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「お前、恐怖心をわずかだが、感じているだろう?なら駄目だ」
鋭い目つきで愛華はそう言って、蘭華が言い返す隙も与えず扉を閉めた。
「欧華、座れ」
言われるがままに、私はそこにあった椅子に座った。
座る時に、髪が前に出て来たからいつもどうりに戻そうとした時、初めて私は気付いた。
「髪が、黒い」
今まで紺色に金色の星をまぶしたような髪だったのに、黒くなっていたのだ。星は輝きを失い、灰色になっている。
私は自分の変化に怖くなった。
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。
そう感じているとき、抱きしめられているような感じがした。
ゆっくり顔を上げてみると愛華が優しく抱きしめてくれていた。
驚いていると、愛華が「大丈夫」と何度も落ち着く優しい声で繰り返し私に言い聞かせてきた。
暫くして私が落ち着いたら、愛華はそっと私から離れて、向かい合わせになっている椅子に腰掛けた。
「お前の、欧華の能力について、少し辛い物かもしれんが、それでも聞くか?」
真っ直ぐに愛華の紅い瞳が此方を見据えている。答えは勿論、「YES」だ。
「欧華の能力は、“心操”。その名の通り、相手の心を操る物だ」
“心操”何故かその能力の名前がとてもしっくり来た。
「他者の心を操る能力で、普通は、目を合わせて意識すると相手はお前の言葉に従わざるを得なくなる」
そう聞いただけでもあまり良い能力な気がしませんでした。ですが、何故、意識していないのに、能力が発動したのだろう。この髪の色の理由は?
「だが、能力を使用した代償として、使用後は髪が一時的に黒ずみ、数時間は周囲の人々に不安と恐怖を与えるような雰囲気を出す。先程の蘭の恐怖心もその影響だろう」
能力を使うのに代償なんているんですね。蘭華を怖がらせたのが自分だと分かり、自分自身の事が、少し嫌いになりました。
「それに、この能力は完全には制御できない。それ故に、感情が高ぶると無意識に発動してしまう事が有る」
「無意識に発動、、、?」
自傷の笑みが溢れた。完全に制御できない能力なんて、一ミリも嬉しくない。
「あぁ。無意識に、だ」
目を瞑り淡々と話していた愛華はそう言い終えてやっと目を開いた。
「欧華、どうして機関の化身のドールは自身の主より一年早く生まれるか知ってるか?」
突然の問い掛けに私は戸惑った。そんな物知らない。
「分かりません」
「だろうな」
さも当たり前かのような顔をして愛華がそう言うので気が狂いそうな気がする。
「私達ドールは基本的に自身の主と共に生まれるか、それよりも前に生まれるか、そのどちらかがランダムで決まる。確率的には自身の主と共に生まれるほうが高いのだが、それよりも前に生まれるのは、何年前かなんて分からない物なんだ」
普通の国の化身のドールはいつ自身の主が生まれるか分からない。なら、どうして、私は御主人様がいつ生まれるか知ってるんだ?
「機関の化身のドールはな、普通のドールが持っているような“ドールの傷”と呼ばれるものが無いんだ。ドールの傷、蘭ならば、痛覚を人よりも感じにくくなっている。私ならば、体のあちこちに大きな傷跡がある。決して癒えてくれない、な」
ドールの傷、、、。確かに、私にはそんな傷跡も、感覚も無い。
「機関の化身のドールにはその傷が無い代わりに、強い能力による代償があり、その能力も制御できない様になっている。いわば、それが“ドールの傷”の一つなのかもな」
そう語った愛華の目は少し悲しくて苦しそうだった。
「その能力を少しでも制御できないなりに工夫したりする為に、機関の化身のドールは自身の主より一年早く生まれるんだ」
そう言って、愛華は私の頭をポンポンと撫でた。
「能力制御のための時間、ということですか」
私がそう再確認すると愛華は静かに頷いた。
「どうしたら、良いんですか」
絶対にこんな能力なんかに負けてたまるか。