚えあったのか⋯
赤)まろ、あにきと知り合いなの?
青)おん。部活同じ時期もあったで
前述の通りこの地域はド田舎すぎて、小中が合併している。そのため、生徒同士は基本的に面識がある。9 学年分が1つの施設にぎゅっと集まっているわけだが、全校生徒はなんと⋯⋯34人。少子化を感じずにはいられない、しょぼい人数だ。
青)⋯俺はここにおらなあかんから、皆で楽しんできてな。こっから見とるよ
赤)⋯⋯うん、ごめんね
水)では行きましょー!
黒)おん、行こか
・・・・・・
水)あー楽しかったぁ〜っ!
黒)屋台巡りはここらで終わりにしよか
青)この後は俺の舞と花火が───
父)⋯おいいふ、出番だぞ。
青)あ⋯そんじゃ、俺はこれで。
水)頑張ってね、いふくん!
真夏の暑さに耐えながら何重にも着飾り、神の面を被って舞う兄。実はうちの神社は、大昔に描かれた鬼退治のお話の聖地として名が知れている。
そのため後継者が神の面を被って、鬼の面を被る現神主を滅ぼし、後継ぎと鬼退治の様を表すという遊び心満載な舞になっており、今では数百年の歴史を誇る地域の伝統行事と化したわけだ。
水)いふくん先輩凄かった!!✧*。
黒)ほんま感動したわ〜⋯あれどんくらい練習したん?
青)ざっと2ヶ月くらいかな⋯
赤)っ⋯⋯⋯、
?)大神先輩って、あんな一面もあるんですね♡私びっくりしちゃったあ♡
?)ちょっと〜モブ子デレデレすぎ笑
向こうでは役目を終えた兄に人が群がっている。そんな中俺は、兄への申し訳なさから兄に顔向けできずにいた。
赤)⋯俺がまろだったら⋯きっと途中で挫折して終わりだったんだろうな。
現に俺は、まろがこの2ヶ月間どれだけ苦労したか痛いほどよく理解している。汗と涙でぐちゃぐちゃになったまろの顔を見る度、俺の心はきゅっと締めつけられた。それでもひたむきに努力し続けた彼を、俺は心から尊敬している。
『間もなく花火の打ち上げが始まります。まずは有料席の方の誘導を───』
赤)あ⋯花火もうそろそろか、
誰よりもここに詳しい俺だからこそ知っている、花火の特等席。海と山の欲張りセットが揃った境内には、“泪鬼の崖”という名の崖があり、そこに腰掛けて時を待つ。
崖⋯⋯つまり俺の目の前に広がるのは、陽の光を忘れた漆黒の海。桜の木も、背丈の高い草も──無論ビル群も──障害物など何一つないのだ。ビル群の灯りを煩わしく思う、そんな人生にほんの少し憧れていた時期もあったな。こんなド田舎絶対に出てってやる、都内の高校に進学してやる、と⋯⋯当時の俺は、神様に恨まれないわけがないことばかり考えていた。
中3の夏、俺にとっては最終進路決定日が刻々と迫っている時期だが、こうして呑気に花火を待っているのは、言うまでもなく都会への憧れが失せたからである。3年生になってからようやくここの魅力に気がつけたのだ。
『───それでは皆様、私と共にカウントダウンをお願いします!』
『3!2!1───』
赤)⋯0!
その刹那、ふわっ⋯と夜風がなびいた。陸から海へと、つまり俺の背後から花火の方へとやさしい風が吹き抜けた。境内に咲く花の甘い匂いを、微かに感じる。
ひゅ〜〜⋯ドンッ!!✺⋆*
絶えず鳴り響く祭囃子と花火の音が重なって、轟音が耳を突き抜ける。その衝撃に気を取られ、すっかり花火を見るのを忘れていたことに気がつき、慌てて目線を上に向けた瞬間───。
赤)⋯⋯っえ、
桃)ぁ⋯えっと⋯俺のこと見えてる感じ?これそういうやつだよね?
赤)⋯それコスプレ?変態?不法侵入⋯って言っても祭りだから訴訟できないか⋯とにかく俺の邪魔しないで。俺は今、花火を楽しもうとしてるの。
桃)⋯早口なんだね、現代の人間は。
桃)俺はないこ!この神社に封印された俺の兄上を救う方法を探してる“鬼”だよ
赤)⋯⋯思い込みコスプレイヤー、?
桃)こ、こす⋯こすぷれいやあ⋯?が何なのかは俺にはさっぱりわからないけど、悪口なのは何となくわかるよ⋯
桃)じゃあ、俺が本当の鬼だって証明してあげる!着いてきて、“りうら”!
赤)え、ちょ⋯待って!俺あんたに名乗った記憶ないのに⋯⋯って足速ッ!?
桃)ほら、早く早くー!!
赤)ったく⋯今日下駄だから走りにくいんだよ!ちょっとスピード落として!
桃)あ、それ俺とお揃いの履き物だよ!げた⋯?っていう名前なんだね!
赤)嘘でしょ、下駄も知らないの⋯?てか下駄でその速さなの!?
桃)ま、これでも鬼ですからねー♪
赤)⋯⋯⋯⋯⋯。
段々と信憑性が増してきた気がする。面白いじゃん、気が変わった。鬼の証明とやらに付き合ってやろうじゃないか。
⋯⋯俺は花火の存在もすっかり忘れて、自称“鬼”の男の後を追った。
・・・・・・
赤)わあ⋯!本物の超能力初めて見た!
