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時間も過ぎ、あと一組落ちれば三次試験
さっきまでとは打って変わって静かになってしまった
山田「…なぁやっぱ行ったほうがええんちゃうん?」
たく「う〜ん…まぁ残り一組だし…でも確実に合格狙うならここで待機が一番だし…」
悶々と悩んでいると
『残り一組となりました、時間の都合上、3分後に30秒の発光を行います』
膠着した場面に痺れを切らした学校陣がアクションを起こしてきた
たく「あ〜…出たほうがいいかもね、ここ袋小路だし」
やまだ「よっしゃ行くでぇ!!」
満面の笑みで外に出て、窓の縁を掴んでどんどん上へと登っていく
たく「‥猿かよ…」
そう言いながらも、跳躍して一気に二階分上がる
それを見た山田もスピードを上げ、結局最後は同着で屋上に
山田「クソが、反則やろ猫の足」
たく「反則じゃないにゃん♪」
ちょけながら言い返す
だだっ広い屋上を眺めていると、お互いの体が光り始めた
山田「これが発光か」
たく「みたいだね…校内は少ない…あ、あっちの茂み多いね、最初に隠れてた所」
山田「ライバルは少ないほうがええやろ」
たく「あんまりリスクは取らないほうがいいでしょ」
そう言ってお互い指した方向は真逆で、続く意見の違いにお互いキレた
たく「いやいやいや馬鹿なの!?最後の一組狙ってるだけなのにお前がその最後の一組になったらどうするんだよ?
校内ならローリスク・ハイリターンだぞ!?」
山田「お前こそなんもわかっとらんやん、ハイリスク・ハイリターンのがおもろいやん!」
たく「おもろいとかおもろないとか違うの!!」
ギャイギャイとうるさく言い争っていると、中庭からなにか黒い影が飛んできた
うた「あ、居た…ってたくぱんまだ生きてたんだ…」
たく「げ…まぁ必死に這いずって生き残りましたよ…」
うただった
??「ちょっとうた待って!!」
そう言って手から出した炎で飛んできたのは赤いゴーグルの人
山田「あ!はるてぃー!」
はる「あれ?山田じゃーん!」
お互い明るく挨拶を交わしているところから、知り合いであることが伺える
たく「知り合いか?」
山田「はるてぃーや、さっき控室で会ってん、おもろいチビやで」
はる「ちょ!チビって言うなこの野郎!!」
たく「俺から見れば全員チビだわ」
うた「お前強かだなぁ…」
軽口をたたき合いながら和気あいあいと話し合う
山田「ま、会っちゃったからには戦わんとな」
はる「よしッ!先手必勝!喰らえファイヤーボール!!」
ボールと言うにはいささかでかい火の玉を生み出し、こちらに向けて放つはるてぃー
たく「そんなのあたらないよ」
だが、見た所はるてぃーは魔力量が多い、きっと手数を増やされればいつかは当たる
それに正確に投げられているところから見るにきっと実力もピカイチなのだろう
山田「本気でいかせてもらうでぇ!!」
そう言って大きく振りかぶり、頭上に雨雲を呼び寄せる
なるほど、火には水をってことか、雷魔法が使える山田らしい炎対策だな
はる「げぇッ!雨!!うた頼んだ!」
うた「任されましたよっと」
そう言って前に出てきたうたが手を上に掲げ、雨雲を吸い寄せる
うた「ゴチでぇす、そして返しまぁす!」
雲も水、塊にして弾丸のごとく飛ばしてくる
当たった地面が大きくえぐれた、
威力も今までの奴らとは段違い
たく「これはガチで挑まないと無理っぽそうだなぁ…」
淡々と後ろに避けながらつぶやき、大きく飛躍する
避雷針の上に立ち、叫ぶ
たく「山田!!」
山田「ッッ!おう!」
すると山田が小さな電気を避雷針に向けて撃った
足にピリピリとした感覚が走る
はる「ッッは?彼奴等ってペアじゃ…」
いきなり仲間に向けて攻撃を放ったのだから、妥当な反応だろう
たく「知ってる?オチビさん、筋肉を動かすためには、電気が必要なんだよ?」
さっきよりも桁違いに上がった脚力で跳ぶ
人は自らの力を最大限発揮できないようになっている
タガが外れれば待っているのは崩壊のみだから
そのタガを無理やり外す。反動はあるだろうが回復力のある魔族には痛くも痒くもない
高く高く飛び上がり、はるてぃーの真上まで
たく「おらっ」
そのまま一回転して、かかとを振り下ろす
流石に避けられたかと体制を整え直し、すぐかかる
取り出された短剣で横から振った足を止められる
足首と短剣で鍔迫り合いが起こり、ギチギチと音を立てて震える
はる「お前なにもんだよッッ…!!」
たく「ただの、猫の獣人だにゃん♪」
お互い示し合わせたように飛び退き、一定の距離を保って躙り合う
はる「ただの獣人のくせに…お前面白いな…!!」
水色の瞳が好戦的に光る、口元はきれいな弧を描いていた
きっと心底楽しいのだろう
はる「お前も、ワクワクしてるだろ?」
…見抜かれてしまったか、
命の奪い合いまではいかなくとも、相棒と、強敵に立ち向かう
なんと楽しいことか、悪魔の競争本能が騒ぐ
自然と口角は上がり笑い声が漏れる
辺りの空気が変わり、木の葉がザラザラと揺れ、冷たい風が吹きさらしてきた
ぴゅうぴゅうと風が音を立てる
はる「ッッ…!?」
たく「まだ見せてなかったよね?俺の得意魔法」
はるてぃーの頬や服に小さな切り傷ができていく
山田「おまけやで」
そう言って山田が雨雲を連れてきて、雷を鳴らす
辺りはあっという間に暴風雨だ
うた「これは…!!」
たく「トドメ…ッッ!」
風が強くなり、ついにははるてぃーを空に飛ばした
慌てて自らの炎で軌道修正を試みているが
ご自慢の炎も雨の中では情けなく、安定しない跳び方だった
そのまま風に飛ばされ、落ちてきたのは俺の腕の中
たく「終わりだね」
にやりと笑い、爪でターゲットをやぶこうとした、その時だった
『受験番号30ペア 脱落 合格者数が上限人数に達しました、二次試験「サバイバルモード」を終了いたします』
どうやら、俺らの居ないところで先に決着がついてしまったらしい
はるてぃーを下ろし、風を使って雨雲を吹き飛ばす
雲一つない快晴に、じっとりと濡れたアスファルトが照らされていた
はる「うわぁ〜勝ったのに負けた気分だわw」
山田「まぁ実質的にはこっちの勝ちやしな」
うた「俺等後半普通に見てたわ…」
ぞろぞろと隠れていたペアや脱落したペアなどが、明るい雰囲気を取り戻す
うた「なぁ、たくぱん…」
たく「ん?なんですか?」
うた「もしかして…いや、なんでもない」
感づかれたか、俺の一番近くに居たやつだし、魔法で気づいたのだろう
まぁうたくんになら…とも思いつつ、誰かに聞かれる可能性だってあるので、今は保留かな
山田「いいアップやったな」
たく「同感」
小さな声で短く言葉をかわす
次は、三次試験「トーナメント」
山田「ま、余裕でパスしたろうや」