テラーノベル
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日曜日。かねて千歳と約束した通り、動物園のズーラシアに来ている。
『広いなー! でかいなー!』
千歳は珍しげにあたりを見回している。ズーラシアは東京ドーム10個分の広さがあるそうだが、そもそも俺、東京ドームの広さがわかんないな。
「すごい人だね」
小さい子を連れた家族連れがたくさん。動物園ってたしかに小さい子好みだよな、俺の好み子供レベルなのかな……。
自然豊かな動物園を見渡しながら、千歳が言った。
『こんなに広いとさ、1日で全部回れなくないか?』
「見たいとこだけ見ようか、何見たい?」
『いや、お前が動物園来たかったんだから、お前が見たいところでいいんだぞ』
「そう? じゃあ、俺は興味あるのサバンナの展示なんだけど」
俺達は二人で園内マップを広げた。
『一番奥か。サバンナ好きなのか?』
「サバンナが好きっていうか、ここ肉食獣と草食獣を一緒の場所で飼ってるらしくて、どうやってるんだろうと思って」
『え、食われちゃわないのか!?』
「食べられてないみたいだから見に行きたいわけです」
『じゃあまずそこ行こう!』
この広さの動物園の一番奥に行くとなると、園内バスを使うのが早い。俺達は人でぎゅうぎゅうの園内バスになんとか乗り込み、アフリカのサバンナ展示へ向かった。
門を超えて展示ゾーンに入ると、キリンとシマウマがまず目に入ったので俺は驚いた。
「え、本当に食べられそうな動物がいる……えっライオンいるんだよね、本当に大丈夫なの?」
俺は園内マップを確かめてしまった。
『キリンは流石にデカすぎないか、ライオンが食うには』
千歳にツッコまれた。
「大きいから襲わないのかなあ?」
そう、ここの展示にはライオンとチーターもいる。さぞかし格好良かろうと思って見に行ったのだが、両者とも爆睡していた。
『野性を忘れてるな』
「まあ大きい猫だしね……動物園じゃ食っちゃ寝なのかも」
かわいいミーアキャットが立っていたので、おばあちゃんに見せようと写真を撮ったり、サイの展示コーナーの注意書きを見て「おしりを向けてるときは注意って何!? 何巻き散らかすの!?」と怯えたりしつつ進んでいったら、園内飲食店のサバンナテラスが見えた。
『あ、ワシここで牛串食いたい!』
このサバンナテラスでは、ムシカキというアフリカの牛串が売ってるそうなのだ。
「ちょっと座って休もうか」
『うん』
テラスと言うから、ちょっとしたカフェかと思っていたのだが、近寄ってメニューを見ると、普通のレストラン並みに充実していた。園内マップを見ると……他にご飯食べられる場所、だいぶ遠いな。
「早いけど、ここでお昼にしちゃう?」
『うん! ワシ、アフリカ料理食べてみたい!』
「じゃあ頼んじゃおう」
席について、俺は看板メニューのムアンバライス、千歳はそれにプラスしてジョロフライスというアフリカメニューと牛串を頼んだ。
#幽霊
凛道桜嵐 新
193
#日常
がくじゅつてき・あかげ
22,155
わーい
41
485
『アフリカっぽいの全部食う!』
「うんうん、いっぱい食べな」
ムアンバライスは、ご飯にトマトチキン煮込みをかけてある風だったのだが、食べてみると明らかに鶏肉だけではないコクがあり、なかなかおいしかった。エスニックなこの風味、ココナッツか?
「おいしいね」
『うん!』
千歳はジョロフライスを頬張り、牛串にかじりつき、でも喋りたいらしく、口が大忙しだった。
『家じゃ食えないもん食えて嬉しい』
「なかなか縁がないもんねえ、アフリカ料理なんて」
日本向けのレストランだし、日本人向けの味にアレンジされてると思うが、それでも異国感があって非日常が味わえる。
それにしても、千歳はずいぶんご機嫌にニコニコしている。
『な、お前他に見たいものあるか?』
「そうだな、日本の山里コーナーかな。ツシマヤマネコ見てみたいんだよね」
『じゃあ食い終わったらそっち行こう!』
「なんかご機嫌だね、千歳も興味あるの?」
『んー、なんかさ、しばらく大変だったから、お前が何も心配なくなって、好きなもの楽しく見られるようになって、よかったなーって!』
はじけるような千歳の笑顔に、俺はドキッとしてしまった。すごくかわいくてきれいだけど、その事に関してだけドキッとしたわけじゃなくて。
え、今回のお出かけ、妙に俺の行きたいところを優先してくれてたけど、それは俺を楽しませたい気持ちでだったの?
「え、だから俺の希望いちいち聞いてくれたの?」
『うん、ワシはさ、遊んでうまいもの食べられればどこでもよかったから、後はお前の好きなところがいいなって』
千歳はムアンバライスを頬張った。
『これもうまいな』
「……千歳、ありがとうね」
俺は、千歳の喜ぶ顔が見られればそれだけで嬉しかった。千歳も、俺が喜べば嬉しいと思ってくれるのか。
『別に。たまにはお前も思いっきり楽しめよ。いっつも頑張ってるんだから』
「うん……」
そうだよな、たまにはこうやって、遊びに行って楽しむのもいいよな……。
でも、できたらまた千歳と一緒に行きたいな。俺が楽しんでいるのを喜んでくれる人、本当に得難い存在だからな。
コメント
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ああ、いいなあ……この回、すごく好きです。千歳くんが「お前が楽しめるように」って、さり気なく全部主人公の希望を優先してたの、後から気づく感じが切なくて愛おしかった。しかも「しばらく大変だったから、よかったなー」って笑顔で言う千歳くんに、読み手の私までドキッとしちゃいました。お互いの喜びが自分の喜びになる関係って、本当に尊いですよね。お昼のアフリカ料理の描写も、一緒に食べてる気分になって楽しかったです🌿