桃)あ、超能力じゃなくて鬼の力ね笑
赤)⋯うん、信じるよ。あんたが鬼だってこと。あ、名前教えてよ。もう“あんた”なんて呼びたくないし⋯
桃)俺?俺は⋯⋯ないこ、だよ。
赤)ないこ⋯?
“愛しているよ『那瑋子』。最期にお前を守れて、よかった⋯⋯”
“そんな、兄上⋯!嫌だ、兄上っ!!”
赤)っ、?
今のは⋯⋯記憶?何だか胸が痛む。俺のことを兄上と呼んだのは⋯⋯誰だ?
桃)⋯⋯?りうら、どうしたの?
赤)いや⋯何でもない。ちょっと、ね
桃)⋯ふーん、そっか
?)⋯⋯⋯長、少しお話を⋯。
赤)わっ!?び、びっくりした⋯いきなり出てこないでよ⋯って、長?
桃)あ〜⋯俺、実は鬼族の長なんだよね
赤)え、こんな奴がボスなんだ⋯
桃)いやそれかなり酷くない?
?)ん゙んっ⋯長、よろしいですか?
桃)あ、うん。ごめんね、“初兎”。
白)ちょっと⋯!人間の前で僕の名を呼ばないでくださいよ、
桃)えぇ〜?別にいいじゃん!笑
赤)⋯苦労してるんだね、初兎さん
白)そうそう、この間なんて⋯っは!?に、人間の分際で我に話しかけるな!
桃)人のこと毛嫌いしすぎだよ初兎〜。それで、話って何なの?
白)ああ⋯はい。ではあちらへ
桃)うん。じゃ、またね!りうら!
赤)⋯う、うん⋯またね⋯⋯、?
また会えるんだ、嬉しいな⋯⋯ほんの数分お喋りしただけなのに、そんな風に思わされるないこさんの社交性に驚く。
『本日の花火の打ち上げはこれにて終了です。足元にお気をつけて───』
赤)っあ⋯くそ、花火見てないっ⋯!
悔しいけど、不思議と不快ではなかった。それはきっと、打ち上げ花火よりも美しい貴方に出会えたから─────。
【一】花火にかき消された声
【二】恋模様隠した、夜の蝶
全二話(予告編を含めると全三話)での完結を予定しております。
第一話は、赤さん中心の『月下美人』
Vocaduo2025の方です。
第二話は、桃さん中心の『月下美人』
1thシングル・Seventhの方です。
どちらもSpotify、YouTubeで聴くことが可能です。是非この二曲を楽しんでから、こちらを読んでくださゐ。
《登場人物》
◎大神りうら(14)
青の弟。望んでいないのに神主の後継ぎが確定している青に申し訳なさを感じている。大神神社が大好き。鬼や神様のことを少し前までは信じていなかった。
◎ないこ(推定500~)
鬼族の長。大神神社の伝説『鬼退治』で犠牲になった兄を救い出すために足を運んだところ、赤に出会ったらしい。長の一族は勉学よりも戦闘力を優先して育まれるため、漢字を知らない。近頃それが不便になり、己の名を平仮名に変えた。
◎初兎(推定450~)
桃の右腕。桃を心から尊敬している。桃の過去を知っている数少ない存在。
◎獅子尾悠佑(17)
青と同じ部活に所属していた。赤、水、青のことを弟のように思っている。
◎稲荷ほとけ(14)
赤と同い年。大神神社の伝説を巫女様から聞くのが好きで、幼い頃からずっと聞いてきたため、今では暗唱できる。
◎大神いふ(16)
神主の後を継ぐことが確定した。まともに青春らしい経験を味わったことがない。赤を大切に思っている。
物語の都合上、一部🍜様のお名前に当て字をしています。センスがないのは重々理解しております⋯お許しください。
❤️⇢璃羽蘭 🩷️⇢那瑋子
🩵⇢瑋懜 💙⇢威風
🤍⇢初兎 🖤⇢優助
月下美人という曲名が被っていることに運命を感じ、いちごといえばお決まりの赤桃の衝動書きに至りました✌️
来週は月から金まで毎日10時間塾にこもりきりのため、夏休み中に完結できるかは微妙ですが、細部までこだわっているのでぜひ更新されたら読んでいただけると嬉しいです !
ばいばい👋
コメント
2件
え待って今回の話も全員の関係性最高すぎてさすがに愛🥹✨️ 文章力も話の構成力も全てが神がかってて尊敬😉💕 次の展開が楽しみすぎて夜しか眠れない🙄(( 勉強頑張ってるいちごちゃんも素敵です|•'-'•)و✧頑張れ💪❤️🔥
いちごさん、こんにちは!「花火よりも美しい貴方」の予告編、読ませていただきました🌷 祭りの喧騒と、それに溶け込めないりうらの孤独感が冒頭からすごく伝わってきました。弟でありながら兄への複雑な想いを抱える繊細な心情描写がとても丁寧で、特に「汗と涙でぐちゃぐちゃになったまろの顔」という一文に、彼の見ている世界の解像度の高さを感じます。 そこに突然現れるないこ。下駄で走る速さや「現代の人間は早口」という台詞に、彼が本当に“異世界の存在”なんだなとじわじわ実感させられて…最後の“花火よりも美しい貴方”という一文に全てが集約されるような、素敵な出会いの予感がしました。 続きがとても気になります!
#べりーぐっど読んでみて
いちご@受験生
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朱。🛑🫧@週1投稿
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鮨衣羅菜湖🥐@週2投稿する
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希途愛
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