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「100日後に、新宿を更地にする」
志摩が持ってきたその報せは
国家権力を隠れ蓑にした『黒い百合』による事実上の虐殺宣告だった。
表向きは「国際的なスポーツ大会に向けた再開発と治安強化」だが
その裏では、組織の秘密を知りすぎた者たちを街ごと葬り去る計画が進んでいる。
「兄貴、あと100日しかないって……そんなの、どうやって止めりゃいいんですか。相手は国ですよ」
山城が焦燥に駆られ、テーブルを拳で叩く。
「……力で止めるのは不可能だ。だが、この街には組織が計算に入れていない『変数』がいくらでもある」
俺は地図上の、ある一点を指差した。
それは新宿の地下深く、かつての大戦時に作られ、今は忘れ去られた巨大な「避難壕」の入り口だった。
「志摩。公安が動く前に、俺たちが先に『街』を飲み込む。新宿の地下に、組織の手が届かない、もう一つの新宿を作るんだ」
「地下都市か……。正気か?黒嵜。兵糧攻めに遭えば一発で終わりだぞ」
志摩が眉をひそめる。
「だからこそ、外とのパイプが必要だ。……志摩、あんたは警察の内部から計画の『遅延』を画策してくれ。山城、お前は街の野良犬どもを集めろ」
「うっす!」
「三和会の残党、食い詰めた情報屋、家を焼かれた浮浪者……。一人じゃ勝てねえが、一万人の鼠なら、怪物の足を止めることはできる」
俺はアパートを飛び出し、夜の歌舞伎町へと向かった。
街の空気は、すでに死を予感したかのように冷え切っている。
向かった先は、かつて親父が通っていた古い雀荘。
そこの奥座敷には、かつて親父と盃を交わした、今は引退した老人たちが集まっていた。
「……榊原の息子か。また厄介な顔をして来やがったな」
「じいさんたち。頼みがある。……この街の『血管』を、俺に貸してくれ」
俺は老人たちの前に頭を下げた。
新宿を支えてきた古い人脈、裏の流通経路
そして誰も知らない抜け道。
組織がデジタルで管理できない「アナログの記憶」こそが、唯一の対抗手段だ。
「……わーったよ。新宿の本当の怖さを、あのインテリどもに教えてやろうじゃねえか」
一人、また一人と、闇の中で瞳に火が灯る。
残された時間は、あと99日。
新宿の地下で、巨大な「逆襲の土台」が、音もなく動き始めた。