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⚠️ATTENTION⚠️
年齢→中学生
pnさん→記憶喪失
名前→伏せ字なし
上記のことが良い方は、ぜひご覧になってください!
『はあっ、はぁっ…!』
ぴちゃっと水の跳ねる音がいくつも聞こえる。ざっと数えれば、自分含めて10名ほどの。
必死に走った。
泥まみれでも、息ができなくても、足が痛くても、寒くても、冷たくても。
『あっ…?!』
ドシャッと地面に頭を勢いよくぶつけ、体に擦り傷を作りながら地面を転がる。
『舐めた真似すんなや…』
1人の気の強い男がそう言った瞬間、暴力の嵐だった。
バットでの打撃、殴り、蹴り…。痛いと叫んでも、やめてと叫んでも、止まることのない雨と変わらなかった。
抗う気力も無くなったところで、そいつらはいつの間にか消えていった。
『…………いた、い。』
ポツリと呟いたその言葉は、地面に打ち付けられる雨の音で掻き消された。
…………………………
目を開ければ、目の前には白い天井に、俺を見つめる紫髪の人が視界に映った。独特な臭いを放つここは病院だとすぐに理解できた。
けれど、理解できないのはたくさんあった。
自分が誰で、なぜここにいるのか、なぜ怪我だらけなのか、何をしていたのか…何もかもが、わからなかった。
「ぺ、ぺいんとさん!起きたんですね…!よかった…。あっ、ナースコール押しますから!」
ぺいんと、とは自分の名前なのだろうか。
親しい友達なのか、家族なのか。いや、敬語だし後輩の可能性もある。というか、そもそも自分は何歳なのかわからない。
「…………。」
状況も、状態も理解ができないからか、空いた口が塞がらない。
「?…もしかして、どこか、痛みますか?」
心配そうな顔をして俺の顔を覗き込む中学生ほどの女性。だから、咄嗟に言葉に出してしまった。
「誰、ですか?」
と。
「…へっ?」
相手は困惑したような、驚きのような、心配のような、信じられないような、絶望したような…そんないろいろな感情を含んだ顔をしていた。
「…ぺいんとさん、僕のこと分かりますか?」
「………ごめんなさい、分かりません。」
覚えてない、といえば相手が絶望することくらい想像がついた。けれど、何もわからないのに嘘をついて仕舞えばそれこそ相手を傷つけることになる。そう思えば、正直なことを言った方がいいと判断した。
だが、相手は深刻そうな顔をしただけで、絶望なんて顔は一切なかった。
それになぜか、なぜかわからないけれど…
(こいつは、強いなぁ…)
と思ってしまった。
ふと、ノック音がなる。
「失礼します。」
女性の看護師が入室してき、俺の体を隅々まで見たあと、紫髪の女性と会話を交わしていた。
それに聞き耳を立てる。
「記憶喪失っぽくて…」
「なるほど。一旦検査して、もし記憶喪失ならば記憶を取り戻すことに専念したら思い出しますよ。」
「なるほど…ありがとうございます。じゃあ検査、お願いします。」
その2人の会話で、察する。
自分はいつの日か、住んでいるどこかで記憶喪失になってしまったのだと。理解してしまえば、あとは簡単だった。
自分はこれから検査を受けて、あの紫髪の人が色々記憶を取り戻す手伝いをしてくれるのだろうと。
「ぺいんと様。これから検査をいたしますので、立ち上がることはできますか?」
「あ、はい________っつ…!」
体を起き上がらせようとすれば、頭や体の所々がズキッと痛む。自分の体をぐるっと見てみれば、どうやら怪我をしているようで頭には包帯が巻いてあるようだった。
「大丈夫ですか?立ち上がれなければ、ここで診察もできますよ。」
「……じゃ、あ…それで。」
「かしこまりました。それでは一旦失礼いたしますね。」
そう言って礼をし、部屋から出ていく。
すると、あの紫髪の女性が近づいて、声をかけてくる。
「僕、しにがみです!あなたはぺいんとさんで、僕の友達であり先輩ですよ!」
「………そう、なんだ。友達…なんだね?」
そう聞き返すと、哀しそうな顔をしながらも笑顔で「はい!」と元気よく返事をした。あまりの声の大きさにびっくりするが、個室だから遠慮なく返事をしているのだと聞いてとれる。
「俺…名前がぺいんとっていうのはわかったけど、年齢とか、わかんなくて…」
そういうと、一瞬だけ笑顔を崩したように見えたが、次の瞬間には笑顔になりゆっくりと、大きな声で俺のことを伝えてくれた。
「ぺいんとさんは中学2年生で、血液型はO型!至って普通の生徒ですね。で、いつもうるさくて、元気が良くて、煽りが好きで、バカなことしてて______」
「えっ、そ、そんなはっちゃけてるの…?!」
そう問いかけると、彼女はなぜか嬉しそうに「はい!とっても!」と答えた。でも何故か、本当に俺と仲が良いからこそそう答えられるんだなと思った。
「そっか…あっ、じゃあ君は?君のこと…知りたいな。」
そう言うと、落ち着いた声で話し始めた。
「僕はしにがみで、ぺいんとさんの一個歳下です!僕もいつもうるさいですねー!」
「え…ぼ、僕って…君、女の子なのに僕っ子なんだね?」
そう言うと、彼女は「そ、そっか!」と目を見開いて思い出したような顔をした。
「僕、男の子です!」
衝撃の事実を口に出され、つい無意識に俺が思っている10倍ほどの大きい声で 「えっ?!」と声に出してしまった。
無意識にこの大きさの声が出たのだから、本当に自分は声が大きい人だったんだろうなとわかる。
「な、なんかごめんね…!てっきり女の子だと思ってた…。」
「ははは!まぁ仕方ないですよ!」
彼はこうして笑っているけれど、友達の記憶がないとなると、自分であればとても悲しい。彼が笑って誤魔化しているかもしれないと思うと、少し申し訳なくなる。
すると、またノック音が響く。
「どうも。診察始めてもよろしいですかね?」
男の人と、先ほどの看護師が入ってきたと同時に、しにがみ…さんは立ち上がった。
「あっ、じゃあ、ぺいんとさんをよろしくお願いします。外で待っときますんで!」
「すみません…ではまたお声がけいたします。」
そうして俺は、診察を始めた_____。