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ベッドの脇のライトを消そうとしたら、一枚の手紙に気が付いた。
真夏の夜は汗が滲む。
院内の空調が弱かった。
「何だろう?」
開いてみると、羽良野先生からだった。
ギョッとして、一度手紙を床に落としてしまった。
ぼくは目をギュッと閉じて勇気を振り絞って、ベッドから降りて手紙を拾う。
ライトの光りで読んでみると、綺麗な字で書かれていた。
「歩君へ。村田先生と話したけど、今は襲わないようにするから、安心して。それと、何故。私があなたを襲うのか? また、何故。周囲の人々がおかしいのか? これから書くわね。あなたは読まない方がいいかも知れない。怖いのなら、読まないでいいわ」
優しい字だった。ぼくを殺そうとした羽良野先生とは別人みたいだった。
ドクドクと心臓の音が聞こえる。部屋に鳴り響くような音だった。
だけど、ぼくは勇気を持って静かに読むことにした。
「まず。人は死なない。本当のことよ。ちょっとしたことで、不死になるの。それを知った昔の人々がいた。大昔から繰り返し繰り返し行なった酷いこと。もちろん死にたくなかったからなのね。その人々たちは大飢饉の時に知った。
そう。彼らは大飢饉で学んだの。今も御三増町から少し離れた村で行われている。……不死の儀……。それは薬で仮死状態になった子供たちを食べること……」
ぼくは緩やかな吐き気がしたけど、冷や汗を両手で拭い。気がつくと何度も手紙を読んでいた。
涙が溢れた。
バラバラにされても生きている子供たちは、もういない。……この世には。
手紙には続きがある。
「もう、何百年も彼らは生き延びているわ。私たちはその村のために、学校や幼稚園にいるの。子供たちを探すために。行方不明になっても、あまり周りが騒がない子供たちを見つけるため。村の近辺では毎年、夏に大規模な行方不明者が出ているの。だけど、村の子供たちもあまり増えなくなったの。被害が拡大している。村田先生と何人かの父親は、この事を止めようとした。私は反対だったけど、強く説得されたの。ここまで、あなたが読んだかわからないけれど。逃げて……。……この町から……。不死は恐ろしい……」