冥王の力が圧倒的であることは誰の目にも明らかだった。鋼谷も篠田も、何度も立ち向かおうとしたが、そのたびに冥王の異能の前に無力感を感じていた。だが、篠田の表情は決して諦めていなかった。今までのように、ただ戦うだけでは勝てないことを、彼は痛いほど理解していた。
「今までの俺じゃ…ダメだ。」篠田は静かに呟き、視線を冥王に向けた。その眼差しには、決して揺るがぬ覚悟が宿っていた。
「神楽一刀斎の封印」
篠田の手が、ゆっくりと自分の胸に触れる。その瞬間、彼の体は異様な力を感じ取り、まるで何かが目覚めたかのように反応を示した。篠田は一度深く息を吸い込んでから、ゆっくりと力を込める。そのまま彼の体に眠っていた力が解放される。
それは、神楽一刀斎という魂が篠田の体に降りてきた瞬間だった。篠田の目が鋭くなり、周囲の空気が一変する。
「篠田…!お前、まさか…」
鋼谷が驚きの声を上げる。だが、篠田はその言葉を無視するかのように、冥王を見据えた。彼の体から放たれる気迫は、まるで過去の戦士のように凄まじいものがあった。 神楽一刀斎の魂が篠田の中で目覚め、彼の戦闘能力は急激に進化を遂げた。
最強VS最強の戦い
冥王はその変化に気づき、挑発的に笑った。「ふん、そんなもので俺に勝てると思っているのか?」
篠田は一言も返さず、その目に宿る闘志を冥王にぶつけた。その瞬間、周囲の空気がぴんと張り詰め、両者の間に存在するのはただ一つ―― 殺気だけだった。
篠田は一歩踏み込み、反撃の態勢を整えた。彼の体内で神楽一刀斎の魂がその剣技を呼び覚ます。篠田が一刀を抜くと、その刃の先から異次元の圧力が放たれ、冥王の異能の力を押し返すかのように、空間が歪む。
「これは…!」冥王は一瞬、驚きの表情を浮かべる。しかし、その表情もすぐに冷徹なものに戻り、再び篠田に対して全力で攻撃を仕掛けた。
篠田はその攻撃をただ避けることなく、逆に冥王の力を利用するように、剣を振るった。 神楽一刀斎の剣技は、単に力をぶつけ合うものではなかった。相手の力を受け流し、その力を自分のものにしていく、まさに剣の道そのものであった。
「無限の斬撃!」篠田が剣を舞わせると、刃の先から次々に斬撃が放たれ、冥王を圧倒する。だが、冥王も決して負けることはなかった。彼の異能、「虚無の手」は、物体も霊体も無に帰す力を持つ。篠田の斬撃をその手で受け止め、次々と無にしていく。
「それが…お前の力か。」篠田の目が一瞬、鋭く光る。「だが…それだけでは俺には届かない。」
戦いは次第に常識を超えていった。冥王の手から放たれる虚無の力と、篠田の剣から放たれる斬撃がぶつかり合う。その衝撃は、まるで世界が崩壊するかのような音を響かせた。
篠田はその衝撃に耐えながらも、神楽一刀斎の剣技を極限まで引き出していった。冥王の虚無の手が篠田を覆おうとする瞬間、篠田は一瞬の隙を突いて、その剣で冥王の腕を切り裂いた。
「貴様…!」冥王は血を流しながらも、ますます力を振るっていった。しかし、篠田はその血をものともせず、さらに強烈な斬撃を放った。
最終的に、冥王の力も限界を迎える。彼の虚無の手は次第に力を失い、篠田の剣に打ち破られていった。冥王がとうとう膝をつき、その顔に驚愕の表情を浮かべた。
「これが…お前の本当の力か。」冥王は、篠田の神楽一刀斎の剣に敗北を認め、静かに倒れ込んだ。
篠田は息を切らしながら、無言で剣を納めた。その目に宿るのは、戦いを終えた者の冷徹な静けさであった。
「終わった。」篠田は静かに呟き、冥王を見下ろした。
そして、鋼谷がその後ろに現れ、冷や汗をかきながら言った。「お前…まさか本当に神楽一刀斎の力を引き出せるとはな。」
篠田は軽く笑った。「最強VS最強、常識は通じねえ。」
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