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猫とろ
186
ねらち
111
一方、その頃——警視庁捜査一課超能力捜査班。
茶髪ショートの武藤刑事は、デスクの前で深く悩んでいた。新米の彼女は、先輩である黒髪ポニーテールの加賀美警部補に、いつも迷惑をかけている気がしてならなかった。
他の美少女先輩たちや、美少女刑事課長にも、足を引っ張っているのではないか。
「やっぱり……ボク、刑事には向いてないのかも……」
実家の両親に相談したとき、「いつでも帰っておいで」と言われたことを思い出す。
故郷で洋食屋を営む父と母の顔が浮かんだ。後継ぎになるのも、悪くないのかもしれない。
実はもう、辞表を書いてしまっていた。
机の引き出しから封筒を取り出し、「よし、課長に提出しよう」と立ち上がった、その瞬間。
「何? その封筒」
振り返ると、加賀美警部補が立っていた。
逃げようとしたが、あっさりと封筒をひったくられる。
加賀美は中身を確認し、目を細めた。
「なになに……『一身上の都合により退職します』……?」
次の瞬間、加賀美の声が大きくなる。
「えー!? 武藤刑事、辞めちゃうの!? そんなの許さない! 武藤刑事は私のバディなんだから! 辞めちゃダメなんだからね!」
そう言うと、加賀美は武藤を強くベアハッグした。 武藤の顔が、加賀美の豊かな胸に埋もれる。苦しいけれど、どこか安心する感触。
「でも……! ボクはみなさんにご迷惑ばかりかけて、足手まといなだけなんです! 刑事に向いてないんです……!」
武藤は泣きながら訴えた。加賀美は少し離れて、真剣な目で彼女を見据える。
「は? 誰がそんなこと言ったの。あんたの評価はあんたがするんじゃない。周りがするんだよ。自分で決めんな」
「あんたを信じる周りを信じろ。その信頼を受ける自分を信じるんだ」
加賀美の言葉は、いつもよりずっと真面目だった。
それを見ていた金髪ツインテールの馬頭刑事が、笑いながら口を挟む。
「そうだぞ! だいたい、偉そうに言ってる加賀美警部補だって、刑事になりたての頃、仏さんを見て腰抜かしておしっこ漏らしたんだからな! 拭いてやったの、俺だぞ!」
「それ言わない約束でしょ!!」
加賀美が真っ赤になって馬頭に掴みかかる。周囲から小さな笑い声が上がった。
刑事課長も微笑みながら、武藤の肩に手を置く。
「ここのみんなは家族なんだから。少しずつ成長していけばいいんだよ。加賀美の後ろについて、そばにいればいい。そのうち覚えてきて、同じことができるようになるから」
武藤は涙を拭いながら、小さく聞いた。
「……ボク、ここにいていいんすか?」
捜査一課超能力捜査班の面々が、揃って答える。
「いいんだよ!」
「当たり前だろ」
武藤はようやく、泣きながら笑った。辞表の封筒は、加賀美がそっと破って捨ててくれた。
こうして、武藤刑事はチームに残ることになった。
未熟でも、迷惑をかけても、彼女を受け止めてくれる場所が、そこにはあった。
めでたし、めでたし。
コメント
1件
第59話、読み終わりました……。よかったですね、本当に。武藤刑事が辞表を出そうとしたところを加賀美警部補に止められて、課長や馬頭刑事も含めてみんなで「ここは家族だ」って受け止める場面、胸が熱くなりました。加賀美の「自分で決めんな、周りを信じろ」って台詞も、新人の迷いに刺さる言葉ですし、馬頭刑事の暴露で空気が軽くなる緩急も効いてて、チームの温かさがじんわり伝わってきました。武藤刑事、ここでよかったんだなって思える最終盤、素敵でした。