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最近、ふと感じることがあった。
仕事中――
佐久間の表情が、前よりもどこか穏やかになっている。
笑顔はいつもと同じ。
でも、どこか――
軽くなったような顔をしていた。
💚(もしかして……)
胸の奥に、小さな予感がよぎる。
⸻
その夜。
時計はもうすぐ0時を回ろうとしていた。
阿部は、静かにベッドを抜け出す。
💚(……会いに行こう)
リビングへ向かう。
ドアを開けると――
そこには、ソファに座る佐久間の姿があった。
🩷「ん?」
振り向いた佐久間は、いつもの明るい顔。
🩷「阿部ちゃん?どうした?」
💚「え……?」
思わず声が止まる。
時計を見る。
0時を過ぎていた。
💚「佐久間……?」
🩷「ん?」
💚「……まだ、佐久間?」
🩷「え?なにそれw」
佐久間は少し笑いながら首を傾げる。
🩷「ふと目が覚めてさ」
🩷「この時間にこんなに意識はっきりしてるの、初めてなんだよね」
少し考えるようにしてから言った。
🩷「もしかしてさ」
🩷「もう一人の俺…消えたのかな?」
💚「……」
胸が、ぎゅっと締めつけられる。
🩷「なんかさ」
🩷「心の奥が、すっと軽くなった感じがするんだ」
🩷「でも……」
🩷「なんかちょっと寂しいんだよね」
🩷「変な感じ」
💚「……そっかそっか」
小さく呟く。
💚「佐久間、強くなったんだね」
🩷「え?」
阿部は、ゆっくり息を吸った。
💚「実はね……」
そして――
阿部はすべてを話した。
夜の佐久間のこと。
自分と話していたこと。
寂しさ。
優しさ。
全部。
話し終えたとき――
佐久間の目から、ぽろぽろと涙がこぼれていた。
🩷「……そっか」
🩷「そうだったんだ」
🩷「一人で……ずっと辛い思いしてたんだね」
涙を拭いながら笑う。
🩷「俺さ」
🩷「最初は、もう一人の自分が怖かった」
🩷「なんでこんなのがいるんだって」
🩷「ずっと思ってた」
🩷「でも」
🩷「ずっと俺を守ってくれてたんだよね」
🩷「今はすごく感謝してる」
阿部の胸が熱くなる。
次の瞬間。
二人は自然に抱きしめ合っていた。
静かな夜。
佐久間の体温が、確かにそこにある。
少しして――
佐久間がぽつりと聞いた。
🩷「ねえ阿部ちゃん」
💚「ん?」
🩷「もう一人の俺と……」
少し目を細める。
🩷「キスした?」
💚「え」
阿部の動きが止まる。
💚「……」
🩷「……したんだ」
🩷「絶対した顔じゃん」
💚「いや、あの」
🩷「えええええ!!」
🩷「なにそれ!!」
🩷「めっちゃ妬ける!!!!」
💚「だって佐久間は佐久間だよ!?」
🩷「でも俺じゃないじゃん!!」
🩷「なんか複雑なんだけど!!」
🩷「やだ!やだ!」
二人の言い合いが、夜の部屋に響く。
でも――
どこか、温かい空気だった。
しばらくして、佐久間は小さく笑う。
🩷「でもさ」
🩷「阿部ちゃん」
💚「ん?」
🩷「ありがとね」
🩷「俺と…」
🩷「もう一人の俺のことも好きになってくれて」
阿部はそっと佐久間の頭を撫でた。
💚「当たり前だよ」
その夜。
二人は、いつもより長く抱き合っていた。
まるで――
もう一人の佐久間にも届くように。
終わり。次回番外編
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