すれ違いが解けた翌日、収録が終わった後の楽屋。
俺は荷物を整理しながら、翔太をチラリと見た。
昨日よりもずっと自然な表情をしている。
(よかった……)
まだ、ぎこちなさは少し残っているけど、それでも前よりずっと距離は近い。
「今日、このあと何か予定ある?」
そう聞くと、翔太はスマホを操作しながら「別に」と答えた。
「じゃあ、うち来る?」
一瞬、翔太の指が止まる。
「……何、急に」
「いや、久しぶりにゆっくり話したいなって」
「……別にいいけど」
少しだけ視線をそらしながら言う翔太に、小さく笑った。
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その日の夜。
翔太はソファに座り、俺が淹れたコーヒーを一口飲んでいる。
「久しぶりだな、こういうの」
「うん」
翔太はカップを置いて、俺をじっと見る。
「昨日のことだけどさ……」
「ん?」
「なんか、俺たちバカみたいだったよな」
「……そうかもな」
「お互い、相手が冷めたって思ってたとか、マジで笑える」
そう言いながら、翔太がクスッと笑う。
「でも、あのまま話さなかったら、本当に終わってたかもしれない」
「……そうだな」
そう思うと、背筋がゾッとした。
ほんの少しのすれ違いが、大きな距離になってしまうこともある。
けれど、俺たちはそれを乗り越えた。
「もう、こういうのやめような」
静かに言うと、翔太は少し照れくさそうに目をそらした。
「……分かってるよ」
しばらく沈黙が続いたあと、翔太がそっと俺の服の袖を引っ張る。
「……どうした?」
「……なんか、まだ足りない気がする」
「何が?」
「……涼太、昨日から全然触れてこないじゃん」
その言葉に、驚く。
(翔太、そういうこと気にしてたのか……)
「……じゃあ、いい?」
「……は?」
返事を聞く前に、そっと翔太の頬に手を添えた。
翔太の瞳が、わずかに揺れる。
「……翔太」
名前を呼びながら、ゆっくりと顔を近づける。
翔太は一瞬目を閉じかけたが、すぐに小さく口を開いた。
「……こういうのはもっと雰囲気が必要じゃん」
「雰囲気?」
「……いきなりすぎて、その、なんか、心の準備が…」
「じゃあ、どうすればいい?」
「……もっと」
翔太は言葉を止めたまま、俺のシャツの襟を掴むと、ぐいっと引き寄せた。
「……こういうのとか」
そして、翔太の唇が俺の唇に触れる。
軽く触れるだけのキス。
だけど、その瞬間、俺の中の理性が揺らぐ。
「……」
「……こういうの、大事でしょ」
翔太は小さく笑い、少しだけ俺の首に腕を回した。
「……もう一回」
囁くような声に、ゆっくりと目を閉じる。
今度は、俺の方から唇を重ねた。
ゆっくりと、優しく、時間をかけて。
さっきよりも深く、息が絡むほどのキス。
翔太の指が、俺の背中にそっと触れる。
「……んっ」
甘い吐息が漏れ、唇がわずかに離れた。
「……こんな感じ?」
そう囁くと、翔太は少しだけ頬を赤くして「……ぅん」と答えた。
「……こういうの、もっと増やしたいな」
「それなら、これからもずっと一緒にいるしかないな」
「……バカ」
小さく笑いながら、翔太が肩にもたれかかった。
こうして、俺たちはまた、同じ時間を過ごすことができる。
これからも、ずっと。
そう思うと、自然と笑みがこぼれた。
「……好きだよ、翔太」
「……ん」
照れくさそうにしながらも、翔太は俺の手をぎゅっと握り返した。
コメント
4件
尊いーーー!!💙❤️✨
良かったよ〜👏👏👏