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「ああえーと、そういうことではなくてですね……」
「そういうことというのは、どういうことなんでしょう?」
喋れば喋るほど悪化していく状況に、押し黙っていると、
「華さん、少し彼女とお茶でも飲んでから会社に向かいたいんだが、お茶を淹れてもらってもいいかな?」
話題をそらすように、彼が促してくれた。
「はいはい、お茶でございますね!」
華さんが家のドアを引き開けて、先に蓮水さんが中へ入って行き、続いて入ろうとすると、
「ちょっとお待ちを」
と、背中を呼び止められた。
「はい、なんでしょうか?」もうさっきの話は済んだはずなんだけれどと首を傾げると、
「……酔った陽介様は、たらしっぷりがいつにも増してじゃありませんでしたか?」
華さんから、そうこそっと耳打ちをされた。
えっ……ということは、最初から、昨夜何があったのかを気づいていて──!
「……もしかして、わかっていられたんですか?」
その真意を確かめようと問いかけた私に、
「わかっていないなどとお思いですか? 私が、陽介様と何年いると」
ふっと笑みを浮かべると、声をひそめるようにして話した。
「ただし、」と、華さんが人差し指を唇に当てて、言い含めるかのように続ける。
「陽介様が酔ってしまわれるのは、よっぽどの気を許したお相手の前だけですので、その点は肝に命じられて、お気張りくださいませ」
片手でポンと肩が叩かれて、きっと後押しをしてくれているんだろうなとも感じたけれど、同時に、華さんって結構な策士なんじゃないのかなとも思えて、小さく苦笑してしまった。