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「そこまで。」
それはほぼ同時だった。
ただ1人の人間が、拳と人智を超えた氷の槍を、同時に押さえ込んだ。
アリィ「…ジークに胸ぐら掴まれてたヒト…」
橋の監視人「なんてこと思い出させるんですか…!とりあえずふんっ!」
「ちょっと!?折りましたね!?」
橋の監視人「あー…お嬢さんも、腕を降りたくは無いので拳を引っ込めて欲しいなー…なんて。」
アリィ「分かった。」
橋の監視人「ありえないくらい物分りがいいですね…!?」
「ルスベスタン!これ作るの凄い大変なんですよ!?」
ルスベスタンと呼ばれた監視人は、文句を言う水色の輝く瞳を持つ人間に抗議する。
ルスベスタン「そんなこと言われましても…自分が止めなきゃ、どっちかは死んでましたよ。焦る気持ちは分かりますけど…ニェヘマ君、このヒトは悪魔じゃなさそうですね。」
ニェヘマと呼ばれた青年の文句は止まらない。
ニェヘマ「そんな確証のない言葉で…納得できませんよ!ソイツは擬態型です!」
ルスベスタン「はぁ。お嬢さん、銀髪の子は…ええと、ジーク…君ですか?彼はどこに?」
アリィ「今ちょっと手が離せなくて。…まるで手負いの獣。」
アリィはニェヘマを見て、一言そう呟く。
ニェヘマ「?」
アリィ「ここに用事はもうないって言いたいところだけど…今バイト中なの。なんとしてでも、失敗する訳には行かない。来て。」
ルスベスタン「…行けるならとっくに行ってますよ。雇い主に死なれちゃ困りますし。」
ニェヘマ「ルスベスタン…!」
ルスベスタン「まぁまぁ。こんなに無防備なのに、攻撃してこないのが何よりの証拠でしょう?確かに気になることはありますけど…忘れたんです?自分が特別な体質なのを。明らかにあの拳に魔力は宿ってなかった。」
アリィ「…待って。なんで分かるの…?」
(ニェヘマは…恐らく私と同じ。何故か魔法の使える人間。元々思ったより、魔法がやたら使える自覚はあった。だから多分この量を見て、悪魔と疑ってる…。悪魔は一目で分かる凄い量の魔力を持ってるから…。でも、このルスベスタンからは…何も、魔力を感じない。なのに…)
ルスベスタン「言ったでしょう、自分は特別な体質だって。ニェヘマ君、この反応でも信じれそうにありません?俺のこと。」
ニェヘマ「…分かりました。謝罪なんてしませんから。」
アリィ「上辺の言葉で謝罪されるより結構だよ。」
ルスベスタン「んじゃ仲直り出来たってことで。…でも行けないんですよ自分は。着いてきてください。」
アリィ「分かった。」
ルスベスタン「ニェヘマ君は…」
ニェヘマ「武器を作るにも時間がかかるので、一旦ボクも戻ります。」
アリィ「……。」
アリィは大人しく、ルスベスタンの後ろを着いていく。
ルスベスタン「あ、そこから入ろうとすると死ぬんでこっちでお願いします。」
アリィ「…分かるから大丈夫。」
(…これは…罠のつもりだろうけど…)
ルスベスタン「着きました。」
アリィ「酷い数の怪我人だね。」
ルスベスタン「一般的に出回っている市販薬は、使い切りました。怪我人の数が多すぎて…」
ルスベスタンは、自身の足元に置かれた薬草の入った器を見る。
アリィ「その場で作っていかないといけないんだね。知識があるのは、他には?」
ルスベスタン「居ません。自分一人だけです。自分も仕事柄身に付けた諸刃の剣ですけど…。」
アリィ「そう。…まぁ…おかしなことではないか。なら国門へ行って。私が代わりにやる。」
ニェヘマ「なっ…!」
ルスベスタンとニェヘマは目を見開き驚く。
アリィ「勘違いしないで。これは正義感なんかじゃない。…家族が行方不明なの。ここにも居ない。私はもう、大切な人が自分の見えないとこで亡くなるのを耐えられない。だから代わりにやる。利害は一致したでしょ?」
(ポルポル…あのヒトから今はまだ無事だろうって聞いたけど…『今は』…)
ルスベスタン「…やる気だけで出来るものじゃないんですよ。」
アリィ「知ってる。アグドゥナ草は?コカルネ草と、砂漠の気候でいくとミチメ草なら大量にあるでしょ?」
