テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
1件
うわあ……最後の一文、すごく重くて切なかったです。笑顔で「大丈夫」を連発するひなたと、それを信じてしまうなつきの距離感がリアルで。小学生の頃の私は「ひなたタイプ」だったので、クスッと笑える日常パートから少しずつ「大丈夫」の意味が変わる感じがじわじわきました。続き、気になりますね。
## あの子なら大丈夫
ひなたは、昔からよく笑う子だった。
大きな声で笑って、くだらないことでも本気で楽しんで、周りまでつられて笑わせる。
「あいつ、ほんと元気だよな」
そう言われるのが、ひなたは嫌いじゃなかった。
でも、最初の頃はただそれだけだった。
元気でいたかったから元気だった。
楽しいから笑っていた。
誰かが困っていたら助けたかったから助けていた。
そこに理由なんてなかった。
ひなたは、そういう子だった。
「なつきー!」
「……なんだよ、急に」
「見て!」
「嫌な予感しかしない」
「これ!」
ひなたが差し出したのは、どこで見つけたのか分からない変な形の石だった。
なつきは少し黙ってそれを見る。
「……で?」
「いや、感想」
「石じゃん」
「もっとあるだろ!」
「石だなって思った」
「冷たい!」
そう言いながら、ひなたは笑う。
なつきも呆れた顔をしながら、結局少し笑ってしまう。
二人は、いとこだった。
でも、周りから見れば姉妹みたいだった。
年齢は離れている。
なつきは16歳。
ひなたは10歳。
普通なら、なつきが面倒を見る側になる。
だけど、二人でいる時だけは少し違った。
「なつき、また宿題忘れたの?」
「……なんで知ってんの」
「顔に書いてある」
「嘘つけ」
「なつきは分かりやすいんだよ」
「お前10歳だよな?」
「精神年齢は大人だから」
「自分で言うな」
そんなくだらない会話をして、二人で笑う。
ひなたは、なつきのことをよく見ていた。
なつきが無理して笑う時。
本当は落ち込んでいる時。
言葉にしなくても、なんとなく分かった。
「なつき、今日なんかあった?」
「別に」
「嘘」
「……なんで分かるんだよ」
「分かるから」
ひなたは笑って言った。
「だって、なつきのこと知ってるもん」
その言葉を聞いて、なつきは少し照れくさそうに笑った。
「じゃあ、私もひなたのこと知ってる」
「ほんと?」
「ああ」
「じゃあ、ひなたが今何考えてるか当てて」
「……」
「分かんないでしょ」
「分かる」
「え?」
「お菓子食べたい」
数秒の沈黙。
そして、
「なんで分かったの!?」
ひなたが大笑いする。
なつきも笑う。
そんな毎日だった。
ひなたは優しい子だった。
友達が泣いていたら隣に座った。
誰かが一人でいたら声をかけた。
困っている人がいたら迷わず手を伸ばした。
「ひなたって本当にいい子だよね」
周りからよく言われた。
「ひなたなら助けてくれる」
「ひなたなら大丈夫」
その言葉を聞くたび、ひなたは笑った。
「そんな大したことしてないよ」
本当にそう思っていた。
この頃のひなたは、まだ知らなかった。
「大丈夫」という言葉が、いつか自分を縛るものになることを。
少しずつ、周りはひなたに頼るようになった。
「ひなたならできるよ」
「ひなたなら平気でしょ」
「ひなたって強いから」
褒め言葉だった。
期待だった。
悪い意味なんてなかった。
ひなたも嬉しかった。
誰かに必要とされることが。
誰かの役に立てることが。
だから笑った。
「うん、大丈夫!」
いつものように。
なつきは、その笑顔を一番近くで見ていた。
だから思っていた。
ひなたは大丈夫だと。
ひなたなら何でも乗り越えられると。
だって、ひなたはいつも笑っていたから。
自分よりずっと子どもなのに、自分よりずっと大人だったから。
その時のなつきは知らなかった。
ひなたが笑顔を見せる相手を選んでいたことを。
泣きたい時ほど笑っていたことを。
「大丈夫」と言われるたびに、
「大丈夫な自分でいなきゃ」
と思うようになっていたことを。
#親友
*椥守蕊月*
219
~♡Տᗩᑎᗩ♡~
29