こんなことならばもっと早く学校に行っておくんだった。そんな薄い後悔を抱きながら今日も三葉くんと他愛のない言葉を交わし合う。
「ねえ、僕のこと忘れちゃった?」
三葉くんはわたしと再会したあとも1年生の時、同じクラスだった生徒にそう聞いて回っている。一度だけ「そんなことしても自分が傷つくだけだよ」と言って止めたことがあったが三葉くんは「みんなの記憶に残っていたいんだ」と言って聞いて回ることをやめなかった。
だけど生徒たちはそんな三葉くんの願いに応えることはなく、〝昇降口の首折りさん〟という噂話として彼の話を広めていった。
『プリン食べる?』
「ナスビのくせに気が利けるじゃん。」
わたしは三葉くん一人だけでいいのに。そんな汚い独占欲を押しつぶして、今日も幽霊になった彼の隣に腰を下ろす。
生きていたときも、死んでしまった後も、彼に「好きだ」という3文字を告げることが出来ない。
彼にとってわたしは“友達”。きっとそれ以上でもそれ以下でもないだろう。
「おかわり」
『はいはい』
それが分かっている今、この関係に自分からヒビを入れるようなことはしたくない。
すぐ隣で美味しそうにプリンを頬張る三葉くんの姿にこっそりと目を細めて笑う。
このまま彼のことが見えるのがわたしだけだったらいいのに。
そんな願いとは逆にとうとう彼の姿が見える、二人目が生まれてしまった。
金髪に奥歯が尖った八重歯が特徴的な交通安全のピアスをつけている男の子。その子はわたしに目も向けず何故か三葉くんを連れて行くと、そそくさとどこかへ行ってしまった。
『行っちゃった……』
あーあ、という落胆に似た気持ちを込めた声色でそう言葉を落とす。
気付けば朝の光を包み込んでいた水色の空はまた赤みがかったオレンジ色に染まっていた。
三葉くんと居ると1日の時間があっという間に進んでしまう。
もっと一緒に居て話したいのに、それは叶わない。
一向に帰って来る様子も見せない三葉くんとあの金髪の男の子に痺れを切らし、わたしはいつも通り昇降口へ向かい、自身の靴に足を滑らせる。
どうせ明日も会えるんだ。
その時にまたいっぱい話そう。
帰って来るの遅いよっていう愚痴もいっぱい言ってやる。
もう当たり前になった幽霊の彼との明日にふふっと笑みを零しながら、わたしは家へと足を進ませた。
もう少しで完結❕。。。の予定❕(
コメント
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この物語ももう少しで終わりかぁ〜