ルスベスタン「あるにはありますけれど…全部毒草…」
アリィ「大方、一般的なヒトに害のない薬草はもう使い切ったでしょ?毒は正しく扱えば薬にもなる。貴方が全部持ってきて。私はこの場の誰よりも、毒を薬にする方法に詳しい。それともこのままくたばるのを待つつもり?」
ニェヘマ「…分かりました。」
アリィ「これで信用出来る?」
ルスベスタン「もしかしてお嬢さんは…」
アリィ「余計な詮索はしないで。」
ルスベスタン「…そうですね。ありがとうございます。これで自分も行けます。なるべく気にかけておきますね。」
アリィ「なるべく早く倒して。」
ルスベスタンは返事なく、国門に走り去っていく。
アリィ(本来の目的は装置を壊すことだけれど…ジークから連絡はなし。今私に出来ることは…ポルポルの安全確保をするための尽力…自分一人じゃ何も出来ないって…もどかしいな。)
ジーク「…増えました?」
ツァイ「増えたね。」
ウェシア「君が窓を見てる間に増えたわ。」
ツァイとウェシアの間に頭1つ分小さな兵士が立っている。
小さな兵士「初めまして〜。殿下からのご命令で護衛につけとのお達しでーす。あ、名前言ってなかった。クーシャですー。」
ジーク「ああなるほど…この騒ぎでか。」
クーシャ「ですです。」
ジーク「…人質を生かす理由とかは分かるけどさ、結構危なそうだし…できれば…」
クーシャ「あ、ご心配なく!今動ける者総出で避難させています!一応君が人質ってことになってるので、他の皆さんは安心してください!まっ、誰がお仲間とか分からないんで片っ端からですけど。」
ジーク「ならいいか。下手に動いてここで死ぬ訳にはいかないし。」
ツァイ「ほんと、君達観しすぎじゃない?」
ジーク「これ状況説明とかして貰えます?俺からしたら周りが急に慌ただしくなって、変な音がするだけで…」
ウェシア「変な音?そんなのした?」
ツァイ「いや…音はよく分かんないけど、今悪魔が来ちゃってね。それに対応してる。」
ジーク「悪魔が…。音に関しては気にしないでください。俺の考えすぎでした。」
(またやった…。)
ウェシア「今は誰もうちの兵は悪魔のとこまで、着いてないから、状況判断が出来ないけど…厄介なのじゃないことを祈るわ。」
ツァイ「それな。俺ら死ぬ可能性ゼロじゃないもんなー。理想の死に方って何?」
クーシャ「うーわ縁起の悪い質問し始めた。そんなんだからモテないんですよ。」
ツァイ「おーうおう。心の傷をほじくり返しやがったな。」
ジーク「なんでもいいんで静かにしてくれませんかね…。」
ウェシア「同感。」
ルスベスタン「うひぃ〜…疲れた…よかった、間に合った…。」
ニャヘマ「ルスべ…」
ノア「**ちょっと!**よそ見しないで!」
ルスベスタンの声を聞いたニャヘマは振り返る。それを慌てて、ノアは注意する。
ルスベスタン「その足…」
ニャヘマ「問題は無いから安心してください。端的に説明すると、この悪魔他と何かが違います。1歩も引く気がないから気をつけてください。」
ルスベスタン「状況説明ありがとうございます。片方は誰か分かりませんが…2人とも撤退してください。」
ニャヘマ「分かりました。ほら、殺されたくなったらこっち。」
ニャヘマはそう短く返事を返すと、ノアの首根っこを掴み引きずる。
ノア「ぐぇっ!強引!」
ルスベスタン「…手柄を横取りするみたいで、すみません。」
ニャヘマ「持ちつ持たれつですよ。ルスベスタン、貴方にならいくらでも取られて構いません。」
ルスベスタン「嬉しいことを言ってくれますね。」
ノア「…あの子人間なのに1人で…」
ニャヘマ「別に心配する必要はないわ。ルスベスタンの口癖はね、『強いわけじゃない。ただ勘だけで、生きて勝ち上がっただけ』なの。」
ノア「それ、安心できる要素なさそうなんだけど…」
ニャヘマ「分からない?…あの人の勘は、生まれたその時から、外れたことがないの。」
ノア「それって…」
ニャヘマ「まとめて悪魔扱いで殺されたくなきゃ、大人しく引きずられなさい。」
ノア「いや自分で歩くよ!?」
ー四足歩行型悪魔討伐戦
ーノア、ニャヘマ撤退
ールスベスタン参戦