くらい くらい やみのなか。わたしは あのひのことを おもいだしていた。
まっくらな、まっくらな ばしょから、とつぜん ひかりが さしこんで。
きゅうに たかいところに おかれた。たくさんの くまさんが ならべられた。
「ここは どこなの?」と、いちばん ちかくのこに きいた。
「ここは玩具屋さんさ。俺達はこれから新しい家族との出会いを待つんだよ。」と、おしえてくれた。
このこは やさしかった。 わたしが しらないことを いっぱい おしえてくれた。どうやってわたしたちが うまれたのか とか、どうやって あたらしい かぞくの ところへ いくのか とか。
やがて、じかんがたつと、ちかくにいた くまさんたちは おおきな からだを もつ いきものに どこかへつれていかれた。ちかくの こに きいてみたところ、みんな「にんげん」っていう いきものに「れじ」っていうところに つれていかれたらしい。「れじ」をとおりすぎたら、その 「にんげん」の かぞくに なれるみたい。
それから しばらくして、まわりの おともだちは みんな にんげんに つれていかれた。のこったのは、わたし と いちばんさいしょに おしゃべりした いちばん ちかくの こ だけ。わたしたちは、いっしょにおしゃべりしてた。
でも、とつぜん わかれることに なった。ずっとおしゃべりしてた こが、にんげんの かぞくに なるらしい。 そのこは さいごに、「いいか?俺達には『買ってくれた人を幸せにしてやる』っていう使命があるんだ。いつになるかは知らんが、アンタもいずれ、誰かの家族になるだろう。そいつを幸せにしてやれ。『どんな辛いことがあっても、この子がいるから大丈夫。』そう思ってもらえる存在になれ。またな。」と いって、つれていかれた。わたしは ひとりぼっち。 なんじかんも なんにちも なんしゅうかんも。
だけど あるひ、「ママ、これほしい!大切にするから!」「えー、仕方ないなぁ。大切にしなよ?」「やったぁ!」という こえが きこえた。 そして、おとこのこが わたしを もちあげて、 かごにいれ、 れじを とおった。 わたしは、この おとこのこ のかぞくになった。ほかのこは みんな、おんなのこ のかぞくに なったのに。 でも、あのくまさんに いわれたとおり、ちゃんと しあわせに してあげなきゃ。
おとこのこ は、いつも わたしと いっしょにいた。ごはんを たべるときも、ねるときも、おでかけをするときも。わたしは、このこ のことが、すきに なっていった。このこ のこと、 しあわせにできていると いいな。
だけど、なんねんか たったあと、おとこのこ の おや は、「男のくせに!」っていうように なった。ちちおや と ははおや は、さいきん けんか ばっかり してるから、やつあたりを してるのかな。おとこのこ は、わたしに ぐちを いうように なった。だいじょうぶ。 わたしが おねえさん に なってあげる。ずっと まもってあげる。 だいじょうぶ。
おとこのこ に あたらしい おともだちが できた。それからは、わたしと、おとこのこと、そのおともだち のさんにん で あそんだ。すごく たのしかった。
だんだん、おとこのこ は、あかるさを なくしていった。じぶんで あたまを かべに ぶつけたり、かったー で うでを きったり してる。わたし、このこを しあわせに できてないのかも。いやだ。わたしの たいせつな こ なのに。
だから、さいしゅうしゅだん に でた。わたしは、おんなのこの すがたになって、ふたりのまえに でた。「ほんとうに たいせつなこと」を おしえてあげた。だけど。
すくえなかった。おとこのこ は しんだ。わたしの せいだ。もっと そばに いてあげれば よかった。ははおや と ちちおや を とめてあげれば よかった。
そもそも、「おとこ は かわいいものを もっていちゃいけない」なんて きまりが あるのがわるい。そのせいで あのこは・・・あのこは・・・
みんな みんな いきている
いきているから じゆうなんだ
かんがえることが できるんだ
ほかのひとと まなべるんだ
いろんな かんがえを もてるんだ
ほかのひとと くらべることも できるんだ
ほかのひとを きずつけることも できるんだ
でもね。
その たくさんの ひとの かんがえの なかにある
わずかな きちょうな かんがえを かわってるって いうのは ちがうとおもう
おねがい
いろんなひとの かんがえに ふれてみて。
いろんなひとと はなしてみて。
「かわったかんがえかた しか できない」ってきりはなすのは やめて。
そうすれば いろんなひとが なかよくなれる せかいに なるはずだから。
みんなで わらいあえる あの ひびを・・・
ゆめを、もういちど。
いかなくちゃ。
みんな の ところに。
あのこの ところに。
これを みている よんでいる みんなのところに。
わたしは ちょくせつ あえなくても
いつか みんな わかるよ。
だれかの かんがえかた を しる たいせつさ を
わたしは あのこの おねえさんとして
みんなの おねえさんとして
みまもってるよ。いつまでも。
-fin-
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