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「断れば、陛下にケンカを売るのと同じことです。」
「分かっているから、拒否したんです。」
珠奈の察しだ。
帝が珠奈の実家を訪ねてきたのは珠奈が後宮を追放されて実家に同居していることから親の脛をかじりながら生活を送っているのだろう。
だが珠奈は秀賢の変わりに仕事をほとんど手伝っていた。
それどころか後宮にいた頃に帝から貰った簪や梳、衣などを全て売り払い生活の足しにしていた。
「珠奈様、帝は少し話があるだけです。ですから、少しだけでも時間をくれませんか」
珠奈があの時、帝に頬を叩かれた時の痛みを思い出す。五年前、帝は自身が寵愛していた賢妃
「孔林」を毒殺しようとした珠奈に腹を立て頭に血が登り勢い良く叩いた。その衝撃で叩かれた頬からは引っ掻き傷のような形で血が流れた。
珠奈が帝に叩かれた頬を自分の手で触れる。
孫は蓮を見る。
「珠奈様、この少年は私が見ています。」
「分かりました。」
珠奈が蓮の前にしゃがむと耳打ちをした。
「蓮、良いわね。ママとの約束、覚えてる。」
蓮が小さく頷く。
珠奈は安心し帝のいる部屋に向かった。
コンコン
「お父様、陛下、私です。珠奈です。入りますよ。」
ドアが開かれると帝と秀賢がソファーに座っていた。
帝は優雅にソファーに座りながらお茶を飲む。
「久しいな、珠奈。少しは反省しているようだな」
珠奈の察し通りだった。
珠奈は怒りを堪える。
「お久しぶりでございます。陛下」
「珠奈、お前も飲むか良い茶だ。」
珠奈はお茶を見ると静かに睨む。
「結構です。あまり好きではないので」
帝が眉を潜めるが直ぐに直ると、片手でスプーンを持ち砂糖を掬いお茶に入れ混ぜた。
「そうか、では別の」
秀賢が侍女を頼もうとした。
「陛下、ご用件は 」