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お父さん、本当に嬉しいんだろうな。 おめでとう㊗️
「しかしあれだぞ、貴仁君が『彩花、結婚してくれないか』と語りかけた時には、思わずお父さんも『ハイ!』と答えてしまったからな」
自分が何を喋ってるのかちゃんとわかってるのか、父の言いようにはさらに笑いが込み上げてくる。
「結婚するのはお父さんじゃないんだから、別に返事しなくてもいいんだってば」
「わかってるさ、そんなことは。もちろんわかってるって! だがな、あんなに真っ直ぐに求婚されたら、つい『ハイ』と言いたくなるだろうがー」
大まじめな父の返答に、ああそれはその通りかもと感じる。
だって私なんて、何回「はい、はい……」って、頷いちゃったかってぐらいだったし……。
それほどまでに、貴仁さんからのあのプロポーズは、ダイレクトに胸に刺さったんだもの──。
にわかに沈黙が訪れたかと思えば、
「……いやだが本当によかったな。おめでとう、彩花」
急に物静かなトーンでお祝いの言葉が投げかけられて、ドキリとさせられる。
「あ……ありがとう、お父さん」
少しばかり焦ってお礼を返すと、途端に気恥ずかしさが襲った。
「うん……父は、うれしいぞ。きっとあいつも……久我の奴も、手放しに喜んでいるだろうな」
「そうだと、いいんだけれど……」
「そうに、決まっているだろう」
実際に彼のお父さまには会ったことがなく、知っているのはKOOGAという大企業を興した方ということだけでもあって、やや怖気づく気持ちで話した私に、お父さんは即答でそんな臆病風を吹き飛ばして、電話口で快活に笑った。
「うん……ありがとう」
なんだか涙がこぼれてきそうで、それしか言えなくなる。
「ああ、婚約おめでとう。バンザイ! 彩花!」
するとまたしても大きすぎる声で叫ばれて、流れそうになっていた涙も引っ込んでつい吹き出してしまい、泣き笑いの顔で、もう一度「ありがとう、お父さん」と、口に出した──。